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2025.11.01
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カテゴリ: Life

・香取照幸『教養としての社会保障』は、複雑化し形骸化した「社会保障」という仕組みを、政治でも経済でもなく“教養”として理解するための羅針盤である。著者は厚生労働省で長年制度設計に関わってきた実務家であり、机上の理屈ではなく現場の知をもとに、制度の成り立ちとその本質を解き明かす。社会保障とは単なる“福祉”の話ではなく、「社会の安定と経済の持続を支えるインフラ」だという視点が、全編を貫いている。

・序章で著者はまず、「社会保障=お金をばらまく仕組み」という誤解を正す。社会保障とは、個人と社会を“リスク”から守る仕組みであり、老い・病・貧困・失業といった誰もが避けられない不確実性を、社会全体で分かち合う制度だと位置づける。

・第一章では、日本の社会保障の起源と発展をたどる。戦後、焼け野原から立ち上がった日本が、欧米の福祉国家モデルを参照しつつ独自の制度を築いてきた過程が描かれる。1950年代の「国民皆保険・皆年金」の実現、そして高度経済成長による制度拡大。しかし、それが「人口増・経済拡大」を前提に設計されていたことが、今の行き詰まりを生んでいると指摘する。

・第二章では、現在の日本社会が抱える構造的問題を明確にする。少子高齢化による負担増、非正規雇用の拡大、家族の形の変化。社会保障は、もはや「会社と家族が守ってくれる社会」では機能しない。制度疲労が進むなかで、著者は“リスクの再分配”のあり方を問い直す。年金・医療・介護・子育てといった各分野の制度がどのように連動しているかを、体系的に整理している点が本書の強みだ。

・第三章では、社会保障を「経済の仕組み」として捉え直す視点が提示される。社会保障は単なるコストではなく、経済を安定させる“自動安定化装置”でもある。失業給付や医療保険があることで、消費の底が支えられ、企業のリスクも緩和される。つまり、社会保障は「社会的セーフティネット」であると同時に、「経済の土台」でもある。著者はこの点を、「社会保障は国家の信用インフラ」と表現する。

・第四章では、財源問題と制度改革の方向性を論じる。消費税をはじめとする税制との連動、給付と負担のバランス、そして「世代間公平」の再構築。著者は、単なる増税や給付削減ではなく、「制度の再設計」が必要だと説く。具体的には、働き方の多様化に対応した“ユニバーサルな保障”への転換、所得再分配機能の強化、そして行政のデジタル化による効率化。

・終章では、社会保障を“未来への投資”として捉える重要性を強調する。教育・子育て支援・医療予防といった「前向きな保障」を拡充することで、社会全体の生産性を上げる。福祉をコストではなく「人への投資」として設計し直すことが、成熟社会日本の新たな競争力になるという。

・本書は、経済と制度を切り離して考えてきたビジネスパーソンにとって、一つの“視界の再構築”を促す内容だ。社会保障は「国家の仕組み」ではなく、「市場の前提」である。もし制度が脆弱なら、消費も投資も信用も崩れる。逆に、制度がしなやかであれば、個人も企業も挑戦できる。

香取は、社会保障を「社会のOS」として描く。アプリ(企業活動や個人のキャリア)は、このOSが安定していて初めて動く。OSが古ければ、いくら努力しても結果は出ない。だからこそ今、日本は“アップデート”のタイミングにある。

・『教養としての社会保障』は、福祉論ではなく「制度と経済の接点」を解き明かす教科書だ。

社会の仕組みを理解することが、最も実践的なビジネス教養であることを、この一冊は静かに示している。


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Last updated  2025.11.01 00:00:16
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