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(ネタバレ)その男の心は繊細すぎた。家具販売店で感覚的に慣れない実務をこなし、資本主義の価値観に折り合いをつけながら、どうにか暮らしてきたのだ。しかしやがて、抑圧された彼の心理は、打算と合理性を傀儡とした自己矛盾に耐えることに困難を覚えはじめる。道を切り開くべく、開業しようと試みるもうまく行かず、別居していた女性からは経済的な理由を根拠に別れを切り出される。彼がまもってきた最後の希望は突き崩された。続く
2006/03/02
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スピルバーグ、さすがですね。CGや特撮にしても妥協点がまったくない。パニックシーンの映像、音声の迫力に参りました。かつてないほどの緊迫感、予想し得ない強襲タイム。息をつく暇もないほどスピーディーな展開に溜飲の下がる思い。幾つかの“あり得ない箇所”にとらわれなければ、楽しんで見れるはず。たとえば100万年以上も前から計画していた侵略にしては、予想できたであろう敗因についてだとか、作中の宇宙人が高度の知性を持っているように見えないこと(笑)さらには息子はあの爆風になぜ生還出来たかなどあげればきりがないのだけど、そんなことはどうでもよくなるくらい、映像と音声で押し捲りの娯楽大作であったように思う。
2005/07/12
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だだっ広い荒野に敷設された道を、マット・デイモンと友人(ケイシー・アフレック)を乗せた一台の車が緩慢な速度で走り抜ける。やがてあるポイントへやってくると二人は車を降りて、低い潅木が群生するあたりをすり抜けながら、埃っぽい岐路を軽快な足取りで先へと進んで行った。観光で訪れる客を別に、おおよそ不釣合いな軽装に何も持ち物を持たない二人の存在を除けば、そこは岩山と砂とでこぼこしたもろい石で散りばめられた不毛の荒涼地帯であり、矮小な生命をあざ笑うような枯れた大自然が眼前に広がっているだけであった。気持ちの高揚から悪戯に道を外れたのも束の間、次第に冷静になると、元来た路を引き返して合流地点の往路へ出ようと道順をたどるが一向に戻る気配がない。彼らは余裕を繕いなおも足取りを緩めずに先へ行くが、あたりは一層厳しい傾斜のある岩肌の隆起する悪路に変わり、焦がすように照りつける残光と夜は暖を取らずにいられぬ冷気が二人の体を蝕んでいく。彼らは完全に迷ったのだ…息苦しくなるくらい1カットが長い。二人の長い沈黙と、足を運ぶ際の歩調にそれぞれの思惑があり、そして背景に聳える大自然は常に美しく無情である。なんと孤独で長く険しい路なのだろうか。
2005/06/26
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列車から放り出された死体は、スイスに余暇を過ごしに来ていた女(オードリー)の夫だった。ロッジで知り合った謎の男の出現を皮切りに物語は急展開。訃報を知らされるとオードリーは直ちにパリに戻り亡夫のための葬儀を行うが、その際に訪れた数人の参列者が、生前何をしていたのか一切不明な夫の知り合いであることを婦人にほのめかす。戦時中、夫を含む彼らのグループは届けるはずの物資を横領してほとぼりが冷めた頃に山分けするはずだったのが、仲間の裏切りのためにその大金はどこかへ消えてしまった。彼らは裏切りの張本人の妻であるオードリーにその行方をせまった。すでに自宅の家財一式は夫の手によって売り払われてしまい、住む場所をおわれる羽目になったオードリーは困惑していたが、そんな折に現れたのは、スイスのロッジで会ったあの男だった。―活動的で表情豊かなオードリー・ヘプバーンはその服装からして可愛らしい。もちろん、紳士役のケイリー・グラントもいいおじさん役でホットな感じだ。コメディータッチでいてちゃんとミステリーのハラハラ要素も兼ね備えているシャレード。音楽も昔から気に入って何度も聴いたことのあるヘンリー・マンシーニ。久しぶりに見たけど、先回見たときよりもしっかり見ようと思ったので、割と今まで気付かなかった部分などの発見も多かった。印象的だったのは、スーツを着たまま石鹸で体を洗うケイリー・グラント。小部屋の椅子に座るおじさんをみて驚くオードリー。
2005/06/06
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通称“池の底”は多くの問題児を抱えるフランスの寄宿学校。そこへ舎監として赴任してきたクレマン・マチューは、生徒との交流を通して少しずつ彼らの心を開いてゆく。音楽家くずれを自認しながらも音楽を通して生徒たちからなる合唱隊を組織し、美しいまでのコーラス隊を編成するまでに成長させるが、その中でも群を抜いて美しい声を持つ少年バティスト・モニエの存在はこの閉ざされた場所へとどめて置くのが惜しい程の逸材であった。マチューがバティスト・モニエを教える際のあの美しいものを眺める時の恍惚としたような視線が忘れられない。少年たちは音楽を学ぶ一方、美しいものに触れることの意義、そしてそれを求め、表現することのすばらしさを体感したのではないかと思う。美への賛歌はマチューのように大人になっても変わらないように、名も知れぬ音楽家が、後に大成したバティスト・モニエへと伝承された贈り物だった。バティスト・モニエにとっての心の恩師はただ一人、マチューという音楽家であったに違いない。
2005/05/19
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とある武蔵野の山間に位置する学校に通う主人公の同級生が、絞殺体で雑木林の沼から発見される。主人公とは懇意であっただけに彼とその仲間たちは殺された青年の弔い合戦と称して、独自に捜査を開始する。主人公が高校生男子というのが、かなり異色な出だし。どこか高校生版の地元の青年探偵団結成とでもいった感じの世界観を含め年齢の若さを通しての視点が初々しくて面白かった。若者たち(子供たち)の周りで突如起きたこの理不尽に残虐な事件は、(大人たちの都合が複雑に絡み合った事情による殺人)を、被害者の青年が愛読していたポーやボードレールに見られるおどろおどろしい奇妙な雰囲気をそえることで、どこか謎めいて神秘的な“非日常性”を作り出し、多感な時期の青年たちの不安と好奇心を駆り立てる。読んでいてイメージしたのは『ハーメルンの笛吹き』に見られるあの童話的な感じだった。しかしそこは松本清張作品、事件は神話や御伽噺などのようにあいまいとしたものではなく、過去現在を絡めた複雑な人間関係が織り成す愛憎劇が組み込まれ、納得のいく結末を迎えることになる…「高校生コース」に掲載されたとなっているので、その雑誌の購読層向けに作られたのだろうか。読みやすかったのと面白かったのとで、深夜読み始めたのが朝方には読み終わった。
2005/05/16
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坂本龍一のアルバムを引っ張り出して聞いているうちに、後にはまったYMOのベストを急に聴きたくなってDISC2から『PERSPECTIVE』をリピートしてかける。良い。やっぱり良い。この螺旋状に転落していくようなアンニュイでミニマルな旋律が耳に心地よい。後期作品だと思うが、坂本色の濃い選曲だと思う。彼のアルバムが出るといまだにこういうものを期待してしまう。。
2005/04/20
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ジョエル・コーエンの『ディボース・ショー』。有名法律事務所の弁護士のホープ、マイルズ(ジョージ・クルーニー)は、お粗末な不倫に端を発する離婚訴訟後の財産分与問題などの退屈な案件を扱っていた。そんな折に現れた魅惑的な女詐欺師マリリン(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)は不動産を手広く営む金持ちの男を訴えて、不倫現場の証拠を元に彼の財産を手に入れようとするが、不動産王の弁護を引き受けたマイルズによって彼女の計画は打ち崩され、結局何も手にすることが出来なくなった。その後、マリリンは再びマイルズの事務所を訪れる。彼女の新しいパートナー“石油王”を連れて…面白かった。コーエンシリーズはいつ見ても楽しい。出てくるキャラが皆ユニークなのがいい。やたら感激する弁護士仲間や吸入器を手放せない殺し屋、複雑な医療精密機器にチューブで繋がれた上司だの遊び心満開。キャサリン・ゼタ・ジョーンズはこわいくらい魅力的だし、どこか憎めない男くささのする三枚目も演じられるジョージ・クルーニーも大好きだ。後味の良いすっきりした作品。
2005/03/01
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エリック・クラプトンの異色のアルバム「PILGRIM」から2曲、お気に入りのナンバーを聴いた。「CIRCUS」と「INSIDE OF ME」。クラプトンというとブルースやクリーム時代のロック色っぽいものをイメージするのだけど、このアルバムのナンバーはとてもポップでどの年代層や音楽層にも聴きやすい仕上がりになっているのではないかと思う一方、音楽としても熟成したクラプトンだからこそ、作ることの出来たアルバムではないかと思う。(クラプトン愛好家ではないのであまり大きなことは言えませんが悪しからず)アルバムのジャケットに、イメージ的なものを注文したクラプトンがこの静謐の深みから何を思うかは、彼の歩んできた長い人生の中に答えがあるかもしれない。
2005/02/25
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「クリアクション」からハウンドハウス・ロック、サッド・バラッドそしてT.C.Bを立て続けにかける。音源は70年頃に収録されたものではないかとされ、サウンドがいささか古めかしい。が、3曲目のT.C.Bに関して言わせてもらえばチックのエレピとヨアヒム・キューンのオルガンの掛け合いが炸裂する模様がどう考えても前衛的過ぎる。これはすごいとしか言いようがない。アルバムの語源がクリエイションとアクティブの融合で“クリアクション”というだけあってもうイッてしまっている。終焉のレーシング・イット・ダウンに至っては、混沌と破壊の中から再構築されたチックの音楽が“サークル後期”在籍時のレッドゾーンを振り切った傑作だ。
2005/02/21
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ワタリドリの生態に密着し取材したドキュメンタリー映画『ワタリドリ』。本能が鳥たちに生きるようにと言う。どんなに悲しい事があっても、危険が待ち受けていても、映像の中の鳥たちは飛び続けることをやめなかった。作品を見ていて、生きていくことに解釈を添えるよりも、生きるように出来ているのだと思った。命ってすごいなぁと元気と力強さを分けてもらえる感動ドキュメンタリー。
2005/02/16
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ドラッグの売人モンティは、家宅捜索を受けた際に押収された物証により刑務所に7年収監されることになる。収容先での過酷な現実が彼を恐怖に駆り立てる中、信頼していた彼の女にまで裏切られたのではないかという思いがよぎるようになっていた。収容される前に、自分と親しかった友人を集めて、呼び出しを受けた元締めのパーティーに向かうが…。とくにエドワード・ノートンが鏡に向かって“ニューヨーク”を罵倒するシーンは迫っていた。罵倒の対象に自分を含め、そんな全てをどこかいとおしく思う気持ちが垣間見えたようなカットだった。
2005/02/08
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アイルランドの女性記者が、麻薬売買の背後にある大掛かりな組織の腐敗を暴くために、単身取材に乗り込む。核心に近づくごとに激化する脅しにも屈することなく、彼女はジャーナリストとしての使命を果たすために勇気を奮い起こすが。実際の話が元になっているわけだが、度重なる脅迫にもめげず、真実を世の中に知らしめるために立ち上がる女性記者の勇姿に涙。疑わしい所得の資産凍結等のアイルランドにおける憲法の改正に踏み切らせた後世に残す偉業に心打たれた。
2005/01/24
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なんといってもトム・ハンクスの演技が光っていた。表情がとても豊かで、決して退屈させない。入国不可の状態に陥り自国のクーデターがおさまるまで半ば無国籍のトム・ハンクスは空港に住み込みで回復を待たなければならないが、そこで出会う様々な空港職員たちとの交流がうまれる。肌身離さず持っている缶の中身は、彼がこのニューヨークへ降り立った目的を果たすために必要なものが収められていた。キャサリン・ゼダ・ジョーンズが本当に綺麗。局長の意地悪で融通のきかない上役を演出したスタンリー・トゥッチもいい味を出していたと思う。空港の監視カメラの動きや皿をまわす清掃夫がたのしい。雪の降るニューヨークの町並みも美しく涙がじわっと浮かんでくる感動的な作品。期待を裏切らないスピルバーグに今回も拍手。
2004/12/20
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トム・ハンクス演じる自称プロフェッサー(楽団の楽士?)は、水上カジノの売上金を収納した水中の岩盤に埋め込まれた金庫室への侵入を、地中側(金庫室の裏側)からの掘削作業によって実行する計画を立てていた。問題なのは、侵入経路の入り口が、とある熱心な教会通いのおばさんの家の地下室であることだ。トム率いるプロの窃盗グループは、そこの地下室を楽団使用の名目で借りることにして、“マダムと泥棒”よろしく銘々が楽士に扮装した上でおばさんにご挨拶。爆破処理専門のじいさんと腕力だけが取り得の大男、そして軽いノリのカジノスパイに掘削専門の“将軍”と呼ばれるアジア系の男、癖のある男達の中でもとりわけ一番怪しげで饒舌な男トムが指揮をとり作戦を開始する。。が、思わぬハプニングが起きて、泥棒の事実がその家主のおばさんにばれてしまうことに・・・彼らはおばさんの口を封じるために彼女を殺そうとするのだが・・・トム・ハンクスが“やや”いかれた表情や笑い方で見てる側を惹きつける(笑)。コーエン兄弟お得意のほのぼのとしたジョークは、本当に心が和むようでよい。それというのもブルースや黒人によるゴスペルのBGがこれもまたコーエン兄弟映画ならではの手法の一環で、退屈することがない程度にゆったりとした空間を演出して牧歌的趣をそえている。誰もが感じるであろうさりげないウィットが非常にここちよい。
2004/11/30
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その街で仕立て屋をしている色白の額の禿げ上がった男は、住民に目に疎まれていた。彼自身の発散する人格上の確執的な異常性が人を寄せ付けなかったと言ってもよい。飼っている何匹ものマウスを道具を使って殺すのはおそらく常習的なものだったのだろう。そんな彼の生活の中で至福の時ともいえるのが、隣のアパートに住む一人の女を窓際からひそかに眺めることであった。彼はひそかに彼女に対して恋心を抱いていたが、そんな『彼女』の重要な秘密を知ってしまう。正確には『彼女たち』のである。彼女とその恋人はとある成り行きからそこで殺人を犯してしまったのである。やがて仕立て屋が自分の部屋を覗いていることに気付いた女は、彼を誘惑してその“愛”と引き換えに事件の全容をむねのうちにしまい口外しないよう仕立て屋にせまるが、彼の方ではもとよりその気はなかった。彼は女に、彼女の恋人は彼女のことを考えずいざとなればぞんざいな扱いのさいに捨ててしまうような男であることを告げ、自分と一緒に街を出るように言う。待ち合わせの時間を設けて、彼は列車の乗車口で待っているが一向に女は現れない。自宅に戻ると彼を待ち受けていたのは殺人事件を追っていた刑事と、彼女だった。彼女は恋人が殺した女の物証を仕立て屋が住む部屋の箪笥の中に隠し、それを証拠に刑事を呼んで待っていた。彼をはめたのである。仕立て屋の妙に清潔感の漂う神経質な身なりにしても、女達の香水の馨りをかぐ癖や、ブラームスのクラシック音楽を愛好するところにしても、彼の美に対する偏愛ぶりをうかがわせる。まるで鑑賞用の作品を嗜むようにして窓際から美しい女をのぞき見ることで至福を味わうのだ。そこにはしかるべき距離がある。彼自らが定めたところのいわば鑑賞者と作品だ。彼の異常性は美的なものに対する極端な憧憬がはぐくんだものかもしれない。それはコンプレックスから来ているものかもしれないが、おそらくその種の愛情を受けることの無かった男の、こういう形でしか向き合うことの出来ない心の距離と彼なりの愛情がそこにあったのではないかと思う。彼女の恋人のためにした虚ろな独白に仕立て屋は気付いていた。しかし彼は捏造されたものすら“愛した”のではないだろうか?。
2004/11/27
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殺し屋モルテスは、仲間の中にいる警察への密告者の弟をその兄であるトルコの前で始末した。待機していた警官隊に取り押さえられてあえなく逮捕されるモルテス。刑務所へ服役しながら、懇意になった看守のレジオに頼み、自分のために宝くじを買ってきてもらう約束をこぎつけたのだが、クジの発表後からレジオが自分のところへ現れず出勤もしていないことを知り激怒する。なんと宝くじは1500万ユーロの莫大な当選金をだしていたのだった。レジオが横取りしたに違いないと早合点して、モルテスは刑務所から脱走すると、看守の自宅へ乗り込む。彼が自宅でかみさんと喧嘩をして出て行かれたところに入れ違いにモルテス到着。ところが1500万ユーロの当選のことをレジオは知らなかった。あたりくじはレジオのかみさんがアフリカに持っていってしまったようなのだ。モルテスは仕方なくレジオとともに券を追ってアフリカに旅立つことに。道中、モルテスが殺した弟の兄トルコも入り混じって大接戦。個性的なオールキャストに加え、スピード感のある見ていて目が離せない展開とともにフランス的コメディーの最高傑作!。モルテス役のジェラール・ランバンが格好好過ぎ!
2004/11/13
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ニューヨークから家族でステップフォードに引っ越してきたジョアンナは、しばらく街で不自由なく暮らしていたのだが、ある時から自分の亭主を含めその街の妻を持つ男達が通う女子禁制のクラブに不信を抱くようになる。さらに家で主人を待つ女達のどこか奇妙で不自然な様子はますます彼女を苛立たせた。そんな中、知り合った女友達のボビーと協力し、彼女達はこの街で何が起きているのかを調べることにするのだが・・・。どうしてこんな古い作品が新作でレンタルされているのかなと思ったら、近々リメイクされるそうで。主演女優はニコールキッドマンが演じるとか。75年版のジョアンナ役、キャサリン・ロスは適役だったと思う。70年代といえば解放運動を叫ぶフェミニズムが盛んな時期でもあり作品に対するクレームはすごかったらしい、が実際には反男性映画であることを監督は述懐した。炊事洗濯をこなし夫の望む理想的で家庭的な良妻と対照的に、自由奔放に飛び回るジョアンナやボビーは後代の女性の力強い精神的な躍進を予感させる。これは余談だがボビー役のポーラ・プランティスは生まれて間もない3ヶ月の息子を連れてスタジオ入りしたそうな。
2004/11/12
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ジュード・ロウ主演。ジュードは若手の映画監督だったが、何者かに殺されてしまい、その短い生涯を終えた。彼が最後に製作にあたっていた作品の続きを取ろうと、彼の妻がジュードを取り巻く俳優人たちを集め、一同が彼女の家に集うことになった。作品の内容は異色なものであり、彼ら俳優陣(生前のジュードを含め、彼らは互いをファミリーとしていた。)の実生活を隠し撮りしたものをドキュメントタッチで映画化しようと試みられたものであり、ジュードがなくなったため製作にあたっていた彼に変わって彼の妻が監督の采配を振るうことになったのだ。ビデオの中でジュードは、「役者が役者の仮面を脱ぎ捨てているときとは、トイレという場所であったり、寝室であったりする。普段の生活においてでさえ、人は演出しているのだ。私はこうした生の姿をとってドキュメンタリーとして作品を仕上げたい。」とテレビから語りかける。「おこらないでくれと。」2001年頃にレンタルされたものだったと記憶する。以前書き留めておいた映画評から転載。
2004/11/11
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耳の不自由な女は土地開発業者(デベロッパー)の秘書をして、さえない退屈な日々をもてあましていた。上司の薦めもあって、不安定な彼女を補佐する人間を雇うことにしたのだが、雇用を求めてきた男は刑務所を出所仕立てのやくざな男だった。男は義務付けられた保護監察官との面会を通してその行動を逐一報告していた。最初のうちは彼女の元で雑用を務めていたが、以前の関係者に借金をしていたためその男の経営するクラブでバーテンの仕事につくことになる。しかしそんな中でも彼らはわずかな接触を通して互いに興味を持ち始める。彼は彼女の身に付けた読唇術を、ボスの金を横取りするために彼女を利用しようとするが、彼女のほうは彼の持つその怪しげな雰囲気にますます魅せられていくことになる。まず映像の適度なブレが好い(笑)1シーンが長くて彼らの息遣いまでがひしひしと伝わってくるかのようである。躊躇いとか思案とかそういう微妙な時間と距離が巧く再現されている。「ジェヴォーダンの獣」「クリムゾン・リバー」等のヴァンサン・カッセルの特徴的な顔は何時見ても忘れられない。 エマニュエル・ドゥヴォスのアンニュイな感じがまたすばらしい。作品の流れとしてはいわゆる“オチらしいオチ”がないのがとてもよかった。
2004/10/30
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地方の警察署長を勤める(役)デンゼル・ワシントンは妻(役)エヴァ・メンデスとの離婚調停中に、保険金殺人の嫌疑をかけられそうになる。付き合っていた末期ガンの女が住宅火災の跡地から焼死体で発見され、その保険金の受取人名義が彼になっていたのだ。運悪く署長は彼女のガンを治療するために、証拠品として押収された金に手をつけてしまっていた。同僚や刑事である妻の捜査の手が伸びる中、彼はその明晰な頭脳を持ってなんとか切り抜けようとするが、その矢先に麻薬捜査局から証拠品の提出催促がかかり万事休す。なんといってもデンゼル・ワシントンの存在感は大きい。こういうサスペンスものではとくに彼のような俳優は安定感がある。とんでもない逆境に陥っても、なんとか自力で這い上がってくれるだろうという信頼があるのだ。悪人を演じさせても一品の「トレーニングデイ」のデンゼル・ワシントンにしてもあたえられたその役どころを完璧に表現することに成功していると思った。シリアスなものからコミカルな感じまでこなせるのだ。
2004/10/29
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あるさびれた駅に降り立った一人の男がいる。男はギャングの一味でこの街の銀行を襲う計画に加わっていた。人通りも疎らな閑静な街はどこも観光シーズンの外れた時期とあって、示し合わせたように宿が閉まっていた。立ち寄った薬屋でふとしたことで知り合った老教師の好意で、彼の屋敷に予定の土曜日まで泊めてもらうことにする。老教師のほうも同日に自身の手術予定が入っていた。やがて彼らはささやかな交流を通して互いの世界観に触れ合う。手にしてみたかった互いの生き方をつかの間共有することで、淡い期待はやがて彼らの中にあるビジョンをより具体的で明確な形にして土曜日における“実行”へと移る。この作品のキーは、『交差』ではないかと思う。人と人は何かの加減で交差する。その過程に交わるものもあれば、すれ違うだけで生涯二度と出会うことのないものもある。触れ合うことがその人の生き方そのものを変えたり、或いは影響を与えることもしばしばあり、表面的にはその時わからないとしても、何かの暗喩のように心にそれが潜んでいる場合だって考えられるのである。シーンの長さもよい。登場人物の心の推移が鑑賞者の目にも明らかである。彼らは駅で列車を乗り換えた。彼ら自身とともにだが。
2004/10/19
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個性豊かな荒井花役の「鈴木杏」に対して、その友達、当初は平凡な女子高校生にしか映らなかった有栖川徹子役の「蒼井優」に、どういうわけか作品がすすむにつれて不思議な魅力を感じるようになっていく感じがした。荒井花役の「鈴木杏」とは一見真逆の性格であり、彼女が個性の強い「油」であるなら、有栖川は「水」のようなスッキリ感がある。その潔さはこれを単純な明朗さや、意味深な翳りを発散するものとは明らかに異なり、彼女の持つ非常に繊細な部分をそこに醸し出すことに成功している。「花」が太く重く力強いのであるのに対して、有栖川のそれは言い換えてみれば、細く強くしなやかなのだ。これは監督による演出はもとより両者の役の演じ方が非常にうまかったことを意味する。有栖川が事情あって離れている元の父親と鎌倉の庭園(?)を散歩しているシーン、トランプの逸話、そして極めつけにオーディションで披露したダンスには心を揺さぶられること間違いなし。
2004/10/17
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有名画商が抱えた目利きの顧客である老人の眼に留まったのは、かねてから待ち侘びていた大家の作品ではなく、その付録としてつけられた新進気鋭女流画家の送り込んだものだった。その写実的であり細密な抽象画でもある久々の画風はともすると次なる新時代のブームを巻き起こすに違いない逸材になりうることを予感した画商達は、彼女のルーツを探り出そうとする。彼女の私生活とともに、その作品製作における全てが謎に包まれていた。風呂敷画商とか、エコール・ド・パリとか絵の専門的な知識がふんだんに盛り込まれている。清張お得意の綿密な資料収集の上に出来上がった作品。画壇を構成しそれを取り巻く関係者達の相関図が凝縮されて、描かれる人間の個性が生き生きと表現されている。作中の、美術評論家のもったいぶった難解な言い回しを、登場する支配人が皮肉った感想で述懐する個所は笑えた。
2004/10/01
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南北戦争の狂気の最中、脱走兵として逃げ出し恋人の待つ故郷「コールドマウンテン」へ帰るインマン。(ジュード・ロウ)道中、かつての村民で結成された義勇軍や北軍による強襲を受けるも切り抜けながら旅を続ける。一方、恋人のエイダは恋人の帰還を予想し、訪れた流れ者のレニーとともに自活のための知恵を教わりながら逞しく生きようとする。幾度もの修羅場を潜り抜け、彼らは再び再会を果たすが・・・最後の方のシーンで「最近はあなたのことが頭を離れ、娘や畑のことに気を取られることがあります・・・」というエイダ(ニコール・キッドマン)の台詞があってとても切なくなりました。時間は流れるんですねー。「ノルウェーの森」の冒頭を思い出してしまった。
2004/09/28
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久しぶりに見るルパンシリーズ。数ある中でも最も完成度の高い作品である思うのは私だけでしょうか?カット割のバランスもいいし、アニメーション枠を生かしたスラップスティックなセンスも秀逸だし、あれだけの時間制限の中で非常に発想豊かで遊び心満載のオチを用意しているあたりなんか、製作サイドの余裕すら感じてしまうのです。演出にもこだわりを感じました。決して少なくはないキャラクター達の個性を殺さずに生き生きと描ききってしまうあたりなんか思わず唸ってしまう。
2004/09/23
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某PVで使われたロケ地だというので、どんな映画か見てみようと思い、鑑賞した。愚かしくも輝いていた青春時代のエネルギー。モッズもロッカーも個人的には迷惑な人たちですが(笑)解釈はいろいろあるので何ともいえないけど、自分も幼い頃は無限の可能性を信じていたし、いろんな意味でのスタイルを貫くことにやけにこだわっていたことを思い出した。今となって振り返ってそれは正しかったと信じていることもあれば、あんな恥ずかしいことをなんでしていたんだろうと後悔していることもある。激しすぎる恍惚の日々・・・まぁ、おもしろべスパ?にのって青年が一直線に走り出すシーンはああ、確かに輝いたな、っていう切なさいっぱい。中途半端じゃないところがよかったかな。
2004/09/19
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マーチングドラムというものがあるとは興味深い。今まで対抗試合というとチアガールや応援団のようなものしか頭に浮かばなかったのだが、チーム編成で行われるドラム演奏というものを始めて見た感想は、その指揮能力の高さや突出したリズム感の持ち主がさらに腕に磨きをかけるとこんなことまで出来てしまうものなのかとただ感心するばかり。競技?では高度な技を相手に見せ付ける以外に相手を挑発するパフォーマンスをよく見受けるけど、まあ、連中の切れ具合ときたら(笑)実際にあそこまで頭に来るものなのだろうか?私なら、感心してニヤニヤしてしまうが・・・。民族性の違いかな?それとも純粋娯楽のスポ根映画だからなのか・・・オーランド・ジョーンズの飛び出しそうな目と、タクトを振る姿に妙にはまる。
2004/09/13
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作品としてもサスペンスとしても超一級。言うこと無し!アジアでのサスペンス作品としてこれほどずっしりとその存在感を見せつけた作品は松本清張シリーズ以来。歴史的史実を含め、登場人物の描き方がコミカルでありながらも、背景は非常に重い。配役のソン・ガンホ、キム・サンギョンらの個性的な演技力には感服!ものすごいリアルさがそこにあり、観賞し終わった後も、消化するのに時間がかかりそうだ。エンディングの壮麗なストリングスがとても美しい。韓国はすごいものを作ったな・・・
2004/09/04
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一癖もニ癖もある悪そうな連中が勢ぞろい。伝説の麻薬王カイザー・ソゼとはいったい誰か。最後まで謎に満ちた展開の末にやられたっ!て思ったひとも多いのではないかと思う。ディーン・キートン役のガブリエル・バーンは私の大のお気に入りだ。「ミラーズクロッシング」でのマフィアのボス役は適任だったと思う。どこか翳りがあるんだよね、この人の目は・・・。なんだかエンドクレジットが出るまで生きていることが出来なそうなオーラまで(笑)
2004/09/01
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夫を銃で失った原告が、大手銃器メーカーを告訴。市民の英雄ともうたわれる敏腕弁護士をつける原告に対し、メーカー側も卑劣なやり手の陪審コンサルタントを雇う。さらに陪審サイドには自ら陪審としてもぐりこみグループ内の評決を操作する男が現れる。男の本当の目的は何か。。法廷をめぐり3つ巴の壮絶な争いが繰り広げられる。よかったよかった。銃規制の問題はよく取り上げられるけど、ラストがこんな形でエンディングを向かえてよかったというのが率直な感想。陪審の中には、こういうこと言いそうな人いるだろうなぁと思うような癖の強い人物なども出てきましたね~。勧善懲悪というのか、ほんとに纏まってました。しかしジーン・ハックマンは「アンダーサスピション」の時もそうだったけど、こういう法廷ものにお似合いですなー
2004/08/30
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「ガタカ」は近未来SF的なモチーフとなっている。宇宙局「ガタカ」には、遺伝子操作により生まれたエリート(この時代はDNAの研究がすすんでおり、生まれた赤ちゃんがどういう病気になっていつ死ぬか、そして長所短所まで解析できる。両親は自然出産か、DNAを遺伝子操作することで出産する方法のどちらかを選択することが出来る)しか入れない。いわばエリートとは、DNA操作によって産まれた「弟」であって、主人公の兄は自分のロケット搭乗の夢であるパイロット試験を受ける資格すらめぐまれない環境にあった・・・(面接官は、面接社員のDNAデータをもとに優秀、劣等を分けていた。例え本人がそれを隠蔽しようとしても、面接室のドアノブや出された飲み物の容器に付着するであろう体液を元に審議を精査するわけだ)しかし、そこへある条件付きで、優秀な遺伝子を提供してくれるという男が現れた・・・・近未来を描くステージは、金属的で無機質な光彩に覆われている。たまに出てくる(何時も同じ角度から撮られる)車一台とっても、そうだ。(これはぜひ音に注目して欲しい)たとえばスピルバーグの「マイノリティー・リポート」における、いわゆるハイテク度合いをCGで表現するような未来でなく、むしろ人のふれあいや肌のぬくもりを感じさせるものを一切拒否するかのようなもの、たとえば静寂一色、クリーンで塵一つおちていないシンプルな構造物の印象とか、構築されたシステムそのものに人が組み込まれて規則的に動いている様子などは、アナログなふれあいに必要なものを極端なまでに排出した近未来のリアルな姿を私達に投げかける。そしてその中でリアルに生きている「人間」を見て私はその静けさに吐息や心臓の音を聴き感動した。で、泣いたのさ・・・うっ。
2004/08/26
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冴えない映画監督がとあることから手に入れたディスク。後に彼が起用した美しい女優シモーヌはなんとそのディスクに収められたCGにより再現されたバーチャルな存在であった。しかしそれとは知らない大衆は彼女を大絶賛、監督は一転して華やかな舞台へ押し上げられることになるのだが・・・監督のアンドリュー・ニコルの映像が私は大好きだ。後で知ったのだけど「ガタカ」の監督さんでこちらの作品も良い!「リクルート」のアル・パチーノとはちょっと違ってとことん人間くさかったかな。とてもいい演技でしたよ。
2004/08/24
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箱根宮ノ下で展開する殺人事件もの。女流作家の逗留先に原稿を催促に行った編集者が向かった先は、断崖絶壁の谷底に建つ二つの旅館、駿麗閣と対渓荘。旅館と地上を結ぶものはそれぞれの旅館備え付けの上昇下降用のケーブルのみという隔絶された場所で起こった変死事件。女性編集者を巻き込み第二の殺人が・・・てな具合で始まるのだが・・・全然関係ないけど、昔友達と、宮崎駿の「耳をすませば」という作品のモデルとなったであろう場所のロケ地めぐりというのをしてみたことがある。おそらく多摩の聖蹟桜ヶ丘あたりなのだが、実際に行ってみてそれなりのギャップ差を楽しんだものだった。「蒼い描点」の中に出てくる駿麗閣と対渓荘は本当にそういう場所が存在するのだろうか、とひそかに行ってみたくなったりする。
2004/08/21
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