Dragon's nest

Dragon's nest

第三話「ハンターの二人」


「出来るか?」
「結構真新しいから、明日までには出来ますよ。」
「そうか。ならば頼む。」
武器屋の主人に金を払い、アシュタルは武器屋を出る。
外に待たせておいたステアとコケットを連れ、宿屋に戻ると、簡単な夕食を取る。
地元の者達がまだ、酒を飲んだり、夕食を取ったりしている中、アシュタルはステアに言った。
「明日までには出来上がるそうだ…あの大きさじゃ、短刀が限度だろうな…」
「ソレデイイ。オカーサント、オトーサンノ形見ダカラ。」
アシュタルの眼を見つめて、ステアは頷いた。
その時…
「きゅー!」
聞き覚えのある声に、ステアは席を立ち上がった。
椅子の間を縫って、灰色の尻尾が此方に近づいて来る。
「ア…アルプ?何故、アソコニ居ナカッタカ?」
「ぎー!きゅー!」
「何て言ってるんですか?」
「寂シイッテ。落チ着カナインダッテ。」
そう、二人に言いながら、ステアはアルプの頭を撫でた。
「ほー。珍しいなぁ…龍がこんな所に居るなんてよ?」
そう、声を上げた人物に、三人は振り向いた。一瞬、緊張感が漂う。
20代半ばに見える男がこっちを見て、笑っていた。
銀髪を、無造作に肩につくかつかないかくらいまで伸ばし、森のように深い緑をした瞳をしていたが、鼻の頭から顎にかけて灰色の頑丈なマスクをしているせいで、笑っているのか分らなかったが、目が笑っている。
その雰囲気に三人は肩の力を抜いた。
「それ、お嬢ちゃんのかい?」
「ア…зхсёчкыпхмэ…!」
「す…ステアさん?」
「何言ってるんだ…?」
アシュタルと、コケットは目を見開いたが、男は一瞬、目つきを鋭くさせると、呟いた。
「龍語か…」
「落ち着いてください。ステアさん!」
慌てるステアをなんとか落ち着かせようとするコケット。
男は慌てるステアを見て、再び笑うと落ち着かせるように手をパタパタと仰いだ。
「まぁまぁ。慌てなさんな…っと。自己紹介がまだだったな…俺はツバキ。まーそこらへんをちょろちょろとうろついているハンターかな?」
「ハンター…ですか?」
「今はそこのカウンターに座っている女と組んでいるだけだな。」
そう言って、ツバキが指差した先には、料理を口に運ぶ女性の姿。
「おい、リーフ!滅多にお目にかかれない龍が居るんだぜ?ちょっと見てみろよ?」
ぴたり。と料理を口に運ぶ動作を止めた女性…リーフはツバキを睨むように目を向けた。
「煩い…人が静かに食事している邪魔をするな…」
「…怖…」
それ以来口を閉ざすと、リーフは席を立ち、階段を上り、寝室へと去っていってしまった。
「…あの女、クウォーターエルフか?」
目だけでリーフの姿を追っていたアシュタルは、視線を戻すと、ツバキに話し掛けた。
「あ。良く分ったな?その通り、あいつはハーフとハーフの間に生まれたクウォーターエルフだよ。で…?嬢ちゃんたちの名前は?」
「わ…私はコケット…」
「うんうん。で、そこの龍を連れた嬢ちゃんの名前は?」
「ス…ステア=ディグレスだヨ…コッチはオトート…」
「ん?ハーフか?」
ずいっ!と迫られて、ステアはたじろぐ。
「チ…違ウ!ステア、本当ノオトーサンとオカーサンに捨テラレタカラ、龍ノオトーサント、オカーサン二拾ワレタンダヨ!」
「龍…?最近、誰とも知らぬ奴等に狩られた…って言う龍夫婦じゃないよな…?」
一瞬、真面目になったツバキにステアは再びたじろいだ。
「ソ…ソノ龍ッテ、何カ特徴的ナモノ、アッタカ?」
恐る恐る聞いたステアの質問に、ツバキは首を振った。
「いや、仲間から情報を買っただけだから、最近狩られたとしか情報がねぇよ」
「ソウカ…多分、ソノ龍、ステアノオトーサンと、オカーサン…」
「不運だったな…俺に出来る事と言えば、成仏できる事を祈っているしかないな…」
ぽんぽんとステアの頭を、ツバキは優しく叩く。
途端、ステアの目から大粒の涙が溢れ出した。
「ッ…オトーサン…オカーサンっ…」
「きゅー」
ステアが泣き始めたのを見て、アルプも首を垂れた。
「お嬢ちゃん?」
「ダ…ダイジョウブ。ステア、決メタ…『モウ、泣カナイ。』」
「でも、泣きたい時に泣ける強さもあると思いますよ?」
「コケット…」
ステアの手を取り、コケットは微笑んだ。
「時間はある。「もう泣かない」と自分に戒めるかは…今決める事じゃない。」
「…ウン…」
その晩、ステアと弟の二人が一緒に眠れるよう、気遣ってくれたのかアシュタルが一人個室を取ってくれていた。

back02.gif home02.gif next02.gif


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: