足跡




ある夜、私は夢を見た。

私は、神様とともに砂浜を歩いていた。

振り返ると、砂浜には二人分の足跡が残っていた。

一つは私のもので、一つは神様のものだった。

これは、これまでの私の人生の足跡であった。

足跡を見ていると、私の人生の様々な場面が、走馬灯のように思い出さ
れた。


よく見ると、これまでの私の人生の中で、足跡が一人分しかないときが、
何度もあることに気づいた。

それは、私が辛く悲しい思いをしていた時期ばかりだった。

ああ、あの時は、信頼していた友だちに裏切られた時だ。
ああ、あの時は、失恋して落胆していた時だ。
ああ、あの時は、事業で失敗した時だ。


私は神様に尋ねた。

「神様、あなたはずっといっしょにいてくれるものと思っていました。
しかし、私がもっとも辛かった時期には、一人分の足跡しか残っていま
せん。
あなたを最も必要としていた時に、どうして私をお見捨てになられたの
ですか?」


すると、神様は答えておっしゃった。

「いとしい大切な我が子よ。
私は、愛するお前を、決して見捨てたりしない。
お前をひとりぼっちにはしない。
一人分しかない足跡は、お前の足跡ではないよ。
その足跡は、私の足跡なのだよ。
悲しみに打ちひしがれるお前を背負って歩いた 私の足跡なのだよ。」





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