レプトスピラ症




~人間にも感染する重大な病気~


レプトスピラ症はレプトスピラとよばれる細菌の感染によって、出血性の黄疸(おうだん)や尿毒症をおこす感染症です。一般には急性から慢性まで幅広い症状を示しますが、死亡率もかなり高い病気です。犬のほか、多くの哺乳類動物が感染するので、人畜共通感染症(ズーノーシス)としても重症です。

症状
レプトスピラ症はその症状から不顕性型(ふけんせい)、出血型、黄疸型に区別されています。大部分の感染犬は明らかな症状をあらわさないままに時間が経過し、自然に治ってしまう不顕性型です。ところが、この不顕性型の感染犬は長期間にわたって尿中にレプトスピラ菌を排出して、ほかの犬や人間への感染源となります。出血型と黄疸型は、感染するレプトスピラ菌の種類と関係があり、出血型は犬レプトスピラ菌が原因となり、一方、黄疸型は、黄疸出血レプトスピラ菌が原因となります。しかし、症状だけからこれらを区別することは困難です。犬レプトスピラ菌に感染すると、主な症状として腎炎になり、また出血性の胃腸炎および潰瘍性(かいよう)の口内炎をおこします。はじめの症状は40度前後の高熱で、元気や食欲がなくなり、口の粘膜や目の結膜が充血してきます。消化器がおかされて嘔吐や血便をし、同時に泌尿器がおかされて、尿をしなくなるか、または臭いの強い尿をします。末期には口の粘膜がただれ、尿毒症の症状となります。そして、ついには脱水をおこして死亡するか、あるいは回復しても慢性の腎炎に移行します。また、肝臓がおかされると、約15%が口の粘膜や目の結膜、ときにはお腹の皮膚まで黄色くなって、いわゆる黄疸が認められるようになります。一方、黄疸出血レプトスピラ菌に感染した場合は、犬レプトスピラ菌に感染した場合よりも症状がはげしいです。突然高熱が出て、食欲がまったくなくなります。衰弱して全身が振るえ、嘔吐がみられます。口の粘膜や歯ぐき、それに結膜が充血あるいは出血し、尿毒症の状態になります。発病後、数時間から2~3日で死亡する犬、1週間生存して回復する犬などさまざまです。この細菌に感染した犬の約70%に黄疸があらわれます。

原因
レプトスピラ症をひきおこすレプトスピラ菌には多くの種類がありますが、主要な細菌は犬レプトスピラ菌と黄疸出血レプトスピラ菌の2種類です。これらの病原菌は保菌動物の尿中に排出されます。この菌は犬と人間以外の動物ではネズミ、牛、豚などに感染しますが、特にネズミが感染源として重要です。困ったことにネズミは感染してもほとんど症状をあらわさず、一生、尿の中に菌を出し続けるので、最大の感染源になります。もちろん、感染犬も長期間、尿の中にレプトスピラ菌を排出します。犬への感染は、排出されたレプトスピラ菌を含む尿や、そのような尿で汚れたたまり水などや土にふれたり、なめたりすることによって口の粘膜や皮膚の傷から感染します。そのほか犬どうしても、互いに相手の性器や尿をかいだりなめたりして感染することがあります。とくにオスの犬でこの習性が強いので、オスはメスより感染の確率が高くなります。

診断
レプトスピラ症は病気の発生した原因、感染の経路や分布、病気の症状、ワクチン接種の有無などにより、ほぼ正確に診断できます。検査方法は、尿を顕微鏡で見て、「へ」の字状の、細長い特徴的な菌体を見つけることです。検査室では急性期と回復期の血清をそれぞれ取り出し、その中の抗体価を比べたり、血液を培養してレプトスピラ菌を分離、同定します。

治療方法
レプトスピラ症に対する治療は、まず原因となる最近を撲滅することです。それには抗生物質が有効であり、ペニシリンおよびストレプトマイシンの併用によって、腎臓内のレプトスピラ菌を除去できます。もし脱水症状があれば、これとあわせてラクトリンゲルなどを用いて輸液をおこないます。

予防方法
レプトスピラ症はワクチン接種によって予防できるので、定期的にワクチン接種を受けることが第一です。レプトスピラは尿の中に排出されます。病原菌は消毒液に弱いので、もし犬が感染した場合には、飼育場所をつねに消毒し、清潔に保たなければなりません。まちがっても感染犬の尿などを他の犬になめさせたり、触らせたりしてはいけません。散歩の時には犬が路上のたまり水や他の犬がした尿をなめないように注意しなくてはなりません。たまり水や尿はレプトスピラ菌に汚されている可能性もあるからです。また、レプトスピラ症だけでなく、いろいろな伝染病の感染源となるネズミを駆除することも大切です。

最後に
お散歩の時にはたまり水や他の犬がしたおしっこをなめさせないように注意してください。



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