不定期更新推進月間。

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ショート・ショート。



 正直萎える・・。
やっと親から離れて、念願の一人暮らし。
明日から我が家となるアパートの下見に来たと言うのに。

 この背筋にクル凍えた感覚。
春の陽光差し込む日当たりの良い角部屋。
もうすぐ昼にもなろうかと言う時間帯。

破格の家賃に飛びついたのが失敗だったらしい。
確実にここには【何か】が憑いている。



《ジリリリリリリリリ》

けたたましい目覚まし時計のベルを鳴ったと
同時に叩いて止めた。

時刻は08:30。

正直今朝は目覚ましなんぞ物の役にも立たなかった。
簡単な話、寝なかった、いや眠れなかった。
昨晩は見えない【何か】に安眠を妨害され一睡も
出来なかった。

「ココハオマエノイバショデハナイ」
「ノロワレルマエニデテイケ」
「シネバイイノニ」

等々の有りがたくも無い呪いの言葉を
朝日が出るまで延々と枕元で呟かれれば
誰だって眠れやしないだろう。

そんな所とっとと出て行けばいいのかも知れないが、
そうも行かない事情がある。
何せ九州から高校卒業と同時に親に
「俺はこれから一人で生きていく!」
と啖呵を切って東京まで出てきて四苦八苦しながら
やっと見つけた住まいなのだ。
「おばけこわいから帰ってきた」
等と言おうものなら、親が逝去して向こうに逝った後でも
ご先祖一同と共に笑いのネタにされかねない。
我が一族はちょっと度の外れたラテン系一族なので。
そんな事態はなんとしても避けたいので、取り合えず
お払いが出来る位の金を貯めるまでは根性で乗り切れる・・筈・・。

「ああ神様仏様、俺をお守りください・・」
「コンナトキダケカミダノミカ、ヘタレメ」
「せからしかぁ!幽霊なら幽霊らしゅうおとなしゅうしとけぇ!」

これから睡眠・・取れないだろうなあ・・。






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