おばさんが作った死語ブログ。人生いろいろに語ります。

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巡回検診車 (下)



 ところで巡回健診には少しコツがある。家を出るときから余分な衣類は身につけない。簡単に言うとノーブラ、そしてなるべく薄着、寒ければその上にコートなどを着る。医療施設での健診と違い検診用ガウンが用意されていない。現地で受付はあらかじめ決まっているにせよ、検診が始まったらあとの各検診は早い順、つまり要領のいいヤツ順になる。いかに早く服を脱ぎ捨て、診てもらい、着忘れのない様、早く身支度し、次の検診項目を回るかが、ポイントである。ブラのひとつ、ばばシャツの一枚も忘れた日には申し出るのも恥ずかしい。
 ノーブラというのは誠に寒い。春とはいえ、寒の戻りがある頃は風も冷たい。建物の中で検診を終えると次は問題のバスに乗り込まなくてはいけない。バスは、胃の検査、レントゲン、子宮ガン検査の3台であるが、各バスに一度に2人位しか入れないから、順番待ちで外に立っているとき、胸がスースーして寒い。しかも胸を張っているとノーブラがばれちゃうのが恥ずかしくてなんとなく猫背になってしまう。早く順番こないかな~。寒いな~、恥ずかしいな~。おばさんはいつも腕組みをしてこれらの気持ちをごまかしている。胸も隠れるしね。
 子宮ガン検査でこれまた不快な思いをした。バスだから仕方ないけど、狭くて暗くてなんだか古い検診台に乗っかって診てくれたカーテンの向こうの先生が、診察しながら、ふふふ・・・と笑っている。なんだこいつ、と思いながらじっとしていると、私の問診票を見ながら、「へ~アンタ、いろいろ病気やったんだねぇ、ふ~ん・・・。」などと独り言みたいに言っている。(念のために言っておきますが性病ではありません。)一応「はぁ。そうですが。」
と答えたが、先生は「はい、いいですよ。」と言って私の太ももの内股を2回ぽんぽんと軽く叩いた。 「むかっ!」 ときた、のだが何も抗議しなかった。弱い私。それでまたまた「不快」を抱えたまま、バスでの検診を終え、乳がん検診に向った。「お願いします」とカーテンを開けて、おばさんは、驚いた。さっきの受付会場の不気味な男が乳がん検診の先生であった。白衣を着てはいるが気障なネクタイは見えている。とりあえず、顔色を悟られないために視線をベットに向け説明を聞いた。上半身裸で横たわるという説明なのだが、おばさんは逃げ出したかった。「なんだこの先生はぁ。どこの病院から連れてきてんだよぉ。」ベット(と言う表現は内容的に適切でないので、検診台にします。)の上に仰向けに横たわり、おばさんは「まな板の鯉」なら艶っぽいが、「ひっくり返ったヒキガエル」状態で事の成り行きが普通に終わるよう願った。診察しながら、男は低い声で説明している。「はぁ、そうですか。」と半ば引きつった顔でわけもなく愛想笑いをしているおばさん。おばさんはこの時既に自分の頭の中で、「こいつは普通じゃない。」と決め付けていたので、男が行う全ての行為が何かしら、いやらしくて仕方なく、「乳がんで死んでもいいから早く診察を終えてくれ」と願っていた。ほんの5分ほどの診察だったが、おばさんはひどく疲れ、身支度もろくにせず、その部屋から出た。
 これは誠におばさんの取り越し苦労で、検診の最中に「何か」があるわけないのだが、世の中、ありはしないような「何か」が往々にあったりするのだ。何にもなくて良かった。被害者にならなくて良かった。

 ということで、総合的に考えてみると、今回遭遇した巡回健診車の人たちはいわば外注のお医者さんらしい。自己負担額を振込みで支払う時、支払い先が「×××」(これじゃわからないか。)で、病院の名前ではなかった。この名前から察すると病院から委託されて行っているようだ。そういえば採血検査のとき、若い3人ほどで行っていて、「今度は上手に出来るかなぁ」「大丈夫よ」「あいつは上手だから・・・。」などとしゃべっていたっけ。・・・針、ちゃんと替えてんのかぁ?

 おばさんはそんな経験をして以来、巡回検診車での健康診断はしないことにした。なるべく、医療機関での健診を希望するようにしているが、だからといって安全ではない最近。「何か」あっては困るのだが、「何か」の内容も様々になってきてしまった。

                               完


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