出がらし紋次郎の出がらし日記

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不飽和脂肪酸で採卵移植成績を向上させる



この内容からすると、脂肪肝が繁殖成績の低下に大いに関与していて、不飽和脂肪酸の給与によって脂肪肝を改善することにより繁殖成績の向上が見られると言うことのようです。

体内のγーリノレン酸やリノール酸の値、脂肪肝の有無などを調べそれらを改善することで、ある程度不妊症を改善することができるかもしれないですね。

この話はあくまでも牛での話しですが、いずれにしてもカロリーの採り過ぎは妊娠を阻害する要因になっているのだと思います。

不飽和脂肪酸の給与による繁殖機能の改善の可能性について

 飼養管理の改善によって繁殖機能を改善する(あるいは、良好な繁殖機能を維持させる)試みは、今まで数多く世界中でやられてきましたが、多くの要因が複雑に絡み合って、あらゆる事例に応用できる方法というものは確立されていません。例えば、今までの研究の成果から、乳牛であれば給与されているタンパク質とエネルギーのバランスが重要であると言われていますが、では個々の事例にどのような飼料の組み合わせでそれに適切に対応するのかが、技術者および農家に明確に理解されていません。当然、例え理解されていたとしても、そのときに手に入れることが出来る飼料資源にも制限がありますから、模範解答というものが無いのが特徴です。特に、乳牛の場合には泌乳が300日以上も続くなかで、正常な生殖機能を発揮しなければならないわけですから、考慮しなければならない要因が肉用牛に比べて多くなります。
エネルギーバランスの乱れは、生体の脂質代謝に大きな影響を与えて、脂肪肝を始めとするさまざまな障害を引き起こし、ついにはコレステロール代謝を介して低受胎などの繁殖障害の一因になると考えられています。 とくに、牛を始めとする反芻動物では、妊娠末期に胎子胎盤複合体からのエストロジェン分泌が高まり、親牛の採食量を減少させ、分娩後のエネルギーバランスを負に傾斜させると考えられています。
 一方、親牛の過肥は難産にもつながるほか、その脂質代謝異常は胎子にも影響を与え、虚弱子牛の生産につながる危険性もあります。以上から、「脂質代謝」が適正な飼養管理を考える上での、キーワードと考えられます。
不飽和脂肪酸の給与は、脂質代謝を正常化する試みのひとつとして考えられています。その根拠となっているのが、脂肪肝を抱えている牛はほとんどの場合繁殖機能に異常を来していて、末梢血液中のリノール酸(不飽和脂肪酸の一種)濃度が低いことが報告されています。 少し前の日本農業新聞の記事でも、 脂肪肝の牛に脂質代謝を改善するための治療薬を投与して採卵したら、正常卵が多く採れたという記事が出ていました。 ご記憶の方も多いかと思います。○○研究所の△△所長が主催する会合での発表でしたが、かなり以前△△所長と標記の話題で議論したことがあります。
 不飽和脂肪酸の給与は、牛の場合、通常は脂肪酸カルシウム塩の状態で給与されます。不飽和脂肪酸を直接給与しても第一胃で水素添加されて飽和脂肪酸に変化してしまうためです。しかし、市販品で不飽和脂肪酸が入っている脂肪酸カルシウム塩は種類が少なく、畜産試験場(前、東北農業試験場)の◇◇主任研究官から教えてもらったところでは、メガラック(商品名)一種しかないそうです。今後、本所あるいは県との共同試験の中でメガラックを使用した試験を計画する予定です。
 飼養試験は、冒頭にも述べましたように、多くの要因が複雑に絡み合っていますので、投与した脂肪酸カルシウムの効果を判定するには、緻密な実験計画と正確な血液成分のモニタリングが必要になります。この点にも注意して、計画を組む必要があります。
 われわれが計画する試験では、すべて受精卵移植技術の中での応用を考えていますので、供卵牛と受卵牛への給与試験となります。動物腫は異なりますが、筆者が畜試在職中に行った実験では、 γーリノレン酸(高度不飽和脂肪酸の一種)を給与した供卵豚から採取した卵子の正常卵率および排卵数が対照のγーリノレン酸非給与のものよりも有意に高い成績を得ています。 また、牛では米国フロリダ大学のサッチャー教授のグループが、 受胎性のよい牛(正確には、外因性のインターフェロンτに対して反応性が良かった牛)では、子宮内膜中のリノール酸含量が高かったと報告しています。 試験に供される動物の血液成分の精密なモニタリングとともに実用的な研究が待たれます。各牧場でも、考えてみて下さい。新冠牧場から提案されている共同試験の課題は今後この方面に発展することが期待されます。


(2006.2.13の日記より)


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