1999年5月にリリースした8枚目のシングル『GOING TO THE MOON』がCMソングとして大量オンエアーされ、ブレイクを果たしたTRICERATOPS。その『GOING~』と、9月にリリースされた『if』、そして先行シングルとしてリリースされた『SECOND COMING』を含む11ヶ月ぶり3枚目のアルバムが、この『A FILM ABOUT THE BLUES』です(この他にも『UNIVERSE』が12月にシングルカットされることになります)。
サウンドは1st~2ndの流れからは大きく変質し、非常にヘヴィになった男気溢れるロックといった印象。これまでの彼らのイメージで聴くと、その変貌ぶりに呆気にとられます。抜群のメロディーセンスでリスナーを引き込んでいた前2作とは違い、その激しいリフやグルーヴで聴かせるロックナンバーが揃っています。もちろん『PRETTY WINGS』や『ANOTHER TRAVEL』など、彼ららしいキャッチーなメロディーのナンバーもありますが、それらの楽曲もメロディーが主役というよりは、大音量のハードなサウンド全体で攻めてくる印象。 ただ、そういった楽曲群の魅力はどうかというと、僕には前2作のような気持ちの昂ぶりはなかったです。『CHILDHOOD』以降の後半はかなり聴くのがしんどかったな。 前述のブレイク作『GOING TO THE MOON』は当時からすれば特に、サイケデリックなサウンドが彼らにとっては異色のナンバーで、ある意味こういった転換作でのブレイクがこの時期のTRICERATOPSの迷走(…と僕には思える)に拍車をかけてしまったのかもしれないです。 そんな中、6曲目に置かれたミディアムナンバー『if』は、優雅なサウンドと甘いメロディーライン、和田君の歌声がマッチして、心温まる1曲。アルバムの核となる存在です。