NO-NAMEの隠れ家

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TRICERATOPS

作品レビュー

インディーズアルバム
『TRICERATOPS』
(1997.5.25)

トライセラのインディーズ盤。紙ジャケットで、中にはスリーブに包まれたCD、歌詞カードは無しと、粗末な作りが若々しくて微笑ましいです。
メジャーデビュー後の初期トライセラでずっと使用されるジャ写のイラストは、既にここで使われています。もうこの時点で決定済みだったんですね。
メンバーは和田唱(Vo)、林幸治(Ba)、吉田佳史(Dr)です。ヴォーカル和田唱は、平野レミさんの息子だっていうのは有名でしょうか。

1.Snow white ★★★

グルーブで押すロックで、後の曲では『ロケットに乗って』などに近いですが、サビはキャッチーというわけではないです。

2.Special.K ★★

印象的なストレンジリフは、これもトライセラらしさの一つ。歌詞がよくわかりません。

3.Raspberry ★★★

後にメジャーデビューシングルになります。この曲はキャッチーなメロが全面に押し出されたディスコロックで、サビの歌詞の通り踊れるナンバーです。音質の悪さが微笑ましいです。ヌケが悪いので、完成度的には当然ながらメジャー後の方がいくぶん上です。

4.Future shock ★☆

イントロがカッコいい。パンキッシュなドラムもリフも立っていますし、「プロっぽい」曲ですが、サビの脱力感とダラダラ感がなんともいただけません。

5.Dr.Frankenstein ★★★

メロウなナンバー。コーラスのかすれ具合や、バンドサウンドのザラザラ感が気持ちいいです。

総合 ★★☆

トライセラのサウンド面での特徴は、なんと言っても3ピースのシンプルで骨太なグルーブに、ヴォーカル和田唱によるキャッチーなメロという2点なんですが、今作では前者の勢いが強い反面、トライセラらしい甘いメロディーというのはまだあまり見られていないかな。キャッチーなのは『Raspberry』と『Dr,Frankenstein』くらいかと。
メロディーメーカーとしての和田君のセンスは、メジャー1stで爆発します。










1stアルバム
『TRICERATOPS』
(1998.3.21)



トライセラのメジャー1stアルバム。全ての曲を書いたヴォーカル和田唱のメロディーメーカーとしての才能が溢れ出ています。単純にメロディーがいいんだわ。「歌メロさえよければ、もう他のことなんかどうでも良い!!」と言わんばかりに、良メロが弾けまくっています。3ピースのバンドサウンドで、余計な楽器を使っておらず、曲調の違いはあれど、音の響きからすれば統一感のある作風。でも、その彼らの3ピースサウンドってのが、また良い音を出してるから注目!バンドやってるなぁ、ってな感じです。
歌詞は、全編に渡って中学生レベルの恋模様が描かれるばかり。「君」がいて「僕」がいて、何かアイテムが出てきて、「ヘイヘイ」言ってればトライセラの歌詞、ってな感じで単純です(笑)。あ~、歌と共に詞も甘いのね。
まぁ、とにかくポップでキャッチーで聴きやすい一枚。トライセラ初心者や、普段ロックなんか聴かないっていう人でも入りやすいです。
やっぱりトライセラはこの頃が一番良かったかなぁ。CDの再生回数も彼らの作品の中ではこれが断トツです。

1. Two Chairs ★★★

まさにスタートといった感じの勢いのあるナンバー。3ピースサウンドも主張していて良いですね。

2. 彼女のシニヨン ★★★☆

2ndシングル。
個人的にはわざわざシングルCDを買いに走ってしまった曲です。とにかく激キャッチーなメロディーにやられてしまいましたね。
サビのコーラスもとっても楽しそうで、バンドをやっていたら是非とも演奏してみたくなるような曲です。

3. オレンジライター ★★★

一風変わったリフで通すナンバーで、サビっぽくないサビなのに、それでも甘く耳に入ってくるんだからすごい。
こういったタイプの曲も彼らの王道です。

4. ロケットに乗って ★★★☆

3rdシングル。
前2作のシングルとはちょっと違ったノリで、今回はリフ中心にぐいぐい引っ張っていくパワーロック。これもまた心地よい演奏が体を動かさせる傑作でしょう。

5. 復刻ジーンズ ★★★★

ビンテージジーンズを持っていた君(彼女)に、復刻版を持っていた僕が張り合うんだけど、そんな彼女も今はもう居なくなってしまったっていう、トホホな歌詞のショートチューン。
こんなふうに、瑞々しい恋模様を描いた歌詞の中で、キーワード的に登場したこういうアイテムをそのままタイトルに持ってくるというのは、トライセラの歌詞の典型的なパターンです。
曲の方は、イントロなしで始まり疾走感をもったまま最後まで駆け抜けます。いい音出してるじゃないですか、うん。

6. Raspberry ★★★★

インディーズ盤に収録されていたナンバーをメジャーデビューシングルとして1997年5月21日リリース。今でも根強い人気の傑作です。
常に和田唱が唱え続けてきた「踊れるロック」を地で行ったような、わかりやすくキャッチーなメロディーが冴え渡る3ピースサウンドによるディスコロック。トライセラの美味しいところをめいっぱい表に出したような、そんな曲です。

7. Star Jet ★★★

ミディアムロック。歌詞はかなりイッちゃってます。
「まるでスタージェットみたいに~♪」のあとに入るコーラスがいかにもアマチュアバンドっぽいのですが、それが逆にここでは可愛らしくプラスに働いているようにも聴こえます。

8. プレゼント ★★★

シャッフルビートに乗せた可愛らしい1曲。アルバムの中でも重要な存在でしょう。「誕生日の日の次の日なら空いてるだろう」というやるせなさがなんとも、ねぇ。

9. アイ・ラブ・エスカレーター ★★★

無骨な雰囲気を漂わせるようなAメロから一転、サビで一気に視界が開けるかのようにキャッチーなメロに変わっていくという曲構成が聴いていて気持ちいいです。

10. My Skywalker’s T-Shirt ★★

ゆったりとしていてラストにしか似合わない感じですが、歌詞が「ルークスカイウォーカー」ってのがまた、初期トライセラらしいところです。

総合 ★★★☆

和田唱のメロディーメーカーとしての才能が光る。1stアルバムという原石の状態だったからこそなり得た傑作。初聴時の印象も良いはず。










2ndアルバム
『THE GREAT SKELETON’S MUSIC GUIDE BOOK』
(1998.12.2)



前作からわずか10ヶ月足らずで発売された2ndアルバム。シングルも4作を収録した、精力的なこの年のトライセラの活動のシメを飾る一枚。
冒頭の『PARTY』でこれまで以上に骨太なグルーヴに驚きますが、基本的には前作を踏襲した作風になっています。
前作の『オレンジライター』ようなリフで押す『MIRROR』(2曲目という配置も同じ)。無骨なABメロからメロウなサビへと展開する構成が『アイ・ラブ・エスカレーター』を思わせる『GREEN』。『プレゼント』と同様シャッフルビートの『LIP CREAM』など、前作にも同様のタイプが収録されていた楽曲もちらほら。しかし、ミディアムテンポの『GUATEMALA』、初めてバラードチックな楽曲に挑戦した『GOTHIC RING』の両シングルなど、新境地のナンバーも収録されています。
キャッチーなメロディーセンスは変わらず、ビートが太くなって、やや前作よりも重量感を増した印象のアルバム。アルバム全体としての流れやまとまり具合は1stに比べて劣っている印象もありますが。
シングルの『FEVER』はスリリングなサウンドが格好良いディスコロックの傑作。同じくシングルの『MASCARA & MASCARAS』は、サウンド面は『ロケットに乗って』のようなパワーポップで、歌詞の「マスカラをつけて奇麗になる君」と「覆面レスラーに興味をもつ僕」という風刺めいた対比が面白いです。全体としてみれば相変わらず前回と同様に中学生レベルの恋模様が歌われる和田君の歌詞の中で、この曲はなかなか面白かったな。
シングル以外では、『LIP CREAM』が良いです。「僕が君の運命の人だったら~♪」という歌詞が、なんとも情けなくて、でもなんかその気持ちが伝わってくるようで可愛らしいです。

1.PARTY ★★★
2.MIRROR ★★★
3.GUATEMALA ★★☆
4.FEVER ★★★☆
5.GREEN ★★★☆
6.GOOD TIMES ★★★
7.GOTHIC RING ★★★
8.MASCARA & MASCARAS ★★★
9.CARAMEL TEA ★★☆
10.LIP CREAM ★★★★
11.SHORT HAIR ★★

総合 ★★★

前作からの正統な流れでの2nd。サウンドの重量感はややアップ。1stに比べて冗長・散漫な印象も。










3rdアルバム
『A FILM ABOUT THE BLUES』
(1999.11.3)



1999年5月にリリースした8枚目のシングル『GOING TO THE MOON』がCMソングとして大量オンエアーされ、ブレイクを果たしたTRICERATOPS。その『GOING~』と、9月にリリースされた『if』、そして先行シングルとしてリリースされた『SECOND COMING』を含む11ヶ月ぶり3枚目のアルバムが、この『A FILM ABOUT THE BLUES』です(この他にも『UNIVERSE』が12月にシングルカットされることになります)。

サウンドは1st~2ndの流れからは大きく変質し、非常にヘヴィになった男気溢れるロックといった印象。これまでの彼らのイメージで聴くと、その変貌ぶりに呆気にとられます。抜群のメロディーセンスでリスナーを引き込んでいた前2作とは違い、その激しいリフやグルーヴで聴かせるロックナンバーが揃っています。もちろん『PRETTY WINGS』や『ANOTHER TRAVEL』など、彼ららしいキャッチーなメロディーのナンバーもありますが、それらの楽曲もメロディーが主役というよりは、大音量のハードなサウンド全体で攻めてくる印象。
ただ、そういった楽曲群の魅力はどうかというと、僕には前2作のような気持ちの昂ぶりはなかったです。『CHILDHOOD』以降の後半はかなり聴くのがしんどかったな。
前述のブレイク作『GOING TO THE MOON』は当時からすれば特に、サイケデリックなサウンドが彼らにとっては異色のナンバーで、ある意味こういった転換作でのブレイクがこの時期のTRICERATOPSの迷走(…と僕には思える)に拍車をかけてしまったのかもしれないです。
そんな中、6曲目に置かれたミディアムナンバー『if』は、優雅なサウンドと甘いメロディーライン、和田君の歌声がマッチして、心温まる1曲。アルバムの核となる存在です。

1.GOING TO THE MOON ★★★
2.VERTIGO ★★☆
3.PRETTY WINGS ★★★
4.ANOTHER TRAVEL ★★★
5.SECOND COMING ★★★
6.if ★★★
7.CHILDHOOD ★☆
8.DANCE ★★
9.YOU’RE MY GASOLINE ★★
10.FUNKY TALK ★★
11.UNIVERSE ★★☆

総合 ★★

サウンドは一気に太くなり、前2作と大きくカラーの異なるアルバム。
賛否両論だと思いますが、僕はトライセラらしさをあまり感じることが出来ず苦手な一枚。
(記:2006.12.26)










6thアルバム
『LICKS&ROCKS』
(2004.2.18)

初期トライセラファンであり、今後のトライセラを応援する者でもある僕にとって、この6枚目のアルバムは、かなり喜ぶべき内容となりました。
前年に、ビクター移籍前の総決算の意味を含めたベストアルバムをリリース、その後の活動と、あらためて線引きをしたように思えました。

ビクター移籍後には既に前作『DAWN WORLD』が出ているのですが、このアルバムを新たなトライセラのスタートとして位置づけたいくらい今回は勢いを感じましたね。
音圧はしっかりしているんだけど、余計な楽器を使わずに、和田君の天性のメロディーラインで曲の大部分の魅力が形づくられていくのは、3ピースでグイグイ聴き手を引き込んでいた初期の頃に近いものを感じます。
トライセラ本来の「踊れるロック」を追求したナンバーが多く並んでいることも、アルバムに瑞々しさを与えていると言えるでしょう。『TATOO』『ROCK MUSIC』といったシングルリリースされたナンバーは、以前よりも増して、余計な音をそぎ落としたシンプルなサウンドで作られています。体を動かしながら楽しみたい曲が並び、あらためてトライセラはライブバンドだなぁと思う次第。
そんな中、中盤に何気なく置かれた『何気ないSUNDAY』が、実にいい味を出しています。
後半にテンションが落ちるのが個人的なマイナスポイント。
原点回帰と、新たな挑戦。二つが合致し、その先にある成長の証が見られたような気になった、そんなアルバム。
まだまだ終わったバンドじゃないんだよね。

1.MECHANICAL FRIEND ★★★
2.1000 LOVE ★★☆
3.TATTOO ★★★☆
4.世界は燃えている ★★★
5.何気ないSUNDAY ★★★☆
6.ROCK MUSIC ★★★
7.赤いゴーカート ★★★
8.JOHNNY DEPP ★★★
9.CAROUSEL ★★
10.夜のSTRANGER ★★☆

総合 ★★★


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