Beliar

#4




#4:鬼【さだめ】


『ピギャアァアアァアァ!!!』
「ぎゃっ!!」

男が、大きく振りかぶった鎌を私に振り下ろした瞬間、私の断末魔とは別の悲鳴が聞こえた。
妙に声が甲高く、人の声帯では出せないような別の響き声。

「っひ・・・・・!!」
「げっとォーー」
『ギャァアァアァァッッ!!』

男が、屈み込む私に手を伸ばした。
何かされる、と思ったがその手は私をすり抜け、私の背後に手を伸ばした。
突如、現れる紫色の鱗に覆われ、二本の角を生やしたこの世のモノとは思えない異形のモノが現れた。

「それじゃあ、いっただきまァーー」
『ピッ・・・』

ごりん

片手で掴んだソレを男は大口でがぶり、と噛みぐちっ、と体内の赤黒い内臓が飛び出る程グロテスクにソレの肉を食いちぎった。
びちゃびちゃっ、とまるで噴水のようにソレの体内に溜まっていた血が吹き出る。まるで血の詰まった水袋の様に。

「う・・・・・あっ・・・!」

べきん、ごきっ

口元を真っ赤に染め、男は私の存在など気にも止めずにソレをまるで飢えた狼の様に貪った。
ソレから滴る血を見て、恐怖で私は両手で口元を押さえる。

ごきゅっ

「ぷはァーーwごっちィーー!」
「いっ・・・や・・・!」

跡形も無く、ソレは私の目の前から消えた。
男の胃袋に収まった、と考えたってもいい。

「へいき、へいきー。にゃんこは喰ったりしないからァー」
「ッ・・・・!!」
「だいじょぶ、だいじょぶー。よーしよしー」

軽いノリで男は私の頭をぐしゃぐしゃとかき撫でる。
怯えた私は、下唇を思い切り噛み締めながら無言で何度も頷いた。頷くことしか出来ない、実際この目で見たのだから、否定したくたってそれも出来ない。
でも、一つだけ確認したい。

「なッ・・・なに・・・あ、あッ、れ・・・!」
「んー?鬼のことォーー?」

彼が貪るように食べていたのは、鬼と言うものなのか。
私は、彼の言葉に小さく頷いた。

「鬼はねェー、俺ら鬼将のメシみたいなもんー。アイツらは人を喰うから、その前に俺らがアイツラを狩って喰ってんのー。」
「ひと・・・をた・・・べる・・・!?」
「そォ。にゃんこ、俺と出会ってラッキーだったねェ。」

じゃあ、彼は私が食べられるところを助けてくれたのか。
目頭が途端にじーーん、と熱くなる。目から暖かい水が溢れ出してくる。

「うえっ・・・!」
「ああーー、にゃんこ、よしよし泣かないでー。」

なんなんだ、この男。
勝手に人の家でぶっ倒れてて、目覚めた途端に殺されかけるし、怪我させられたし、助けられたし。
なんなんだ、この男は一体。

「なまえェー」
「え?」
「にゃんこ、お名前は?」
「なまえ・・・?」

金髪から覗く、翡翠の瞳が細められる。
吸い込まれそうな瞳に、私は成すがままに己の名前を呟いた。

「ま、槙野、やな・・・」
「そかァー、やなって言うのかァ。」

いい、名前ー、と彼はまたも鎌の刃をジャギンと引っ込めさせた。

「俺ねー、真田幸村って言うのー」

一瞬、どこの馬鹿だと思ってしまった自分がいる。




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