Dragon's nest

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第八話「アシュタルの正体」


体当たりされた衝撃で取り落とした銃を拾おうと、ユーリは手を伸ばしたが、リーフがユーリの手の届かない所に銃を蹴飛ばした。
「アシュタル!」
「弾は通過してる。だが…早く医者に見せたほうがいい…」
そう言うツバキに、ステアは、アシュタルの腹部を見た。
じくじくと滲み出す血に、ステアは一瞬怯んだが、ふるふると首を振ると、自分のスカートを破き、アシュタルの腹部にきつく巻きつけた。
「ツバキは分るが…お前、どうしてアシュタルまで狙った…?」
ぶりぶりと尻尾を振るアルプの頭を撫でながら、リーフはユーリに問う。
「言った通りだ…私は…魔族を憎む…」
「ドウシテ、魔族憎ム?アナタノ話聞イテモ、何処ニモ魔族、出て来ナイ!」
「お前…人なのに気付かないのか?お前の後ろに居るその男には人と魔族の血が混ざって居るんだぞ!?」
「ェ…?」
じわり。とステアが巻いた服を超えて、血の滲む腹部を抑え、ツバキに支えられてようやく立っていられるアシュタルを見て、ステアは息を呑んだ。
「それに、その姿…魔族そのものだ!」
「違ウ!アシュタルは人ダヨ!!何処を見タラ、魔族!?」
アシュタルを庇うステアに、ユーリは、唇を噛み締めた。
「…良く見ろ…ソイツの背中の羽は何だ!?爪は!?これでも魔族と言えないのか!?」
ユーリが指差す先には、背中に翼が生え、耳も爪も尖りだしたアシュタルの姿。
「ステア嬢ちゃん…俺からも言っていいか?その…魔族の端くれの俺でも分るんだが…こいつは確かに人と魔族のハーフだ…魔族は人に化けていても、本能的に仲間が分る…俺もコイツに出逢った時、本能的に悟ったよ。」
呼吸の荒いアシュタルを支えているツバキも、ステアを納得させるように言った。
「ソ…ソンナ…」
「私の邪魔をしないで欲しい。ステア、貴女を殺したくは無いの…」
どこかに隠していたのだろう。ユーリは銃を取り出すと、トリガーを引き、アシュタルに狙いを定めた。
「ヤメテ!」
ステアが叫び、アシュタルに覆い被さろうとした直後、周りの空気が一変に豹変した。
「リーフ!そいつを連れて、速く離れろ!どこでもいい、とにかく遠くだ!」
ツバキの言葉にリーフは頷くと、ユーリを小脇に抱えて、森の奥へと疾走した。
「嬢ちゃん、コケットを連れて、離れてくれ!」
「ドウシテ!?」
「暴走してる!魔族の血が、生命の危機に反応したんだ!」
「リーフは?」
「アイツは森の民の血を受け継いでいる…隠れる事くらい、造作も無い!」
「ツバキはドウスル!?」
「俺は…コイツを止める!」
既に、ツバキの手を離れて立っているアシュタルは、背に背負った大剣を引き抜くと、殺気を放ちながらツバキに切りかかる。
「くっ…!?」
銃身でアシュタルが振り下ろした刃を受け、ツバキは弾く。
何とか隙を作ろうと、爆薬を取り出したツバキだったが、目の前にステアが飛び出し、短刀でアシュタルの剣を受け止めた。
「嬢ちゃん!」
「ツバキ、アシュタル止メル事ハ…?」
「分らん。だが、嬢ちゃん、逃げないと…!」
男と女で、剣の競り合いをしようにも、力の差が大きすぎる。
案の定、ステアはアシュタルの力に押されて、だんだんと膝をつきかけていた。
「嬢ちゃん、アシュタルを蹴るんだ!思い切りだぞ!?」
「う…ウン!」
何かを思いついたのか、ツバキはステアに声を掛け、ステアは思い切りアシュタルの腹部を蹴る。
腹部を蹴られ、仰け反った一瞬の隙を突き、ツバキはアシュタルの鳩尾を殴る。
「かっ…!」
アシュタルは、殴られた鳩尾を抑えていたが、二、三度よろめくとその場に倒れた。
そのまま、ステアとツバキはアシュタルの様子を見ていたが、これ以上何もないと判断すると、同時に地面に座り込み、盛大に溜息を付く。
「「ビックリしたー!」」
「ま…なんと言うか…結果オーライだな。」
「デモ、リーフ呼ビニ行カナイト…」
「俺が探してくるわ…嬢ちゃんはアシュタルの様子、見ておいてくれ。」
「リョウカイ。」
そう言うと、ステアは笑って、拳をツバキに向けた。
その意味が判ったのか、ツバキも笑うと、ステアに拳をぶつけた。

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