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2011年11月13日
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テーマ: 銀魂(1196)


銀魂二次創作小説【苦渋】<二> の続きです。



「いつから気づいちょった?」
高杉の部屋の前での廊下に、二人はこっそり酒を持ち出して星と夜風を肴に喉を潤していた。
坂本は胸の前に胡坐をかき、高杉は肩膝を立てて座っている。
「ワシが宙に行こうかどうか、悩んじょった事」
坂本は手元の猪口に新たに並々と酒を注ぎ、豪快に口に運ぶ。
高杉は軽く口に含む程度ではあったが、それでも合わせれば結構な量を飲んでいるようだった。
「さぁな。でも多分、お前が最初にその事を考えた時なんじゃねェかな」
高杉がそう答えた隣で坂本は地面に向かって顔を突き出し、
口からたった今飲んだばかりの液体を全て吐き出しているようだった。
高杉は少々嫌そうな顔をして鼻を手で覆ったが、
それに気づく様子も無く坂本は少しだけ息を切らしながら言葉を続ける。
「てっきり反対されると思っちょったぜよ。それ考えてたら恐くてのう」
「お前がそんなタマかよ」
高杉は鼻で笑ってそう言うと、隣で本格的に具合の
悪くなっていそうな様子の坂本の背中を軽く叩いて言う。
「さ、もう行けよ」
坂本は何度か頷きながら、若干フラついた様子で立ち上がる。
高杉も立ち上がっては、程坂本が置いた布の包みを取り上げその手に握らせた。
坂本はその包みに目をやった後、高杉を見下ろすと眉を潜め、少々意地の悪い顔を浮かべて言う。
「やっぱりまだ少し、納得がいかんの。
ワシにこげなもん渡すくせに、自分は棒切れ振り回すっちゅーんか?」
「俺ァ流行りの音楽より、三味線の方が好きでねェ」
高杉は諦めたような、仕方無いとでも言うような表情でそう答えた。
「鉄砲玉よりコイツが性に合ってるだけだ」
今腰に刀は無かったが、まるでさも其処にあるように左手を動かしてそう言った。
その言葉に坂本は高らかに笑い、高杉から貰った銃を懐にしまった。
「おんしらしいの」
「そうだろ?」
杯を片手にそう言葉を交わした二人の姿はさながら強かな悪戯小僧のようで
時に企み、時に騙し、時にからかい、時に励まし、時に怒り、時に悲しみ
それでもきっと最後には二人とも、笑うのだろう。
「いつでも会いに来いな」
「ああ。達者でな」
手を大きく振って去っていく坂本は何度も何度も飽きる程に振り返り、
終いには後ろ向きに歩く始末であった。
その姿がようやく見えなくなった時、高杉は再び廊下に腰掛け酒を注ぎ、
一人杯を宙にかざし微笑んで、猪口の中身を飲み干した。



「じゃぁ銀時、戻ってくるときはこのメモに書いてあるものを調達しながら帰ってきてくれ」
「あいよ」
まだ日の出からそう時は経っておらず、遠くに朝焼けが見える刻限。
編み笠を被り風呂敷包みを背に、手には刀、足には下駄を履いて
旅支度の整った坂本の前で、銀時と桂がいつもの押し問答をしていた。
「ちゃんとお金持った?忘れ物してない?」
「してねーよ何でお母さん口調なんだよ」
「アッハッハッハ」
昨晩の酔いの痕も顔に残さず、爽快な顔をした坂本は
何とも能天気なその光景につい笑ってしまった。
桂は銀時への用が済んだのか、坂本の方へ向き直ると優しく微笑んだ。
「行くんだな」
「ああ。暫しお別れじゃの」
坂本がそう言うと桂は頷いて、真っ直ぐに右手を出した。
坂本は勢いをつけて右から振りぬくように手を差し出し、
二人の手の平はしかと掴み合い、堅い堅い握手を交わした。
「武運を祈る、友よ」
長い髪と凛々しい表情でそう言った桂はまさに武士そのものといった貫禄で
少し照れくさい様子でポリポリと後ろ頭をかいた坂本の後ろでは
銀時がどうでもいいから早くしろと言わんばかりに、小指を鼻の穴に捻じ込んでいた。
やはりその姿が見えなくなるまで何度も何度も振り返り、
最後には銀時に引っ張られるように歩いていた坂本が見えなくなった時、
桂は方向を変えて、宿営地へと戻っていった。



「美しいのう」
戦争地帯から外へ、外へと歩くに連れて確実に緑は増え、
木々は実をつけ花をつけ、爽やかな風に揺れながら地面にまばらな影を落とした。
「こげなもんば見ちょると、向こうで戦争ばやっちょるなんて信じられんきに」
「・・・そうだな」
カラン、カラン、と下駄の大きな音をたてて歩く坂本と
そこらの木々になっていた実を見つける度に口に放り込みながら歩く銀時は
何を喋るでもなく何を喋らないでもなく、のん気に歩を進めた。

ゆっくりと、だが着実に離れていく仲間たちを後に
子供の頃の事、戦争に参加したばかりの頃の事
仲間と出会った頃の事、それから交わした言葉の数々が頭の中に全てが繋がって思い起こされ
目の前の景色と相絡まって、坂本の目にまるで映画のように映った。
誰もが皆それぞれに生きた証と生きる理由を持ち
その手に剣と命を抱えて、精一杯戦っていた。
死んだ仲間も、生きる仲間も、アイツも、アイツも、誰もかも
皆が掛け替えの無い人々だった。
誰一人として失われてよかった筈が無いし、この先も失われていい筈が無かった。
隣を歩く銀時の姿を最後に、目の前は真っ白になって、また景色だけの姿に戻った。
これから先の事はまだ、何も知らない。
これから出会う誰の事も、何も分からない。


いつの間にどこで集めたのやら、手の平に幾つも野苺を乗せて
口に放り込んでいる銀時に、ふと坂本は問う。
「なぁ銀時。一人と百万人だったら、どっちを助けるがか?」
銀時はあからさまに眉をひそめて頭は大丈夫かとでも言いそうな雰囲気で坂本に答える。
「はあ?急に何だそれ」
「ものの例えじゃ」
「自分の1番近い所にいるやつから順番に助けていくよ多分。つかそれ以外どーするってんだ」
少しも考える事すらしないで、銀時はそう答えた。
坂本は毒気を抜かれたような、放心したような表情に変わって銀時をマジマジと見つめていたが
当に銀時はもう興味を無くして、手元の野苺の残りを全部口の中に放り込んだ。
「アッハッハッハッハ そういう事聞いたじゃなかったんきにのう」
坂本は吹き出して、手を叩いて笑った。
「じゃが確かに、天秤の荷を移し変えちゃいかんなんぞとは言わなかったの」
坂本が独り言のようにそう呟いたのを横目に、
銀時は怪訝な顔をしつつも、まぁいつもの事だと特に気にする事も無く
桂から預かった金をどう誤魔化して甘味を買えばいいか、作戦を考えていた。
「ありがとうな、銀時。随分と、楽になったぜよ」
「・・・どういたしまして」
適当に相槌を打った銀時ではあったが
何処かつき物が落ちたように見える坂本の表情の変化に気づかなかった訳では無く
何はともあれ旅先には幸先の良い出来事なのではないかと
脇の刀を時折ぶらつかせながら、のんびりと歩いた。


「じゃ、俺はここまでだ」
村はずれの寺まで辿りつき、その先に見える長い下り階段を前に銀時は歩みを止めた。
「やっぱり行かんのか?」
坂本のその問いに銀時はただ首を横にふって答えると、
坂本が少し残念そうな声で言った。
「・・・・・・・・・そーか お前がおりゃあ面白か漁になると思っちょったんじゃがの~」
「ワリーな こう見えて地球が好きでね」
悲しむでも寂しがるでもなく、喜ぶわけでもなく。
かと言って無関心というわけでもなく。銀時はやんわりと言葉を紡いだ。
季節は移ろい徐々に寒さが訪れ始めたこの国の中で、
首に巻いた黒い襟巻きだけが、銀時が夏に来ていた服との違いだ。
「宇宙でもどこでも行って暴れ回ってこいよ おめーにゃちまい漁なんじゃ似合わねー
デケー網宇宙にブン投げて星でも何でも釣りあげりゃいい」
坂本にそう伝えた銀時の言葉を受けて、
宙に行くことを最初に打ち明けた相手が銀時だったのは
彼ならこう言ってくれると心のどこかで分かっていたのかもしれないと、
そんな考えが少しだけ坂本の脳裏をよぎった。
「・・・おんしゃこれからどうするがか?」
「俺か?そーさな・・・俺ァのんびり地球で釣り糸たらすさ
地べたに落っこちまった流れ星でも釣りあげて もっぺん宙にリリースよ」



銀時のその言葉を最後に、坂本は一人になった。
最後の一人との別れも終えて、やけに大きく響く自身の足音に耳を澄ましていた。

―皆の事頼む―

(流石にそれは、言えんかったのう)
坂本は編み笠を被り直しながら、そんな事を考えた。
誰よりも坂本自身が分かっている自信があった。
この戦争に未来は無い。恐らく、確実に、大方の仲間たちが死ぬのだろう。
よしんば運よく死ななかった所で、その先に待つ過酷な運命からは
政権を彼ら自身の手で奪わない限り逃れられはしない。
そんな無茶な事を本気で頼むに至らない程度には、坂本の頭は冷静だった。
(だが、それでも言ってみたくなるんは、何でかのう)
心のどこかで根拠の無い温かい安心感を抱いて、坂本は戦地を後にした。




【完】





ぽっぽさんの世界観。がっつり楽しませていただきました。

私がごちゃごちゃ書いてもあれなので、ぽっぽさんからのメールを抜粋させていただくと

坂本さんと高杉さんは親友だと良いなっていう私の願望の元、坂本さんが戦争から抜ける時の二人の別れを書こうとしたら(坂本さんと高杉さんのターンがやたら長いのはその所為です)銀さんと桂さんがいないっておかしくね?ってなって結果的に全員出てきて、4巻の例の回想シーンの前後を妄想1000%みたいな事になりましたw

補足すると、色んな人と共同で志士全体を率いていたのが桂さんで、鬼兵隊は其処から浮いた存在だったのではという私の勝手な推測の結果、全員は無理でも高杉さん率いる其処の部隊だけでも何とか離脱させられないかなって頑張ったみたいな。銀さんは離脱させるっていうより一緒に宇宙に行ってみたい一人だったんじゃないかなと思いました。


松陽先生の思い出を共有してなかった分、高杉さんにとっては坂本さんの存在に救われてたこともあったんじゃないかな…っていうのは私の妄想っていうより願望ですが、私も、坂本さんと高杉さんは仲良しだったらいいなって思います。

っていうか、攘夷組が勢揃いすると、やっぱり桂さんって癒し系…と思ってメロメロしてたことは内緒にするとして、

ぽっぽさん、ありがとうございました!☆(≧▽≦)☆!


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最終更新日  2011年11月13日 12時25分51秒
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堪能させていただきました!!  
poyopoyon さん
SS、素晴しかったです!

ブラボ===!! (2011年11月14日 08時40分36秒)

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