ル三パン世のつぶやき

ル三パン世のつぶやき

逮捕!


~ロンドンヒースロー空港

「午後九時十三分、あなたを逮捕します」

「あなたには弁護士を雇う権利があります。
あなたには黙秘権があります。しかし発言しなかったことが法廷で不利の証拠となる場合もあります。
あなたには・・・」

男は腕時計を確認しながら、義務的に至って機械的な英語で「私に与えられる権利」を並べた。

「権利」を与えられている私の両の腕は冷たい手錠でつながれていた。


6年前の今日、ロンドンヒースロー空港で私は逮捕された。
私はイギリス遊学(留学ではない)を終え、日本に帰るべく今まさに搭乗するところであった。
6周年(?)を記念してその全貌を記すことにする。


私の罪名は、
バタフライナイフ所持による「銃刀法違反」

警護員に別室に連行される。
まだ私は事の重大さに気付かないでいた。


午後9:50
~空港警護室

私の乗る筈の予定だった飛行機のフライト時間を過ぎた瞬間に事の重大さに気付いた。
その後、警察官が駆けつけ冒頭の逮捕劇に至ったのだ。


パトカーに乗せられ、空港近くのMETROPOLITAN POLICE SERVICEへ連行される。

まだこの時の私は、これからおとずれる危機的状況を知る由もなかった。


午後10:40
~メトロポリタンオフィス到着

取調室で、調書を取られる。
「サイフはどこだ?」
ポケットに手を伸ばすと、
「触るな!指させ」

上着の内ポケットを指さすとポリスが取り出し、中をチェックする。
証拠隠滅の恐れがあるため、私が許可なしに触れるものはもうないのだ。

サイフの中から、カード型のシルバーアクセサリーが出てきた。
私の顔色が変わるのをポリスは見逃さなかった。

「なんだ、これは?」

私はアルコールは飲まない代わりに、イギリス滞在中はずっとマリファナを愛用していた。
タバコのように巻いて吸うと喉に悪いのだが、このシルバーパイプを使うと煙が冷やされ、喉にやさしいのだ。

見た目もクールなので普段はアクセサリーとして首から下げていた。

「なんだ、これは?」
「・・・アクセサリーです」

ポリスはじっと私を見つめたあと、調書の所持欄に「アクセサリー」と書き込んだ。

(よかった・・・こいつは知らない)

そこへ、別のポリスが通りかかった。
「おっ、カード型のパイプじゃねえか」

再び私の顔から血の気がサッと引いた。

午後11:59
・・・・to be continued.


★第ニ章『事情聴取』★



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