Dragon's nest

Dragon's nest

第7話:aftereffect(余波)



醜い何かの死骸がゴロゴロと散乱していた。
ざっと見ても十数体分の死骸。
そして、その死骸から大振りな剣を抜く少年の姿があった。

「…足りねぇッ」

血肉に餓えた獣の如く、少年は叫ぶ。

「ぜんっぜん物足りねぇぇええええええッ!!!!」

ゴッ!

「ふがっ」

少年の頭部に、少女が飛び蹴りをお見舞いした。
そしてぴしゃりと中国語で一言。

「真難聴(ウルサイ)。」

「だってよぉ…美華(メィファ)!
 雑魚ばっかりでつまんねぇよ!!」

「ユート…今のアンタに上級の相手は無理。」

「まぁまぁ、そうキッパリ言うたら可哀想やで?
 メィ姐姐(姉さん)」

メィファと瓜二つの少女が、怪しげな関西弁訛りで話し掛けた。

「麗華(リィファ)!」

「…リィ、
 次の獲物の情報は?」

「あったで~。
 現状にご不満なユートはんにも、コレは朗報や♪」

ユートとメィファの携帯電話が鳴る。
リィファはニヤニヤと笑いながら、
「添付ファイル見てみー?」と二人を促した。

「!!!! …こ、コイツら!!!!」

ユートは画面に目を通すなり声を上げた。
メィファも驚いた様に硬直している。

「…ちょっと、A級どころかS級じゃないの!
 それも一緒に行動してる可能性大って…
 アタシらで狩れると思ってるの?」

メィファが困惑そうに言うが、
リィファは笑顔のまま言い返す。

「でも、ウチらにとっては因縁の獲物やろ?
 ウチらの人間としてのスクールライフ、
 コイツらに奪われたんも同然や。
…それに桜先生のコト、忘れたとは言わせんで?

携帯電話を仕舞い、ユートはニヤリとほくそ笑んだ。

「…上等じゃねーか。
 俺がぶった斬ってやる!!!!」

メィファは苦々しく携帯電話の画面を見つめた。

「禁忌とはいえ、
 他人の恋愛の邪魔はしたくないんだけど…ね」

メールに添付されていたファイルには、
天界と魔界からの“極秘の指令”が記されていた。































堕天使・ラバイト=インセルグと
 ロアの元配下・セシル=クロウの抹殺を命ず。
』と。



真っ暗な暗闇の中、セシルは怯えていた。
迫り来る…纏わりつく様な恐怖に。


 ―…待てよ…


…厭…


闇から響く、男の声が呼ぶ。

それに対する拒絶。

そして、恐怖と嫌悪。


 ―あんだけ可愛がってやったんだ…お前は俺のオモチャだろが…


…違う…僕はもう…!


暗闇の中から男の腕が伸び、セシルの細い腕を掴む。

如何しても忘れられない、包帯を巻いた腕。


「ひ…っ!」


 ―…待てっつってんだろうがぁあッ!!!!
  セシルぅうぅうッ!!!!


いやぁあぁああああッ!!!!


がばっ!

悲鳴を上げた所で、セシルは起き上がった。
呼吸を乱したまま、周囲を見回す。

そこは、真っ暗な暗闇の中ではなく。
セシルの腕を掴んだ男の腕も無く。


「セシル…?」


セシルの顔を覗き込む、碧い独眼があった。

「どうした…?」

自分を心配する恋人を見て、セシルは泣きそうになった。

「らばい…と…っ」

ここはナルミから貸し与えられた、セシルとラバイトの寝室。
二人を脅かすものなど、何一つ届かない。
それなのにセシルは、未だに身体を震わせている。

察したラバイトは、顔を見ずにセシルを抱き寄せた。
顔を見なかったのは、2つの感情を悟られない為。

弄ばれた後遺症…とはいえ、
自分以外の男の事で、心を支配されている事に対する嫉妬と、
癒したいのに、癒しきれないという歯痒さ。


…葛藤…と、いうべきなんだろうな。




また…奴の夢を見たんだね?


ラバイトは出来る限り、
優しく訊ねた。

けれども、

その声はどこか切なさが混じっていた。


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