Dragon's nest

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第九話「理由」


「ステア…?それに…コケット…」
自分を呼ぶ声に目を開くと、心配そうな表情でコケットとステアが見下ろしていた。
「俺は…?ぐっ!?」
起き上がろうとして、動かした身体に激痛が走る。
「動イタラ駄目。アシュタル、油断シテタ。モンスターに後ろカラ攻撃サレタ。ダカラ、ジットシテル。」
ぽう…とステアの体から淡い光が漏れる。
ステアは掌をアシュタルの身体に当てると、龍語で言葉を紡ぐ。
「ステア嬢ちゃんの能力だ。嬢ちゃんが言うには、両親から魔法をかけられた時に自然についてしまった能力だそうだ。」
自分の隣にかがんだツバキはアシュタルに説明するように話す。
…アシュタルが気を失った後、暫くしてツバキがリーフとアルプを連れて戻ってきた。
ステアがユーリの姿が無い事を質問すると、リーフは…
『もし、連れてきていたら後々ややこしくなるだろうと思ってな…気絶させて、森の中に置いてきた。』
と、さらっと言い放ったのだった。
「魔法…?」
ツバキの言った言葉に、アシュタルは顔をしかめる。
「『延命魔法』と言う魔法だそうだ。本人が言うにはな。因みに、今お前にかけているのは回復魔法だ。『延命魔法』は龍族のほんの一握りの者にしか使えない特殊な魔法でな、嬢ちゃんの他にもいるんだろうが…なかなか居ないようだ。」
「…まさかとは思うが…」
考えていたアシュタルが、何か思いついたようにツバキを見上げた。
こくり。と頷いてツバキは目を細めた。
「ああ。嬢ちゃんの両親が殺されたのは、『誰か』が『何かの為に』嬢ちゃんの両親が使う『延命魔法』が必要になったからじゃないかと思う…」
「……」
「もし、この世にその『延命魔法』が使える龍が嬢ちゃんの両親で最後だとしたら…」
「最後じゃない。ステアの…弟が居る。」
「……!」
考えて居たツバキにアシュタルがステアの弟を指差した。
弟を見て、ツバキの目が見開かれる。
「ステアの弟は、ステアの両親が産んだ龍だ。となると、自然とその能力も遺伝的に継承されている事になる…」
「そうか…その話、まだ嬢ちゃんには…?」
「言っていない。だが、早い内に言わないと、ステアの弟…それに、ステア自身が狙われる事になる。」
「…フウ…終ワリ…アシュタル、痛イ所、無イカ?」
「ああ。助かった。」
そう言いながら、アシュタルはツバキに目で合図を送る。
その合図を受け取り、ツバキはステアに声を掛けた。
「嬢ちゃん。」
「何?ツバキ?」
「話がある。アシュタルは当分動けそうに無い…だから、アシュタルの体力が回復するまでの間…だ。いいかい?」
ツバキが聞くと、ステアは頷いた。それを確認して、ツバキは重々しく口を開く。
「嬢ちゃんの両親が殺された理由だが…」
その一言で、ステアの体がビクリ。と震えた。
「…思い出したくは無いだろうが、ちゃんと聞いてくれ。嬢ちゃんの両親が何故、殺されたか…それは嬢ちゃんの両親が使える魔法だと思う…心当たり、あるだろう?」
そう聞かれて、ステアは考え込むように俯く。
暫くして、何かを思い出したのか、ステアは顔をバッ!と上げた。
「エンメイ…マホウ?」
その言葉に、ツバキは頷く。
「そうだ。その、『延命魔法』が理由だ。これは俺の推測だが…嬢ちゃんが出かけてすぐだろうと思う。ハンター達が嬢ちゃんの両親のところに来て、交渉を持ちかけた。龍ってのは知能が発達しているからな。長生きすればするほど人語も動物語も理解してくる。だから、嬢ちゃんの両親のところに来て、交渉したんだ。多分、「主の為にお前達の特殊能力を使ってはくれまいか…」ってな。だが…」
「オカーサン達、断ッタ…」
「そう。多分、主か雇い主に言われたんだろうな。「拒否したなら、その場で殺せ」ってな。」
そう言い、ツバキは自分の首を人差し指で、首を指すと、右から左へと、素早く動かした。
「その言葉を、ハンター達は忠実に守った。だが、殺すだけならそこで話は終わりだ。なぁ。アシュタル?」
ツバキは立ち上がり、腕を組むと樹の幹に体を預けているアシュタルを見下ろす。
「確かに…だが、そのハンター達はお前の両親の首を持ち帰った。ステア、お前はケガをした時、両親はどうやって治していた?」
「……血……」
ステアの脳裏に過ぎったのは、ケガをして泣いている自分に母親が自分の皮膚を傷つけ、垂れた血をステアの傷口に落としていた姿。
「…お前の両親はとんでもない回復能力の持ち主だったようだな…もし、ハンターを雇った奴がその血を飲んでみろ…半不死身状態…傷つけても傷つけても、たちどころに傷が治ってしまうバケモノになっているだろうな…」
「それと…だ。嬢ちゃんの両親がその、魔法を使えた最後の龍…だったんなら、もうハンター達は追ってこないだろうな…だが…今まで何度、寝込みや旅路の途中で襲われた?その理由は…両親の血と遺伝子を完璧に受け継いだ龍が居る…分るな?」
「……アルプ?……」
「そうだ。嬢ちゃんの弟が最後の生き残りに等しい。だから、何としてでも嬢ちゃんの弟を雇い主が欲しがっている筈だ。生きたまま…な。」

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