雫の水音

雫の水音

9章~崩壊~



「お母さん~!!何処~?!」
小さな子供が泣いている

「こっちよ!ここから早く逃げないと!私を見失わないように付いてきて!!」
顔が焦げだらけの女性が、子供に声をかけている

ザンッ!!という音と共に子供の首が舞った・・・
女性は一瞬の出来事で子供だった物を呆然と見つめている

「ふぁ~!人殺しはたまらないな~」
醜い姿をし魔物が、舌なめずりをしている・・・
そして、女性へと少しずつ近づく

「あぁぁ・・・」
と恐怖と悲しみの余りに声が出ず
涙だけが出ている

「ねぇ。貴方・・・」
魔物は肩を叩かれて振り向いた。

そこには、ネタリアを透明な檻に閉じ込めてつれている
女性だった

「ブローズ様。どうかなされました・・・」
言葉を言い終える前に魔物は塵一つ残さず跡形もなく消え去った

ブローズと呼ばれた女性は、まだ泣き続けている女性に近づいた
「早く悲しみを忘れなさい・・・ここは危険です」
と頭を撫でると、女性は泣くのをやめて火と煙の立ちこめる
ドームの何処かに走り去っていった。

「貴方の能力って・・・」
とネタリアが問うた。

「私の能力は、無・・・
魂以外の全てを消すことが出来る・・・
魔物の肉体を消し去った。そして、あの人から子供の記憶を消し去った・・・
私の能力は、消し去るだけで何も生まれない・・・
まだ、任務の遂行中だから付いて来てもらうわよ・・・」
どこか悲しげな表情を浮かべ
ブローズは宮殿へと向かった・・・


<やはり攻めてきたか・・・しかし、人ごみの多い今日を狙って?>
スティアラは、早足で宮殿の奥に進みながら考えた・・・

<あの子が関係してるとは考えにくいし・・・>
宮殿の地下へと入っていった。


「一足遅かったわね・・・」
ブローズが緑色の水晶に手をかけた

「やはり、貴方達だったのね・・・
レーヤルネイトの襲撃といい
おかしいと思ってたのよ」
スティアラは言った

「そうね・・・ただ少し遅かった・・・
この水晶は頂いていくわ・・・
あの方のために・・・」
そういい、水晶と共に消えていった

<この宮殿はもう危険だわ・・・
けど、このままだと下の町に落ちてしまう・・・>

ブローズが奪った水晶は、3つ浮遊している町の中で一番強力かつ
他の2つには無い力が秘められている物だった

スティアラの体が突然光りだした・・・
そして、空が暗くなり
雷が鳴り始めた
物凄い風が、風の国の首都全体を包み込み
宮殿を、物凄い風が巻き上げ
静かに、草原へと着陸させた。
そして、その豪雨は、燃え広がりある
炎を消し去り。
魔物どもは、ブローズが指令を出したのか
退散していった・・・

また、空が元に戻ると同時に、スティアラは地下で倒れた・・・


翔は、湿気の残る瓦礫の山々を歩きわたっていた・・・

「兄々!!」

聞き覚えのある声がすると翔の心は思った

「翔!大丈夫か?」

しかし、うまくコントロール出来ない龍を破壊されて
精神も壊れかけている翔には声が届いていたかった・・・
そして、その場に崩れ落ちた

「兄々!!しっかりしゅるでしゅ!!」

ナナムーの声が、人の居なくなった観客席に反射して響く



翔は白い世界に立っていた
何処までも白く 先の見えない場所

其処に在るのは、自分と自分の影だけ
喋ろうとしても声が出ない
いや、声が響かない場所

暑くもなく 寒くもない場所

<死んだのだろうか?>
と思い

翔が歩いてみようとした時
影が伸びていき
その影が起き上がった

「こんな所でくたばっていいのかよ!
地球にも戻れてないんだぞ!!
とんだ意気地なしだな?
それでも男か?」
陰は口々に悪口を言ってきた
さすがに、翔は怒った

「俺の影の癖に、俺はちゃんと生きて元の世界に戻る!!」

ガバッと翔はベッドから起き上がった

「兄々が起きた!皆~!!」
ナナムーが叫んだ

『大丈夫か?翔!心配したんだぞ』
とヘンリーとハリーが言った

翔はあの日から4日間も眠っていた

「翔く~ん!!起きたのね~」
スティアラが翔に抱きついた

「お袋~。大丈夫なのか?死に掛けていたのに」

「な~に!平気よ!私を誰だと思ってるの?魔族よ!
そん所そこらの人間に比べないで!」
とスティアラは自らの腕の筋肉をポンと叩いた

「しかし、どーすんだ・・・ナナムーの親も見つかってないみたいだし
旅をするにも、その体じゃ。まだ無理か・・・」

「俺は明日にでも出発するよ。長く居られないしな
ナナムーの親とも早くあわせてやりたいし・・・」

「そうね~!翔君偉いわ!じゃぁ、水の国に行くといいわ。
変な事件」が多いって噂よ。
水の国には、港から船で行くのよ。
地図と紹介状も描いておくから」
と言って、スティアラは部屋を後にした

「そうだ・・・翔
俺達は一緒について行けないからな
まぁ、龍も使えるし翔とナナムーでも平気か・・・」
とハリーが言った。


10章~五英雄



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