Blue Dream

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「卒業」



「卒業」

私、姫野麗奈(ヒメノレイナ)とあいつ―船見秋彦(フナミアキヒコ)が付き合い始めたあの日から、何ヶ月かがすぎた。
時というのは、あっという間にすぎるもので、私たちは、卒業を明日に控えていた。
この3年間、たいしたことなどないと思っていた。
でも、3年になってからの1年は、違っていた。

私にとって、ただの幼馴染だった秋彦と、付き合い始めた。

それからは、まわりの景色が違って見えた。
日常が、変わった。

私はサッカー部のマネージャーだった。
でも、正直、負けようが勝とうが、どうでもよかった。

・・・秋彦と付き合うまでは。

なぜか、今年に限って、勝ってほしかった。
最後の大会では、決勝まで行き、惜しくも1点差で敗れた。
たった1点、されど1点・・・。

準優勝、ということで県大会には行けたが、2回戦で大差をつけられ、負けた。
そこで、秋彦の中学でのサッカーは終わった。
私の、マネージャーとしての仕事も。
なぜだか、とても悔しかった。
そのときはなぜ悔しいのかわからなかったが、今ならわかる気がする。

秋彦が、いるからだ。

それほどまでに、秋彦の存在は私の中でとても大きなものとなっていたらしい。
学校の近くの海で、抱きしめられた日から。

部活を引退してからは、行事が嵐のようにすぎていった。

体育祭、合唱コンクール、文化祭・・・。
そして、私たちの人生の中の分岐点の1つ、高校入試。

秋彦は、スポーツ特待生として、遠来(えんらい)高校というサッカーの名門私立高校への入学が決まっていた。
そう、推薦だ。
ちなみに、私の友達―秋山愛理(アキヤマアイリ)も、そこへのスポーツ推薦が決まっていた。
陸上の長距離では県トップレベルだから、当然のことのように思える。
まあ、つい最近知ったのだけど。

私は迷った。
特にこれといった夢もない。
なのに、2人は、自分の夢に向かって私よりも一足先に前へ進んだのだ。
私も、2人と同じ高校に行くべきか、否か・・・。
父と母は、市内でトップの成績を誇る私立高校・・青南(せいなん)高校への進学を私に望んでいた。
でも私はそこがいやだった。
勉強をやることが、大学へ行く意味が私にはなかったからだ。
だから、私は結局遠来高校を受験することにした。
そこは、歩いて通える距離だし、私が大学への進学を希望したときを考えたら、進学率もなかなかよかったからだ。
1番の理由は、秋彦がいるからだが。

両親には、不思議と反対はされなかった。
「麗奈が決めたことなら」
といって、了解してくれた。
このとき、私は両親に感謝した。
担任には、
「青南でもいいんじゃない?」
といわれたが、
「遠来でやりたいことがある」
と、私は答えた。
これは、嘘ではない。
色々と考えているうちにみつけたことだ。
それは、
「サッカー部のマネージャーをすること」

名門といえば、それなりに手が必要だろう。
それに、貴重な体験ができるかもしれない。
やはり、1番の理由は、秋彦がいるからだ。

迎えた入試当日は、変わったことは何もなく、問題も簡単にとけた。
遠来高校には面接はなかったため、内申点とテストの点数で、合否が決まる。

結果は、合格だった。
それも、学習特待生という形で。
成績上位者のみが、この資格を得るのだが、まさか、私がそうなるとは思っていなかった。
問題は簡単だと思ったが。

私の合格が決まったとき、秋彦と愛理は、ものすごく喜んだ。
「ふふ、また一緒だね?麗奈ちゃん!」
と、愛理。
そして、秋彦は、
「これで、またいつでも一緒にいられるな」
と、小さくつぶやいた。
そのときの顔は赤かったような気がする。

それから、今日。
卒業はもう明日だ。
時はあっという間にすぎる、なんて思ってから、この1年のことを思い出していたら、10分くらいたっていた。
せいぜい1分くらいのことだと思っていたから、本当に時はあっという間だ。
私は、ずっと教室にいる。
特に意味はないけれど、なんとなくそうしていた。
「麗奈?」
ふと、私を呼ぶ声がした。
もう、このクラスの皆は帰ったと思っていたが、違ったらしい。
振り向くと、

秋彦がいた。

「秋彦・・・?」
「なんだ、まだいたのか。明日は卒業式だってーのに、早く帰らなくていいのか?」
いつもと変わらない調子だった。
「別に・・。この学校自体には、思い出なんてないし。卒業なんて・・。」
「どうでもいい、か?」
「あ、・・ああ。」
驚いた。
秋彦が、私の言おうとしたことを言うとは思わなかった。
でも、ずっと近くにいたわけだから、大体のことはお見通しなのだろう。
私は、とりあえず話を続けた。
「この学校に思い出はない。あるのは、秋彦と、愛理にだけ。」
そう私が言うと、一瞬、秋彦は、嬉しいような、悲しいような顔をした。
「そうか・・。なんだか嬉しいけど・・俺は、学校に思い出、たくさんあるぜ」
「・・たとえば?」
「そうだなー、サッカー部の連中に出会えたことだろ?それから、あの河童にきゅうりおくったこと・・あれはうけたな、かなり。」
「・・ふうん。」
「それから・・」

「お前と、たくさん過ごせたこと、だな。」

私と、学校で過ごしたことが・・?
そんなの、当たり前で、たいしたことなんかじゃないと、そう思った。
「だって、さ。俺たち、必ず出会えたわけじゃ、ないんだぜ?」
「・・言われてみれば・・そう、だな。」
「だから、学校に思い出がない、なんてことはないはずだろ?」
「・・そうだな。私の学校の思い出は、秋彦とすごせたことだからな。」
そう、私がいうと、秋彦が笑った。
「いってくれるじゃねぇか」

その後、私と秋彦は、教室を出て、2人であの海へ向かった。
学校の近くの、私たちが付き合い始めた場所えある、あの海へ。

卒業を明日へと控えた私たちの、門出を祝うために。
そして、私たちの、

新たな道への祝福を、2人でするために。

―卒業、それは、1つの区切り。
別れであり、そして、出会いである。
今、ここで、まわりより一足早く、
卒業しよう―。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あとがき。・・という名の言い訳。
鈴藤歩音です。こんにちは。
今回2度目の小説となりました(笑)
前回の、「日常」の続編です。
今(3月)ちょうど卒業シーズンなので、卒業、というテーマで書いてみました。
またまた見事に玉砕ですねー!!
ははははは(笑)
ちなみに、これは稀羅様から借りた20円のお返しなんですよ。
「20円返す」
って言ったら、
「返さなくていいから小説書いて☆」
と(笑)
こんな意味不明な文章でよかったら・・どうぞ(笑)
稀羅様に捧げますw

と、いうことで、鈴藤歩音でした♪

3月10日 2006




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