今がいちばん

今がいちばん

10月の歌



10月の歌。  


    つましき幸い

秋更けて月は急くごと孕みゆく〆切り迫る吾の尻たたき

新宿も八重洲・上野も行きずりの街にやあらん人散りて行く

人はみなすましてみてもテラの上ひと時の世をただに歩めり

バスに乗り電車を継ぎて旅を行く帰ることなど忘れたきまま

とんぼ来て新聞の端に止りおりしばし私は彫像となる

山茶花の花びら日毎はらはらと門先匂う灯のごとく

アイビーの白き小花がゆらゆらと風のまにまに怠惰も揺れる

道端の雑木ひともと紅く燃ゆ地震の報せの重さとともに

ただひとつジャンバー干して外出を男は黒き影となりゆく

にょきにょきと金のきのこが我が薮に小躍り拍手つましき幸い

人参の種を蒔いたと幼いうピーターラビット訪うを待ちつつ

ひとりにて食用菊をほぐす人たちまち高き黄金の山が

曼珠沙華咲きたる土手のそこのみが残されており稲刈り間際

樹の谷をくぐりて人の現るるりんご畑に道問いし時

秋の陽に映えてりんごは輝けり人いぬ畑に香撒きつつ




tyou


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