Dragon's nest

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第4話:特上 特盛り 目一杯



セシルが訝しげに訊ねた。

「何ってカレーライスですけど、何か?」

大量のカレーを作ったセイがそう答えると、
さらにセシルは文句をつけた。

「料理名ではなく、量の事を言ってるんだ!
 何故、貴様やラバイトの皿が並で、
 僕のは大盛りカツカレーなんだ!!?」

「ザクラの姉ちゃんだったら、
 同じように大食いなのかなぁーっと…」

セイが答える横で、
ザクラが大盛りのカツカレーをガツガツと
自棄食いの様な勢いで平らげていた。
これにはラバイトも少々驚いたらしく、
「セシルはこんな食べっぷりじゃないよ」とこぼした。

「え、違うの?」

セイが訊ね、ラバイトが頷くと、
セシルは付け足した。

「ザクラはまだお子様、だからな。
 霊素の摂取と消費がうまく出来ないから、
 食物で補おうと身体が反応してるんだ」

「へぇ…
(それ以外の理由もある様な気もするんだけど…
 俺に翼摘ままれた事とか。)
 アンタは食べなくても良いのか?
 食が進んでない様だけど…
 それとも、辛いの苦手?」

「いやぜんぜ…」

セシルが言い返そうとしたその時、
二、三口しか手を付けていない
大盛りカツカレーに手が伸びた。

「セイが作った料理に文句あんの?
 だったら食べないでくれる?」

ザクラは会話を全く気に留めず、
セシルの分にも手を付けた。
言葉に幾分、トゲがあった。

「ちょっ、ザクラ、お前…
 いくら兄弟(姉妹?)仲が悪いからって…!」

「いいんだ。
 作った貴様には悪いが…」

そう言いかけて、セシルが
「もういいかな?」とラバイトに言うと、
ラバイトも苦笑いして
「うん、今日は頑張った方だね」と言って、
錠剤を渡した。

「…何ソレ、薬?」

セシルが錠剤を呑むのを見て、
今度はザクラが訝しげに訊ねた。

「ああ、これは…」

ラバイトが穏やかな口調で説明しようとしたが、
ザクラは逆上して「君に訊いてないよ!」と遮った。

「ていうか、肝心なコトを説明してないよね?
 なんで今更ノコノコと姉貴面して出てくるのさ?!!!
 なんで天使と一緒にいるのさ?!!!
 答えろ、
 この “売女(ばいた)” がッ!!!!!!」

一気に雰囲気の温度が下がった。
まさかザクラが、そんな差別的な言葉を口にするとは。


…ブチッ!


「…今、何と言った?」



ラバイトの口調が豹変した。
イスから立ち上がって、ザクラを睨む。

「セシルに向かって“売女”と罵ったな…?」

「待って」

殺気を感じ取ったセシルが、
ラバイトの手を掴んでなだめた。

「そう思われても仕方がないんだ。
 だから妹には…頼む」

「だけど…!」

「お願いだから…ね?」

セシルの「お願い」には弱いらしい。
ラバイトは「君がそう言うなら…」と殺気を静めた。


…あれ?
セシルって、こんなに弱々しかったっけ?


見た事の無い姉の一面に、ザクラは違和感を覚えた。
そしてますます混乱が生じてきた。



「あー……、ナルホドねぇ…そゆコト」

蚊帳の外状態で見ていたセイが口を開いた。

「セシル…ザクラに隠し事してんだろ?
病気に罹ってるって事と、
 主治医兼恋人もしくは夫がラバイトだって事!




カラァーン…



ザクラはずっと握っていたスプーンを落とした。
姉が病気というのも衝撃的だが、
天使と恋仲になるとは夢にも思ってなかった。
セシルとラバイトも、
まさかセイにそう言われるとは予想外だったらしく、
目を丸くした。

「…えーっと、とりあえず…」

ラバイトがセイを見て一呼吸置く。


「・・・・・・・」


セイも何故か息を呑む。


「・・・・・・・」


そしてラバイトが一言物申す。























「正解。」


スッパリと言い切った…!!!!!


「妙な所が庶民的だな、ラバっち…
 背後にみの●んたが見えたぜ」

「それより何だ、その『ラバっち』って?」

「あだ名だ。ニックネームだ。
 俺の事はフレンドリィに
 『セイっち』とでも呼んでくれ」

「断る。馴れ馴れしい…」

「ちょ…ちょっと待ったぁ!!!!!」

ザクラが困惑そうに遮る。

「どーゆー事?!
 今すぐ本気で説明してよ!!!!!!」

絶句していたセシルだったが、
ザクラの困惑そうな顔を見て、
少し得意気に微笑んだ。

「…説明してあげる。
 全部食べ終わったら…な」

「いぢわるー!!!!!!!!!」

「さっき、“売女”と罵ったのは、何処の誰だ?」

「ヴッ」

落としたスプーンを取り替えて、
ザクラはカツカレーを全部平らげた。


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