EBIちゃんのここだけの話

EBIちゃんのここだけの話

第四章


四章

名目上無菌室の部屋は、思っていたよりきたなかった。
風邪や何かに感染すると闘う力が体にないので危ないからうがいを沢山するように
いわれる。
30分に一回、必ずうがいをした。
ちょくちょく看護婦さんが便を取りにきたり(全て検査されていた)、血を採りにきたり
熱を測りにきたり、氷をもってきてくれた。
一人になる時間はあまりなかったんだけど一人になった僅かな時間には
不安で胸がいっぱいになって涙が出た。
菌を運んでくるから身内の方にもあまり面会にきてほしくない・・・と
無情な先生の言葉。ちゃんとした無菌室なら平気なのに・・・
夕方になって駿を抱いた旦那が面会に来た。
気のせいか顔が強張っている。
この病気が治ったら旅行に行こうよ・・・
と、旦那に急に言われて当然不自然に思った私。
何か先生に言われたの?と聞くと
「うん」とうなずいた旦那の顔から涙がボタボタッと床に落ちた。
私はもう怖くなって涙が出そう・・・堪えながら、ちゃんと教えてほしいと旦那に頼んだ。
私に言うつもりはなかったそうなんだけど、涙が出てしまった時点で
何も無いとは通らななかった。
「先生に話があると家に電話を頂いて、さっき先生の所へ行ったよ。
『覚悟をしてほしい』って・・・・」それ以上、旦那は言葉にならなかった。
駿を抱っこできなくなるかも・・・感染に耐える力もなかったので
抱っこしたい気持ちを必死に抑えた。
無茶をした時点で本当に帰れなくなるかもしれない。

大丈夫だよ、死なないよ。と言っても旦那は笑顔も言葉も
出なくなってしまっている。
駿は無邪気にこちらへ来ようと手を伸ばしてくる。
抱っこしたい・・・


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