今がいちばん

今がいちばん

8月の歌



     金の油を               


夜を駆けるバイクの音も一瞬の時うつろいて風となりゆく

網くぐり羽虫と月光我が部屋にねむれぬ夏の夜をなぐさむ

夕まぐれひまわり畑に踏み入りぬ金の油を少し欲しくて

大輪のひまわり揺らして過ぎる風人の運命をさらい行くがに

もたもたと胃の重苦しい八月に待ちたる雨が地を流れゆく

住み慣れし家に別れの挨拶を深々と頭下げて出で来ぬ

目の前に稲田広がる地に来たりこれからの生グリコのおまけ

静かなる湾に波立て小舟行く夏の光の束をまといて

打ち寄せる波を避けつつフナムシらそこここそこと素早く動く

持ち上げし時計の針がはずれおり二次元の世へ時すべるごと

思いあがる心密かにいや増すか言葉の温み伝わらぬ午後

語彙足りぬ我の思いの隙間つき馬事雑言を受話器は伝う

ムチを持て追わるる如く旅に出る急ぎの用事投げ出したまま

ざわざわと栃の木揺らして風が吹く東京神田みな急ぐ道

パトカーも激噴バイクも通る道神田神保町に八月の風


貝



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