・浅葉なつ『神様の御用人 見習い』は、現代日本に生きる青年が、神々の世界とつながりを持ち、ささやかな「御用」を果たしていく物語だ。現代と神話が交錯する設定は、派手なファンタジーではなく、静かな対話と内面の変化を描く。そこには「目に見えないものを信じること」や「人と人、あるいは人と世界の関係をどう結び直すか」という、ビジネスや人生に通じる深いテーマが潜んでいる。
・主人公・浅葉翔太は、社会の片隅で生きる、どこにでもいそうな青年だ。特別な能力を持つわけではないが、あるきっかけで「神様の御用人見習い」という役目を負うことになる。それは、現世で忘れられつつある神々や縁を取り戻すために、人と神をつなぐ仕事だ。
・物語は、翔太が狐神・黄金とともに、困りごとを抱える神様たちの依頼を受けて奔走するエピソードで構成される。神々の悩みは、人間の悩みとどこか似ている。忘れられることへの恐れ、役割を失う焦燥、存在意義を求める心――それは、現代のビジネスパーソンが抱える不安と驚くほど重なる。
・翔太自身も、御用をこなす中で「誰かのために働くこと」「信じること」の意味を見つめ直す。派手な成長ではない。だが、見えない価値に触れることで、彼は少しずつ変わっていく。
・作品の核にあるもの
1. 目に見えない価値を守るということ 神様の存在は、忘れられれば消えてしまう。これは、ビジネスの世界で言えば、企業の理念や文化に近い。数字に表れないものを大切にする姿勢が、翔太の行動に通底している。
2. つなぐ仕事の尊さ 翔太の役割は、神と人を結ぶこと。間を取り持つ存在は、どんな世界にも必要だ。調整役や橋渡し役は目立たないが、価値を生む。その本質を物語は示している。
3. 役割を失う恐怖と再定義 神々の多くは、自分が「不要になった」と感じて苦しんでいる。それは、時代に取り残される恐れを抱くビジネスパーソンの姿と重なる。彼らが再び意味を見出す過程は、キャリア再構築のメタファーとも言える。
・『神様の御用人 見習い』は、ファンタジーという衣をまとった現代の寓話だ。見えないものを軽視しがちな時代に、「信じる」「つなぐ」「守る」という行為の意味を問いかける。その静かな問いは、キャリアに迷う者にとって、自分を再定義するヒントとなる。
神様の御用人 見習い【電子書籍】[ 浅葉 なつ ]
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