NO-NAMEの隠れ家

NO-NAMEの隠れ家

サザンオールスターズ (3)

作品レビュー…の続き

コンピレーションアルバム (限定盤)
『すいか SOUTHERN ALL STARS SPECIAL 61SONGS』
(1989.7.21)

Vol.1 1978~1980

1.勝手にシンドバッド
2.別れ話は最後に
3.当って砕けろ
4.恋はお熱く
5.瞳の中にレインボウ
6.女呼んでブギ
7.お願いD.J.
8.思い過ごしも恋のうち
9.Let It Boogie
10.いとしのエリー
11.タバコ・ロードにセクシーばあちゃん
12.私はピアノ
13.涙のアベニュー
14.TO YOU
15.恋するマンスリー・デイ

Vol.2 1980~1982

1.C調言葉に御用心
2.I AM A PANTY (Yes, I am)
3.青い空の心 (No me? More no!)
4.いなせなロコモーション
5.ジャズマン (JAZZ MAN)
6.ひょうたんからこま
7.わすれじのレイド・バック
8.シャ・ラ・ラ
9.ごめんねチャーリー
10.MY FOREPLAY MUSIC
11.朝方ムーンライト
12.Big Star Blues (ビッグ・スターの悲劇)
13.栞のテーマ
14.チャコの海岸物語
15.翔(SHOW)~鼓動のプレゼント

Vol.3 1983~1984

1.夏をあきらめて
2.流れる雲を追いかけて
3.匂艶 THE NIGHT CLUB
4.逢いたさ見たさ病めるMy Mind
5.女流詩人の哀歌
6.Ya Ya (あの時代を忘れない)
7.シャッポ
8.ボディ・スペシャルII (BODY SPECIAL)
9.マチルダBABY
10.かしの樹の下で
11.そんなヒロシに騙されて
12.NEVER FALL IN LOVE AGAIN
13.EMANON
14.東京シャッフル
15.Still I Love You

Vol.1 1984~1988

1.JAPANEGGAE (ジャパネゲエ)
2.ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)
3.あっという間の夢のTONIGHT
4.シャボン
5.海
6.愛する女性とのすれ違い
7.死体置き場でロマンスを
8.Happy Birthday
9.メロディ (Melody)
10.吉田拓郎の唄
11.鎌倉物語
12.Bye Bye My Love (U are the one)
13.星空のビリー・ホリデイ
14.怪物君の空
15.おいしいね ~傑作物語
16.みんなのうた

現在では入手困難な限定生産ベストアルバム。缶ケースの中にCD4枚組とすいか柄のトランクス・パンティーをプラスした、ユニークな逸品です。名作・傑作と呼ばれるような楽曲を厳選して詰め込んだのではなく、CD4枚に61曲もの楽曲を時系列に振り分け、サザンの歴史を振り返りながら聴けるというアンソロジー的な作品になっています。
レコードでしか所持していなかった初期の楽曲をCD音源として入手したいというファンが多かったことも手伝ってでしょうか、予約の段階で当初予定されていた30万セットに達するという、1万円もする商品としては異例のヒットになりました。
(記:2008.8.5)










9thアルバム
『Southern All Stars』
(1990.1.13)



『みんなのうた』で復活を果たしたサザン。7月26日からスタートしたライブ・ツアー「サザンオールスターズプレゼンツ 1988大復活祭」も大盛況で幕を閉じました。
年は明けて1989年。4月に25thシングル『女神達への情歌 (報道されないY型の彼方へ)』をリリース。更に6月にリリースした26thシングル『さよならベイビー』は、デビュー11年目にして意外にも初となるオリコン・シングルチャート1位を獲得しました。7月21日は限定生産の4枚組ベストアルバム『すいか SOUTHERN ALL STARS SPECIAL 61 SONGS』をリリース。11月には27thシングル『フリフリ’65』をリリースし、年末にはカウンドダウンライブ「いっちゃえ’89 サザンde’90」を敢行しました。
そして1990年1月13日、『kamakura』以来となるオリジナルアルバムである今作『Southern All Stars』がリリースされました。

前年のシングル3作を含む今作。ここにきてセルフタイトルです。活動再開後の心機一転の決意を感じさせますね。アルバム内容も充実しています。『kamakura』で見せたコンピューター・サウンドもすっかり消化し、サザン本体の音楽的体力の増幅と小林武史のバックアップとによって、サザン本来の雑食性がパワーアップして帰ってきた一枚と言えそうです。
『YOU』・『OH,GIRL (悲しい胸のスクリーン)』と言ったポップなアレンジを完成させた楽曲は新鮮な心地良さと普遍性とを兼ね備えているし、ブルース・ロックの『悪魔の恋』や、ジャズとファンクの要素を内包した『MARIKO』といった楽曲も、従来のサザン・サウンドの復活・進化形と言えます。更にはスパニッシュ、沖縄民謡風、多重録音アカペラ、ジャングルビートなどなど、次から次へと出てくる新境地の楽曲。復活したサザンの、変わらない、いや、更に迫力を増したと言っていい前向きさが表れています。また、『kamakura』のように、打ち込みに拘るあまり楽曲本来の良さを殺してしまうようなこともなく、アレンジメントも無理なく施されていますね。セルフタイトルを付けるのに恥じない、貫禄の極上ポップス・アルバムです。
さて、このアルバムの評価でよく言われるのは「バンド感」が足りないということ。僕はその点はそれほど気にならないんですけどね。アルバム全体を貫く骨のようなものが、確かに足りないかなぁという印象はあります。1曲1曲のアレンジメントを突き詰めた結果、アルバム一枚通しての芯の部分を見失ってしまったというか。この点は以前のアルバム『綺麗』なんかでも似たようなことを感じたのですが。でも、個人的には、今作は「サザンの幅広いサウンド、変わらない前向きさ」というのが大きな魅力になっていると思うので、マイナス面よりもプラス面を大いに評価したいですね。
「バンド感」の話とは別の観点で、個人的に唯一「ちょっとなぁ」って思うのは、バラード3曲(『OH,GIRL』・『さよならベイビー』・『逢いたくなった時に君はここにいない』)のアレンジメントがやや似通っていることでしょうか。
2月28日からは、このアルバムをひっさげ、5年ぶりのアリーナ・ツアー『夢で逢いまSHOW』をスタートさせました。あ、アルバムジャケットは、カブトムシの交尾の様子です(笑)。ファンの間では、通称「カブトムシアルバム」。

1.フリフリ’65 ★★★☆

27thシングル。1989年11月21日リリース。タイトル通り、’60年代ロックを意識したナンバー。意図的にチープなアレンジに仕上げています。今作中では、最もライブ向きの楽曲でしょう。

2.愛は花のように (Ole!) ★★★☆

とても日本人が作ったとは思えないスペイン風ナンバー。桑田さんの天才ぶりが存分に発揮された1曲と言えるでしょう。全歌詞スペイン語で、作詞はさすがに桑田さんのものではないですが、歌いこなしも見事です。こうしたワールド・ミュージックの要素は、『稲村ジェーン』で全面的に発揮されています。

3.悪魔の恋 ★★★☆

ブルースロック。「願望」・「乱暴」といった単語がリズム良くハマってますね。全編英語詞に聴こえてしまうような、語感重視のフレーズが乗っています。
サウンドのほうは、濃さよりも手馴れた感じのほうが印象としては強く、『奥歯を食いしばれ』など初期のブルースで感じられたような荒っぽさもないです。また、’90年代中盤以降のサザンを聴き慣れているリスナーには、音が薄いと感じるのはしょうがないかなぁとも。個人的には結構好きな曲なんですけどね。

4.忘れられたBig Wave ★★★

山下達郎氏の指導を受けて、桑田さんが一人アカペラに挑戦したという意欲作。全て桑田さんの多重録音された声のみによって成り立っています。約10年後のアカペラブームを先取りしたような1曲。桑田さん自身も気に入っているのか、『海のYeah!!』や『バラッド3』といったコンピレーション盤にも収録されています。タイトルの「Big Wave」とは、山下達郎氏が音楽を監修した映画『BIG WAVE』のこと。

5.YOU ★★★★☆

サザンの新たなステージへの移行を感じさせる、非常に洗練されたポップス。煌びやかにちりばめられたシンセは美しいし、ヴォーカルのエフェクトも効果的です。疾走感が切なさを際立たせている名曲。シングルでないにもかかわらず『海のYeah!!』へ収録されましたが、それも納得の1曲です。

6.ナチカサヌ恋歌 ★★★☆

原坊ヴォーカルによる、沖縄民謡風ナンバー。新境地ながら、しっかりとした完成度を誇っていますねぇ。歌詞のほうも、沖縄の地名や方言を盛り込んでいます。

7.OH,GIRL (悲しい胸のスクリーン) ★★★★

桑田さんにより丁寧に作られたのであろう詞曲を、小林武史の力を借りたアレンジメントで、とても聴きやすく仕上げたバラードです。じめじめした中にもポップさを丁度良いバランスで取り入れていますね。転調も効果的です。

8.女神達への情歌 (報道されないY型の彼方へ) ★★★★

25thシングル。1989年4月12日リリース。『みんなのうた』で復活して次のシングルは、およそ一般受けしそうにないジャズ+ゴスペル・ナンバー。完成度は高いです。桑田さんは、この曲を「自分の曲でベスト3に入るほど好き」と公言。とても洒落ていて贅沢なサウンドを堪能できますが、一発でライト・ファンの耳を奪うような楽曲ではないですからね。売れなかったのも仕方ないです。でも、活動休止を挟んでも、こういった楽曲をシングルで切る挑戦的な姿勢は失われていないということを感じられるのは嬉しいかぎり。歌詞は、アダルトものの映像について歌っており、PVにも実際の女優を起用しています。

9.政治家 ★★☆

社会風刺ソングのプロト・タイプと言えるのではないでしょうか。今聴いてみると、毒の盛り方がやや遠慮がちで、その後の楽曲…例えば『汚れた台所』なんかと比べてしまうと、あまりに弱いですね。タイトルのストレートぶりも、なんだかなぁ。しかし、こうした直接的な風刺はこれまで出てきていなかったもので、サザンの歌詞の歴史における一つのターニング・ポイントとなっている曲だと思います。アレンジのほうは洗練された打ち込みポップで、桑田さんのファルセットを用いたヴォーカルによって洋楽っぽく耳に届いてくるというサウンドですが、反面、生バンドの魅力は薄いです。

10.MARIKO ★★★☆

この曲がなかなかすごい。スウィング・ジャズの要素にファンクっぽさもブレンドされていて、既存のジャンルに収まらないスタイルになっています。このエレピのお洒落なアレンジ! なお、MARIKOが誰なのかは知りません(笑)。

11.さよならベイビー ★★★

26thシングル。1989年6月7日リリース。失恋後のやるせない夏を、美しく描きあげたバラード・ナンバー。唄うテーマと、サウンドの融合という点では、非常に高いレベルにある曲だと思います。徐々に徐々に感情を盛り上げていく桑田さんのヴォーカルも毎度のことながらお見事。2番のサビ後に、いきなりカラッと一瞬明るくなるところは、実に「らしい」感じで好きです。『BAN BAN BAN』を彷彿とさせますよね。
有名な話ですが、これまでアルバムでは何回も1位を獲ってきたサザンなわけですが、シングルのほうは意外にもこれまでオリコン1位は獲得したことがなく(『いとしのエリー』も『チャコの海岸物語』も最高位2位止まり)、この曲が12年目にして初の首位獲得シングルとなりました。

12.GORILLA ★★★☆

大森さん、あんたは凄い!!…と言いたくなるような驚きの1曲。ジャングル・ビートでアフリカンな雰囲気を漂わせており、歌詞は彼の出身地の宮崎弁を密かに盛り込むという面白い試みも。こういう曲を聴きたいんですよ、サザンのアルバムでは。見事です。

13.逢いたくなった時に君はここにいない ★★★★

これはもう王道といった感じのバラード。丁寧に一言一言を歌いながら、終盤に向かって泣きが入ってくるヴォーカル。歌詞にも思いを馳せてじっくり聴き入りたい1曲ですね。女性人気がとても高いナンバーで、非シングルの名曲と言っていいでしょう。

総合 ★★★★☆

(記:2008.8.13)










< サザンオールスターズ&オールスターズ >
企画アルバム
『稲村ジェーン』
(1990.9.1)



桑田佳祐の初監督作品である映画『稲村ジェーン』のサウンド・トラックとしてリリースされた作品。「サザンオールスターズ&オールスターズ」名義で発表されました。サザンのメンバーがレコーディングに関わっていない楽曲も多く(もちろん、そうでない楽曲もあります。また、3曲目・10曲目などのように既に以前のサザンのアルバムに収録されていながら、今作に再収録された楽曲もあります)、厳密にはサザンのアルバムではないのですが、聴き逃すにはもったいないです。ワールド・ミュージックの要素が全編に渡って取り入れられており、しかも聴き心地はどれもポップ。楽曲と楽曲の間にはカップルの会話(男性役は寺脇康文)が挿入されており、ただのサウンドトラックではなく、一枚通して聴いていて楽しめる工夫が施されています。
この作品を聴くと、桑田さんの音楽家としての幅の広さを実感します。あ、ちなみに僕は『稲村ジェーン』の映画そのもののほうは見たことがないです…。だって、映像作品が出ていないんだもん(笑)。封印ですか。あぁ、そうですか(笑)。

1.稲村ジェーン ★★★☆

情熱的なラテン・サウンドの楽曲。雰囲気はバッチリです。作詞はLuis Sartor。今作で彼は他にも『マリエル』・『愛は花のように (Ole!)』の作詞を手掛けています。

2.希望の轍 ★★★★

映画ではダイハツ・ミゼットが走るシーンで使用されました。爽快なアレンジメントが素晴らしい楽曲で、「旅」を思わせる歌詞も切なげで良く、現在まで様々なところでBGMとして使用されていますね。サザンの楽曲の人気投票をすれば、ほぼ間違いなく上位に食い込むであろう大人気曲。ライブでは、やや速めのテンポでほぼ毎回演奏されています。この曲のイントロが流れた瞬間に大歓声。初聴時の爽快感は抜群な反面、CD音源では次第に飽きが来る楽曲かと思いますが、ライブで聴くこの曲はまた別の良さがあります。
なお、この曲のCD音源の演奏にはサザンのメンバーは(桑田さんを除いて)関わっておらず、厳密にはサザン名義の楽曲ではありません。あの印象的なイントロも、原坊によるものではありません。しかし、現在では『海のYeah!!』等のサザンのコンピレーション・アルバムにも収録され、ライブでももちろんサザンのメンバーによる演奏で披露されているので、いまや「サザンの楽曲」とみなして問題ないようです。

3.忘れられたBig Wave ★★★

アルバム『Southern All Stars』収録曲。
映画では、挿入歌として使用されました。元々この映画のために作った曲なんでしょうね。

4.美しい砂のテーマ ★★★

音数を控えめに作られたインスト・ナンバー。真夏の砂浜に本当に良く合いそうですね。タイトルの「美しい砂」は、映画に出演した女優・清水美砂の名前から。

5.LOVE POTION NO.9 ★★★

元々はThe Cloversの楽曲で、ここ日本ではThe Searchersによるものが有名。カバーです。アコースティックな演奏と、一発録りに近い生々しさのある桑田さんのヴォーカルが良い味を出しています。

6.真夏の果実 ★★★★

28thシングル。1990年7月25日リリース。映画『稲村ジェーン』主題歌。今サウンドトラックの発売約1ヶ月前にサザンのシングルとしてリリースされており、今作発売後もロングヒットを続けました。オリコン最高位は4位ながら、1990年の年間第9位にランクイン。
サザンを代表するバラード・ナンバー。ウクレレやオルガンによる薄めの編曲が、切なげな雰囲気を醸し出しています。全編に渡ってアレンジメントが冴え渡っていますね。また、桑田さんの泣きの熱唱が、またこの曲を名曲たらしめる要因でしょう。人気は根強く、この曲が好きだという人はかなり多いですね。様々なアーティストによって歌われています。直近ではEXILEがこの曲をカバー。

7.マンボ ★★★☆

再びラテン・ナンバー。この曲はサザンのメンバーが中心となって演奏しています。燃えるようなサウンドが興奮を呼び起こします。

8.東京サリーちゃん ★★★★

シカゴ・ブルース。地を這うような演奏、狂気じみたヴォーカル。ヤラれました。映画で使用されていないこんな曲をサントラにこっそり忍ばせるなんて。歌詞はおよそ意味のない言葉の無秩序な羅列。韻を踏みまくってこれをカッコ良く歌いこなしてしまっています。1000年先まで持っていきたい楽曲です。

9.マリエル ★★★☆

情熱的な色合いを残しながらも、キャッチーで可愛らしいメロディーとアレンジが用いられているラテン・ナンバー。聴けばすぐに口ずさめますね。

10.愛は花のように (Ole!) ★★★☆

アルバム『Southern All Stars』収録曲。
前曲『マリエル』の後にも、例のカップルの会話が挿入されているのですが、そのやりとりがこの楽曲へのInterludeとなっていると言えますね(笑)。楽曲そのものも、この作品によく馴染んでいます。

11.愛して愛して愛しちゃったのよ ★★★

和田弘とマヒナスターズの名曲を原坊ヴォーカルでカバー。後に「原由子&稲村オーケストラ」名義でシングル・カットされています。マッタリと幕を閉じます。
この楽曲の終了後に入っている女性の一言がまた良いんです。ジーンときますね。

総合 ★★★★

(記:2008.8.16)










29thシングル
『ネオ・ブラボー!!』
(1991.7.10)



1991年最初のCDリリースは、『真夏の果実』以来約1年ぶりの29thシングル。『さよならベイビー』以来、2度目のオリコン・シングルチャート1位を獲得。
表題曲『ネオ・ブラボー』は、現在までシングル・オンリーの楽曲。ライブでもあまり演奏されることはなく(2000年~2001年の年越しライブ『ゴンタ君のつどい』が最後)、不遇な印象の1曲です。
c/w『冷たい夏』も、長らくこのシングルでしか聴けない隠れた佳作扱いでしたが、『バラッド3 ~the album of LOVE~』に選曲され、B面のほうが表題曲よりも先にアルバムに収録されることとなりました(同じようなことが、『イエローマン ~星の王子様~』でもいえます)。
なお、今作からベースの関口和之が体調の問題で活動休止に入ります。

1.ネオ・ブラボー ★★★☆

イントロのスライド・ギターの音色が印象的なポップ・チューン。覚えやすくノリの良い曲にも関わらず、前述の通りライブで演奏されることは稀。明るい曲調に反して歌詞がかなり難解かつ暗めで、そうした歌詞を桑田さん自身があまり気に入っていないことがこの曲がスポットを浴びることのない原因でしょうか。

2.冷たい夏 ★★★

アコースティックで情緒溢れるバラッド。真っ盛りの夏の派手な印象の裏側でそこはかとなく漂う寂しさというものが上手に醸し出されているのではないでしょうか。海で泳いだ後に疲れた体を投げ出しながら聴き入りたい曲ですね。桑田さんのかすれ声が染みますね。発表以来、ライブでは披露されずにいましたが、2000年の『茅ヶ崎ライブ』で遂に初披露されました。古くからのファンは涙モノだったでしょうねぇ。

(記:2008.8.15)










9thアルバム
『世に万葉の花が咲くなり』
(1992.9.26)



1992年7月には、前作『ネオ・ブラボー!!』から約1年ぶりのニュー・シングルとして、『シュラバ☆ラ☆バンバ SHULABA-LA-BAMBA』・『涙のキッス』をリリース。サザン初の複数シングル同日リリースとなったこの2作は、オリコン・チャートでも1・2フィニッシュを達成。サザンの当時の自己最多セールス1位・2位となりました。特に『涙のキッス』は、タイアップ効果もあって、オリコン7週連続1位、サザン初のミリオン・ヒットとなる155万枚を売り上げました(『シュラバ☆ラ☆バンバ』は97万枚)。
そして、それから約2ヵ月後に出たアルバムが今作。オリジナル・アルバムとしては、『Southern All Stars』以来、約2年8ヶ月ぶりとなる今作は、全16曲収録、収録時間約72分という過去最多のボリューム(2枚組作品の『kamakura』は除く)。こちらも、当時のアルバム自己最多セールスを記録しました。
今作も小林武史とのタッグで制作。サウンドの方は、実験的な側面と、1990年代J-POP的な側面(当時の流行のサウンド)とが融合したイメージ。もちろん音楽性の幅広さや流れの起伏も感じさせますが、それとともに今回は統一感が感じられるアルバム。方向性がある程度定まっており、音に迷いがありません。とっつきやすい一枚ですが、個人的には、やや飽きが来るアルバムではあります。

1.BOON BOON BOON ~ OUR LOVE 〔MEDLEY〕 ★★★

2つの楽曲がメドレーとなったトラック。まずは、怪しげなロック・ナンバー『BOON BOON BOON』からスタート。ドロドロした雰囲気と攻撃性が、エロティックな歌詞と良く絡んでいますね。この曲、サザンのロック・バンドとしての演奏欲を発散させるかのように楽器隊が激しく動き回っているので、コンポや携帯音楽プレイヤーでいじれる場合は、是非ともオケの音を大きめにしたサウンド(音楽ジャンルを選べる場合は「ROCK」)で楽しんでみてください。逆に言えば、最初からそうしたミックスで収録してほしかったところ。原盤のままだと、桑田さんのヴォーカルに重点を置くあまり、演奏の素晴らしさが潰されているようで非常に勿体無く思います。そのままメドレーで繋がっていく『OUR LOVE』は、桑田さんがファルセットで歌う小品。
星評価のほう、非常に迷いましたが、上述したような理由でとりあえず3点。ミックスを変えれば5点満点。

2.GUITAR MAN’S RAG (君に奏でるギター) ★★★

地味でブルージーな楽曲。今回のアルバムのオープニングは渋い流れですね。この曲も1曲目と同様に、オケ重視で聴きたいところ。

3.せつない胸に風が吹いてた ★★★★

テンポ感のあるバラッド。メロディーの流れの心地良さは絶品で、シングル・カットしても良いくらいですね。転調で「おっ」と思わせます。ライブでは桑田さんがほぼ毎回歌詞を間違えることでお馴染み(笑)。

4.シュラバ☆ラ☆バンバ SHULABA-LA-BAMBA ★★★★

30thシングル。『涙のキッス』と同時発売で1992年7月18日リリース。
いきなりのむき出しベースラインが怪しげな雰囲気を醸し出しています。曲構成、演奏ともに凝っているファンク・ナンバー。桑田さんのヴォーカルも、低音で怪しげに唄ったかと思えば、ファルセットあり、シャウトありと変幻自在。そして注目すべきは「修羅場穴場女子浮遊」と、当て字日本語で、あたかも英語であるかのようにに聴かせてしまう歌詞。とても良く練られていてカッコ良く、大好きな曲です。

5.慕情 ★★★★

普段のアルバムならラストに持ってきそうな静かなバラード。桑田さんがしっとり丁寧に歌い上げます。これまた有名な話ですが、桑田さん曰く「サビのメロディーが頭に浮かんだときは、神が降りてきたかと思った」。
このアルバムを引っさげて行ったライブ・ツアー『歌う日本シリーズ』では、この曲がラストとなり、CD音源とはイメージを変えたヴォーカル・スタイルで熱唱。こちらも良い魅力が出ていました。

6.ニッポンのヒール ★★★

ボブ・ディラン+電子音。歌詞がキレキレの社会風刺。「金と名誉で海の水を吸い出そう」の部分、ファルセット以外でこれだけ高いキーはなかなか他にないですね。

7.ポカンポカンと雨が降る (レイニー ナイト イン ブルー) ★★★

昭和歌謡風メロディー・ラインに’90年代J-POP的アレンジを施した1曲で、原坊がヴォーカルを務めています。キーボードのリフが耳に残りますね。

8.HAIR ★★★

ギターの弾き語りからスタートし、オーケストラも加わって壮大に展開する曲ですが、メロディーも歌詞も一筋縄ではいかない変化球的なナンバー。「夢の中で色を着けた氷が溶けて絵に変わる」って、とても美しいフレーズですね。かと思えば、「モンローのパンティはケネディが決めたサイズ」なんて歌ったり(笑)。

9.君だけに夢をもう一度 ★★★☆

シングル『シュラバ☆ラ☆バンバ』のc/wとして収録されていた楽曲で、今作では少ない爽やかなポップス路線。このあたりは、小林武史の力あってでしょうか。

10.DING DONG (僕だけのアイドル) ★★★

ドラム、ベース等の響きがカッコイイですね。ただ、「DING DONG~」と繰り返すサビは単純で、もう一捻り欲しかったところ。歌詞はロリコンについて歌ったもの。2004年~2005年の年越しライブ『暮れのサナカ』では、幼女誘拐事件が多発していた世相を受けて、1曲目に演奏されました。

11.涙のキッス ★★★★

31stシングル。『シュラバ☆ラ☆バンバ SHULABA-LA-BAMBA』と同時発売で1992年7月18日リリース。「冬彦さん」現象を生んだTBS系ドラマ『ずっとあなたが好きだった』主題歌として大ヒットしました。
意外にもそれまでのサザンでは見られなかった、ポップスを地で行くようなバラード。「あ、って」とか「だま、って」、「そ、っと」など、促音でタメをきかせた歌い方が、メロディーにフィットしていて印象的です。落ち着いた曲調で、歌詞の意味も噛み締めながら聴いていたい曲です。今作の流れの中では、笑ってしまうほど存在感が薄いですね。

12.ブリブリボーダーライン ★★★

これも音はなかなか良く出来ているのですが、「ブリブリブリボーダーライン~♪」と繰り返すおバカなサビがちょっとなぁ…。隠語満載の歌詞も、しょうもないです(笑)。こうしたお遊びノリが多すぎるのも、僕がこのアルバムをあまり気に入っていない理由です。もうちょっと曲数を抑えてくれれば良いんですけどね。

13.亀が泳ぐ街 ★★☆

当時最長の7分4秒に及ぶ、スロー・テンポのジャジーなナンバー。聴きやすい今作中にあって、この曲はポップ性は低いです。特別盛り上がる部分もあるわけではなく、ライブではこの曲の演奏中はお客さんのトイレの時間へと化していました(笑)。しかし、時間をかけて作ったこともあって桑田さんはこの曲がかなりのお気に入りらしく、自身が選曲した限定版ベスト『HAPPY!』にもしっかり収録されました。

14.ホリデイ ~スリラー「魔の休日」より ★★

シングル『涙のキッス』のc/w。何か実在の元ネタがあるのでしょうか? 殺人事件を捜査する刑事をテーマにした歌詞です。ポップに仕上げた曲ですが、これといった魅力に欠けるかな。

15.IF I EVER HEAR YOU KNOCKING ON MY DOOR ★★★☆

『忘れられたBig Wave』に続き、桑田さんの多重録音ア・カペラ。雰囲気的には、僕は『忘れられた~』よりもこちらの方が好きですね。鐘の音のSEを経て、そのまま次曲へと続いていきます。

16.CHRISTAMAS TIME FOREVER ★★★★

『シャ・ラ・ラ』以来となるクリスマス・ナンバー。しかし、「ハッピーなクリスマス」ではなく、厳しい世界情勢の中で平和を願うという歌詞になっています。途中には少年少女合唱団の歌声も。「永久のいのちを~♪」と歌っています。このフレーズを子供たちに歌わせたのも、桑田さんの願いの表れでしょうか。『クリスマス・ラブ』との対比で歌詞についてが多く語られる曲ですが、メロディー・ラインや曲の雰囲気自体も丁寧に作られていて、僕はこの曲をかなり気に入っています。

総合 ★★★☆

(記:2008.8.18)










32ndシングル
『エロティカ・セブン EROTICA SEVEN
(1993.7.21)



1993年になって最初の音源リリースは、前年の同時期と同様のシングル2枚同時リリース。
『素敵なバーディー (NO NO BIRDY)』と同時発売されたのが今作。表題曲『エロティカ・セブン』は、フジテレビ系ドラマ『悪魔のKISS』の主題歌に起用され、172.7万枚のセールスを記録。『TSUNAMI』が出るまでは、今作がサザン最大のヒットシングルでした。

1.エロティカ・セブン EROTICA SEVEN ★★★☆

軽快な歌謡ロック。怪しげな雰囲気を演出したアレンジですが、ポップで聴きやすく仕上がっています。「抱きしめて私は私♪」なんていうサビは他で聞いたことがないようなメロディーラインですね。
オリジナル・アルバムには未収録。ライブやテレビでのパフォーマンスでは、桑田さんがこの曲を最初から最後まで正しく歌い切ったところを見たことがありません(笑)。この曲そのものにもあまり思い入れがないのかなぁ? 色モノのつもりが、本人の意向に反して売れすぎてしまったせいでしょうか。

2.9月の風 ★★★★

ター坊によるインスト・ナンバー。癒されますね。何も考えずにリラックスして聴くことの出来る穏やかな1曲です。

(記:2008.8.9)










33rdシングル
『素敵なバーディー (NO NO BIRDY)』
(1993.7.21)



『エロティカ・セブン』と同時発売された33rdシングル。当時のサザン歴代最高のセールスを記録した『エロティカ・セブン』に対して、こちらは表題曲の一聴しての地味さに加え、タイアップがなかったことが影響してか、辛うじて50万枚を突破する程度の売り上げにとどまりました。
しかし、表題曲だけを比べても、c/wとのパッケージングで比べても、僕は『エロティカ・セブン』よりこちらのシングルのほうが好きだなぁ。

1.素敵なバーディー (NO NO BIRDY) ★★★★

ほのぼのとしたミディアム・ナンバーで、なんとも言えない香りと風情がありますね。涼しげなサウンドは、サザン本来の味があります。歌詞もこれぞ桑田節といった感じで、切なさが滲んでいるではないですか。「幻のまま終わる恋は さまよえる雲のようさ」とか、「暮れゆく街のどこかで 今も愛しい女性(ひと)は眠る」とか、もう素晴らしいですね。「この胸のときめきが愛ならば 俺の目の前に~」から「WILL YOU BE BACK(BACK)SO CLOSE TO ME~♪」と続く演奏の決まり具合も最高です。この曲を好きな人と一緒にお酒を飲みたいです。

2.遥かなる瞬間 ★★★

ドラムの松田弘が初めて作詞・作曲を担当した楽曲で、ヴォーカルも松田さん自身が務めています。松田ヴォーカルの楽曲は、1982年のシングル『チャコの海岸物語』のc/wだった『翔(SHOW)~鼓動の物語』(こちらの作詞・作曲は桑田佳祐)以来、11年ぶり。
失恋後の切なさを歌ったマイナー調のミディアム・ナンバーで、独特の鬱々とした曲調と彼の歌声が絶妙なマッチングを見せています。

(記:2008.8.4)










< Z団 >
リミックスアルバム
『江ノ島 Southern All Stars Golden Hit’s Medley』
(1993.9.8)



1.江ノ島 Southern All Stars Golden Hit’s Medley (評価なし)

サザンの楽曲をリミックス&メドレー化した企画作品。サザン自身はほとんど関わっていないと思われ、「Z団」名義でのリリースになっています。1曲17分超。次から次にヒット曲が出てくるのは圧巻。どこがどうっていうことはあまり言えませんが、『私はピアノ』と『マチルダBABY』のマッシュアップは面白かったです。オリコンチャートではシングル扱い。サザン公式にはアルバム扱いとなっています。

(記:2008.6.4)










34thシングル
『クリスマス・ラブ (涙のあとには白い雪が降る)
(1993.11.20)



シングルとしては1980年の『シャ・ラ・ラ』以来となるクリスマス・ソング。近い時期では前年のアルバム『世に万葉の花が咲くなり』収録の『CHRISTMAS TIME FOREVER』がありますが、世界の将来を憂えた『CHRISTMAS~』とは異なって、今作は何も含みのない正面きっての「クリスマス・ソング」になっています。
c/wは、桑田さんのプロレス好きがいかんなく発揮されたファンク・ナンバー。
サザンの活動は本作を最後に2度目の休止。1995年に『マンピーのG☆SPOT』で復活します。また、『みんなのうた』で復活して以後のサザンを支えた小林武史とのタッグも、この曲で最後。この後の小林武史はご存知の通り、Mr.Childrenを大ブレイクに導きます。

1.クリスマス・ラブ (涙のあとには白い雪が降る) ★★★☆

フィルスペクター風のゴージャスなアレンジメントのクリスマス・ソング。思いっきり煌びやかに仕立てたサウンドですが、メロディー・ラインそのものは、じっくりと噛み締めるほど味わい深いですね。『逢いたくなったときに君はここにいない』のように、穏やかに丁寧に進んでいく音階です。このバランスがなかなか良いですね。
終盤、「涙のあとには白い雪が降る~♪」というコーラスと桑田さんのシャウトの大団円から、バックが徐々にストリングス・鈴の音・口笛に変わっていきフェイドアウトするのがしんみりして良いです。

2.ゆけ!! 力道山 ★★★☆

シンガー・ソング・プロレスラーを公言する桑田さん(ちなみに、プロレスラーで一番イイ男はアントニオ猪木だとか)らしさが見事に発揮されたファンク・ナンバー。実在のプロレスラーの名前や技の名前が登場します。サウンドのほうは、特別な派手さはないかな。これをライブでやるとは思わなかったなぁ~。絶対に桑田さんによる選曲ですよね(笑)。

(記:2008.8.4)


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