Dragon's nest

Dragon's nest

十九話「A secret thing」


日が昇りだした頃、何時ものように剣を振っていたアシュタルの元へステアが現れた。
「な…?」
「イイから!」
ステアは短剣を鞘から抜くと、片方をアシュタルに向けて投げた。
「!?」
思わず刀身で短剣を弾く。
短剣は空へと舞い上がったが、短剣に気を取られた次の瞬間、アシュタルの喉元にステアの短剣が当てられた。
「首、獲ッタ。」
「ス…テア…?」
空へと舞い上がった短剣が地面に突き刺さる。
「手加減シナイデ。」
何時もと違う、真面目な表情でアシュタルの目を見つめたまま言うステア。
アシュタルを見つめる黄金(きん)の目が、獲物を狙う猛禽類の目のように鋭く光った。
「手加減サレルのはステア、嫌イ。自然ハ、生キルか死ヌか…」
「何を…言って?」
ステアはアシュタルの喉下に当てていた刃を引くとぼそり…ぼそりと話し始めた。
「ステア、本当のオトーサンとオカーサンに捨てられた…話したヨネ…?」
「あぁ…」
「オカーサンが言った…ステアの本当のオトーサンとオカーサン、ステアの目の色が違ウ!髪の色が違ウ!!コレだけで…コノ、理由ダケでステアを捨テタって!!」
「え…?」
二人の間を一陣の風が吹きぬけた。
ステアは声を震わせながら、話を続けた。
「ステア、『物心』ッテのがつく前に、本当のオカーサン達がオカーサンの住む森二連レテ来た…って…ソシテ…」
記憶は遡る事、数年前…
ステアの両親がまだ殺される前の話…
『お前の両親はお前を育て切れなくなって、仕方が無いから私の元にお前を捨てた…と言ったね?ステア…』
「ウン。」
『…良くお聞き。でも、この話を聞いたからと言って、お前の本当の両親を怨んではいけないよ?いいかい?』
少しの間を空け、ステアに話す母龍。
『お前はね…全然似てなかったのだよ…本当の両親と。』
「…エ?」
『お前の母は、茶の髪に、青い、空のような瞳の持ち主だった。父は黄金色の髪に、赤の瞳…普通ならばね、子は両親、どちらかの情報を受け継いでいるんだ。ほら、アルプはお父さんに似ているだろう?だけど、目の色はお母さんと同じだ。分るかい?』
ステアは膝の上に頭をちょこんと乗せているアルプを見て、自分の母を見た。
確かに、母の目の色は木々の深い緑色をしており、鱗の色は、青みがかった銀。アルプは母と全く同じ眼の色をしていた。
次にステアは母の隣に居た、父親を見る。灰色の鱗に濃い蒼の瞳。アルプと同じ鱗の色だった。
『分ったかい?子は、母か父の一部…目の色にせよ、身体の色にせよ、角の数にせよ…どれかを必ず受け継いでいるんだ。だがね、お前だけは両親のどれもとってはいなかった。まるで、他所の子かと見間違うほどね…』
「ドウシテ、ステアは本当のオトーサンとオカーサント違ッタノ?」
『……どうしてかは分らないよ。ただ、お前の両親は自分達とは微塵も似ていないお前を見て、恐ろしかったんだろうね…』
一呼吸置いて、母龍は話を続けた。
『最初、お前の両親はお前を谷底に投げ捨てようとしていたんだよ。それを見た私が来て、言ってやったんだ。『その子を殺すくらいならば、私の元へ置いてゆけ!置いて行かねば、その場でお前達を食い殺してやる!!』とね。』
ステアの瞳が不安げに揺れる。
母龍はそんなステアに微笑むと、ステアを引き寄せ、ぺろり。と頬を舐めた。
『心配はしなくていい。私はお前を捨てたりなど、愚かな事はしたりしないよ。大丈夫だよ…私のかわいい娘…』

「ソレカらスグダッタ…ステアのオトーサンとオカーサンがアノ二人に殺サレタノハ!……ダカラ…ダカラ、力が欲シイ…仇を取レル、力が…」
俯くステアの頭をアシュタルは、自分の胸に引き寄せると、言った。
「力なら幾らでもつけられる。だけど、恨みの力は身を滅ぼすだけだ…だから、その為の手伝いはしてあげてもいい…でも、結果はステア次第になる。相手を生かすか、殺すか…それはステア次第だから…」
「決着ハ、自分の手でツケル。ダケド、何もセズニ死ぬノハヤダ。セメテ、出来ルダケの事を…自分の手で出来る事ヲシタイ。ダカラ、稽古、ツケテ…お願イ…アシュタル…」

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