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ブラジルの小さな村で雑貨店を営むホセ・アリゴー。小学校3年までしか学校に行っていない彼が、ある日、啓示を受けるんです。『病の人々を救え』死を待つばかりの病床の女性から、何かに取り憑かれたように素手で子宮がんを取り除くという奇跡を起こします。ちょっと信じられないような話ですが、1971年に亡くなるまで200万人を救った実在の人物だそうです。誕生日は1918年10月18日、日本では大正七年、世界では第一次世界大戦終結間近でした。医学の知識を全く持たない彼ですが、夢の中に現れた白衣の男フリッツ医師の命ずるままに、病に苦しむ人を治療していきました。お金を取らなかったので、これまで医者にかかれなかった貧しい人たちの救世主となります。噂を聞きつけた病に苦しむ人々がアリゴーの心霊手術に希望を見出し、彼の家に長い列をなしていました。中には疑い深い医療関係者もいました。フリッツ医師が憑依したアリゴーは、批判しようとやってきた医者に『君は食道癌だ。同僚に診てもらえ。』と言って追い返します。実際彼は食道癌だったようで、アリゴーの家の前の長い列に加わっていました。新聞に載ったことでさらに国中の話題となり、医師免許を持たないアリゴーを教会や医師会は黙って見ていられなくなります。アリゴーは告発され逮捕されますが、彼に病気を治してもらった人々が抗議運動を起こしました。彼は再び治療に復帰します。亡くなった名医たちの憑依現象で、痛みや出血もなく病巣だけを取り除いてもらえるなら、苦しい上に高額な治療は必要ないですよね。医療を学ぶ学校も必要なくなります。フリッツ医師は、何を思って出て来たのか分かりませんが、そのタイミングで治療を受けられた人はラッキーでしたし、映画になるくらいですから大変稀な現象なんでしょう。アリゴーは子供の描いた絵から死を察知し、1971年に絵の示す通り交通事故で命を落としました。『奇蹟の人/ホセ・アリゴー』(原題:Predestinado, Arigo e o Espirito do Dr. Fritz)は2022年のブラジル映画です。監督はグスタボ・フェルナンデス、アリゴー役はダントン・メロが演じています。消毒もしてないそこら辺のカミソリで切ったりして大丈夫なのかと思ったり、血もたいして出ないし患者も平気そうなので不思議な感じです。治療風景が生々しいですが、最後に本人の治療風景も映し出されて、よく再現されてると思いました。
2024/11/17
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14世紀後半にイングランドで書かれた作者不明の物語『ガウェイン卿と緑の騎士』(Sir Gawain and the Green Knight)を原作とした映画です。トールキンを魅了した中世文学。それはアーサー王と円卓の騎士が出てくる物語でした。ガウェインはアーサー王の甥でしたが、際立った武功もなく娼館に入り浸るダメ男で騎士の称号も与えられずにいました。クリスマスの日、王の円卓の宴に招かれていたガウェインは、王宮に現れた全身緑の騎士のゲームを受けて立つことになります。緑の騎士は自分と勝負して勝てば報奨として斧を与える、ただし一年後に自分が受けたと同じだけの傷を受けることになると言います。ガウェインは緑の騎士が黙って差し出した彼の首を落とし見事勝利しますが、緑の騎士は落とされた首を拾って、一年後に6つの夜を超えた緑の礼拝堂に来いと言って立ち去りました。ガウェインの母親は魔女のようで、王宮に緑の騎士を召喚したのは彼女でした。一年が過ぎ、旅立つことになったガウェインに命を守る緑の腰帯を与えます。旅の途中、戦場の跡地で遺品をあさる少年に道を尋ねてその方向に進むと、悪い仲間がいて身包み剥がされていまいました。大切な斧も腰帯も馬も奪われ、森を彷徨い廃墟を見つけて眠りにつくと、家主らしい聖ウィニフレッドに起こされます。赤い髪の美しい女性でした。家の前にある泉から切り落とされた自分の首を探して欲しいと頼まれ、意味不明のまま泉に飛び込むと水の底に沈んでいた頭蓋骨を見つけます。報酬として、翌朝ガウェインの元に斧が戻っていました。旅の途中から、狐が彼に着いてくるようになります。言葉を話すんですよ。進撃の巨人みたいな巨人族にも遭遇しました。長旅に疲れたガウェインは、ある城に辿り着きました。旅の目的地である緑の礼拝堂はすぐそばだと言われます。城主が狩りで留守の間、故郷の恋人にそっくりの奥方が誘惑してきます。緑の騎士との約束を果たすということは、明らかに死を意味します。ガウェインは、どうするんでしょうか。原作は中世の英語で書かれた叙事詩です。日本語の古文もあんまり好きじゃなかった私が、英語の古文なんてまず手を出すことはないんですが、気になって現代語で書かれた原作のあらすじを読みました。映画とは最後の展開がかなり違っていて、どっちも面白いです。『グリーン・ナイト』(原題:The Green Knight)は、2021年のアメリカ映画です。雰囲気が全般的に暗くて、イギリス映画かと思ってました。後から考えると、あれはなんだったんだろうと言う暗示的なシーンがいろいろ思い出されます。監督・脚本・製作・編集はデヴィッド・ロウリーで、いくつかの映画賞を受賞しました。ちょっとホラーなダークファンタジー、秋の夜長に皆さんもいかが?
2024/10/31
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戦死した息子の親友だったという男が訪ねてきました。悲しみに暮れていたピーターソン夫人は、長男ケレイプが死の間際に家族に残した言葉を聞いて涙します。礼儀正しく人柄も良さそうなデイビッドに、しばらくこの家に滞在しないかと持ちかけます。デイビッドはルックスも良く、頼り甲斐のある男でした。ただの軍事訓練を受けた兵士以上にとんでもなく腕っぷしが強いんです。高校でいじめに遭っていた次男のルークを救い、彼のヒーローになります。ルークはデイビッドに教わった通り、学校でいじめっ子たちに反撃して退学処分になりそうになるんです。母親のローラと一緒に学校に出向いたデイビッドは校長に掛け合い、軽い処分で済むことになって、ローラもデイビッドを心から信頼するようになりました。長女アナとデイビッドは一緒にアナの友人クリステンのパーティに出かけ、しつこく絡んでくる元彼に困っていた彼女を救ってここでも信頼を勝ち取ります。父親のスペンサーにとってはビールを飲みながら仕事の愚痴を聞いてくれるいい話し相手でした。デイビッドはいつの間にか、ピーターソン家に不動の地位を築いていったんです。ところがデヴィッドの電話を盗み聞きしてしまったアナは、何かがおかしいと気づいて軍へ問い合わせるんです。なんとデヴィッドは火事ですでに死んでいると聞かされます。それじゃ家に居座っているあの男は誰?特殊部隊がデヴィッドを抹殺するためにやって来て事態は深刻な方向へ向かいます。『ザ・ゲスト』(原題:The Guest)は、2014年のアメリカ映画。監督・編集はアダム・ウィンガード、主役のデヴィッドをダン・スティーヴンスが演じます。前半はいい感じだったんですが、後半がB級スリラーになった気がしました。ハロウィーンと引っ掛けた演出とイケメン主人公のおかげでしょうか、アメリカでの評価は高かったようです。
2024/10/28
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ギリシャ神話最強の勇者ヘラクレスの物語です。星座にもなってますが、空間的にでかいだけでそれほど明るい星がないんですね。夏の大三角形こと座のすぐそばにあります。しし座、うみへび座、かに座、りゅう座などの星座になっている怪獣を生け捕りにした英雄。この映画にはそういった戦いは全く出てきませんで、グラディエーターと走れメロスを足したような話でした。暴君アンピトリュオンは近隣諸国に戦いを仕掛け、力による支配を行っていました。王妃のアルクメネが神に助けを乞うと、ゼウスの妻である女神ヘラが現れて、ゼウスとの子供が世界を救うと告げます。アルクメネは出産した男の子にアルケイデスという名をつけますが、『ヘラの贈り物』という意味で本当の名をヘラクレスとしました。成長したヘラクレスは素晴らしい肉体美で、どう見ても父王には似てないし、兄のイピクレスは逞しい弟に嫉妬を感じていました。クレタ島の姫君ヘベと恋に落ちたヘラクレスですが、父アンピトリュオンは兄のイピクレスとヘベの結婚を決め、ヘラクレスを生きては帰れないと言われている戦地エジプトへ送り出します。結婚式が行われる3ヶ月後までには必ず戻ると言い残して出発したヘラクレス。彼を待ち受けていたのは父王の罠と奴隷生活、命懸けの戦いの日々でした。『ザ・ヘラクレス』(原題: The Legend of Hercules)は、2014年のアメリカ映画です。ヘラクレス役はケラン・ラッツ、監督はレニー・ハーリンです。一般的に知られているギリシャ神話と大きく違うのは、ヘラの立ち位置とヘベの存在でしょうか。神ゼウスが人間の王女アルクメネと浮気して生まれたヘラクレスに対し、ヘラは激しく嫉妬して嫌がらせをするんですけど、この映画では『ヘラの贈り物』になってました。色んな解釈があるんでしょう。ディズニーのヘラクレスも全然違う話になってますもんね。
2024/10/25
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才能ある二人の少女の成長物語です。一人は貧しい家庭に生まれたユリア。炭鉱町の広場で音楽に合わせて即興で踊り、その隙に弟がスリを働くという連携プレーで小金を稼いでいました。もう一人は裕福な家庭に生まれたカリーナ。容姿にも恵まれ幼い頃からバレエを嗜んでいます。この二人が縁あって同時期にロシア国立ボリショイ・バレエ・アカデミーに入学します。卒業公演のプリマを射止めるのはどちらか。ユリアの方はバレエ自体に縁がなく、たまたま財布を盗んだ人がボリショイ出身の元バレエダンサーで、彼女の身体能力に惚れ込むんです。金を工面してモスクワに連れて行き、なんとかアカデミーにねじ込んでもらうんですね。カリーナの方はすでにバレエの基礎は出来ていて、講師たちはエリートとして将来に期待していました。アカデミーには元プリマのガリーナが、もうかなりお婆さんなんですが講師として君臨しています。アカデミーの屋上から隣の屋根にジャンプしたという伝説が語り継がれていました。彼女の一言は絶対で、他の講師陣は口を挟めないんですね。ユリアはカリーナや友達と一緒に伝説を確かめようと屋上に上がります。遙か下に車の多い通りが見えて、とても飛べるとは思えませんでした。ユリアとカリーナは親友でライバル。酔っ払って連続スピンを何回できるか競ったりしています。ガリーナはユリアの潜在能力に気づいて、目をかけていました。学校が終わったあと、ユリアに家の掃除係を申しつけます。ちょっと認知症気味で、高価なイヤリングをプレゼントしたことを忘れたり、トラブルメーカーでもありました。青春ドラマなので恋や挫折なんかのドラマも盛り込まれていますが、全くチープな感じはなく見応えがあります。ユリアが屋上からジャンプするシーンは頭から離れません。二人のルームメイトでターニャという女の子がいるんですが、彼女は胸とお尻が発達し過ぎて学校を去ることになるんですよ。あくまでもプロを養成する学校ですから体型にも厳しいんでしょうね。『やる気だけじゃダメなんだね〜。私なんかじゃ1発アウトだわ。』と言うと、大将は大笑いして『受けてみれば』ですって。『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』は2018年のロシア映画。ヴァレーリー・トドロフスキー監督作品です。バレエ映画見ると、心なしか姿勢が良くなります。オススメです。
2024/10/16
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シャイロックは、シェークスピアの『ヴェニスの商人』に登場する強欲な金貸しです。池井戸潤の物語はどれも面白いので、この映画も期待して見ました。金はただ返せば良いってもんじゃない…。東京第一銀行の小さな支店で働く人々の表と裏の顔が、実に巧妙に絡み合っていきます。銀行で100万円の現金紛失事件が発生しました。行員総動員で捜索にあたりますが現金は発見できず、真面目な女性行員の北川(上戸彩)のロッカーから札束に巻く帯封が見つかったことで容疑者になってしまいます。本店検査部の黒田(佐々木蔵之介)が調査に訪れました。支店長の九条(柳葉敏郎)と副支店長の古川(杉本哲太)は、100万円は出てきたと説明にあたりますが、紛失した現金を幹部数名がポケットマネーを出し合って穴埋めしていたんですね。金はただ返せば良いってもんじゃない…。しかし捜査にあたった黒田も、人に言えない罪を背負っていました。一時期競馬にハマっていて、支店のキャッシュボックスの金を補填する際に少々着服しては競馬に注ぎ込んで戻すという危ない橋を渡っていたんです。危うくバレそうになってやめたんですが、実は見ていた人がいたんですね。この支店で成績トップの滝野(佐藤隆太)は、他の行員たちが怒鳴り散らされている中、営業会議で唯一人のヒーローでした。良い夫、良い父親で、銀行員の鏡のような男です。しかし実は大口融資先の社長(橋爪功)に過去の因縁からたかられていました。その社長は相当なワルで、返済の遅れを滝野に肩代わりさせたりするんです。犯人扱いされて納得できない北川は、現金を無くして事件の中心にいた田端(玉森裕太)と上司の西木(阿部サダヲ)とともに真相を探っていきます。西木は兄の借金の連帯保証人となっていたことでヤミ金業者にしつこく取り立てられていました。みんなそれぞれ金で苦労してるんですね。誰が盗ってもおかしくない。『シャイロックの子供たち』は池井戸潤の同名小説とは展開が異なる完全オリジナルストーリーで映画化され、2023年に公開されました。監督は本木克英、脚本は池井戸潤がツバキミチオの名前で担当して、第47回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞しています。原作を読んでいないので違いは分かりませんが、面白い映画でした。オススメです。
2024/09/27
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バックは暖かなカリフォルニアの知事の家で、わがまま放題に育った大型犬でした。北のゴールドラッシュに沸くご時世、犬ゾリ用の大型犬は高値で取引されることから悪い商人に捕まり売り飛ばされてしまいます。人に慣れ、自然の中で暮らしたことのなかったバックの冒険物語です。バックは言葉を理解する非常に賢い犬でした。根底に眠る野性の本能も次第に研ぎ澄まされていきます。アラスカの極寒の地で、郵便物を届ける仕事にもやりがいを感じ始めていました。犬ソリの先頭を任されているスピッツは性悪なリーダーで、仲間たちは恐れ怯えています。ある日、ついにバックと対決することになり、敗北したスピッツは去っていきます。新たにリーダーとなったバックの働きはすごいかったですよ。的確な判断で雪崩を回避したり、仲間を率いて最速で郵便物を届けました。主演がハリソン・フォードとなっていたんですが、郵便の仕事に着く前にすれ違っただけで、まさかあれだけで終わりなのかと不思議に思っていたんです。郵便の仕事を解かれ、意地悪な旅人たちから離れて後半はバックの飼い主になってました。子供を亡くして夫婦間に亀裂が入り、一人最果ての地にやって来たジョン・ソーントン。息子が生前行きたがっていた大自然をバックと共に旅して、偶然砂金とりが住んでいた古屋を見つけます。バックはそこで森の狼たちと交流し、次第に野生に目覚めていくんです。『野性の呼び声』(原題:The Call of the Wild)は、2020年のアメリカ映画。監督はクリス・サンダースです。ジャック・ロンドン原作の「野性の呼び声」の通算6度目の映画化だそうで、この話をどこかで知ってる気がしながら見ていました。翌日、急に思い出したんです。手術してしばらく学校休んでた時、暇だったので家にあった少年少女世界の名作文学を読んでて、そのアメリカ編に『あしながおじさん』と一緒に入ってたんですよ。子供用にアレンジされた本だったと思うんですが、タイトルが若干違って『荒野の呼び声』だった気がします。懐かしい〜。オレンジ色のブックケースに入った本。映画はディズニー風にアレンジされていて、とってもマイルドなのでご家族でご覧になれます。
2024/09/25
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イタリアの風光明媚なある村の丘の上に小さな古本屋がありました。店主はリベロ(自由)という名の気のいいおじいさん。本を売りにくる人、買いに来る人、個性的な客たちをいつも暖かく迎えています。隣のカフェで働いているニコラは世話好きのお節介な青年で、よく店にやってきてはリベロとおしゃべりしていました。ニコラはキアラという家政婦に片思い中。彼女が探していた本を見つけてあげることで、デートのきっかけを作ります。毎朝やってくるボジャンは、ゴミ箱をあさっては古本などを持ち込んで小銭を稼いでいます。1950年代にアメリカに移住した若い女性の日記を買い取って、リベロはそれを物語を読むように少しずつ読んでいくんですが、実に味があるいい話なんです。日記を読むとき、必ず古いオルゴールをBGMとして鳴らすんですけど、それがレトロな雰囲気を倍増させていました。教授と言われていた男性は、自分が書いた本をもう一度手に取りたいと探しています。分厚い昔のラテン語の辞書などを持ち込んではリベロに買い取ってもらって、隣のカフェでスイーツを食べるのがお決まりのコース。買いに来る人もいるんですよ。『我が闘争』が愛読書だと言うスキンヘッドの男や、ネットで買うと趣味がバレるからと古本屋にやってきたSM趣味の女。初版本を集めているという収集家の男性など。でも誰よりも本好きなのは、店の外で本を眺めていた移民の少年エシエンでした。お金がないから買えないと言うエシエンに、リベロは彼が興味を持っていたミッキーマウスの漫画を貸してあげることにします。公園で一気に読み終えたエシエンは、すぐに返しにいくとまた別の漫画を貸してくれました。その日からリベロとエシエンの心の交流が始まるんです。漫画はそろそろ卒業して、この本を読んでごらんと『ピノキオの冒険』を与えます。エシエンは本当に本が好きで、返しにいくたびに内容についてリベロと語り合い、また次の本を借りていきました。『丘の上の本屋さん』はクラウディオ・ロッシ・マッシミ監督・脚本による2021年のイタリア映画です。85分の短い映画ですが、心に沁みるいい話です。とても風景が美しくて、サンマリノもこんなところがあったなあと懐かしく思い出しました。『図書館て、ないのかな。』僕もそう思ったと、大将も言ってました。
2024/09/19
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1984年に公開されて大ヒットした映画『ゴースト・バスターズ』。メンバーが世代交代して、お化け退治もファミリービジネスになっていました。今でも練習場でこの映画のテーマ曲かかりますけど、もう40年も前の映画だったんですね。ゴースト・バスターズ2まで見た記憶がありますが、2014年にスペングラー博士役だった俳優のハロルド・ライミスさんが亡くなって、2021年にゴーストバスターズ/アフターライフが制作され、その続編となる作品が今日ご紹介する映画です。前作を見ていないので最初は状況が掴みにくかったんですが、ゴースト退治の装置を発明した天才科学者スペングラー博士の孫のトレヴァーとフィービー兄妹が中心に描かれています。母親のキャリーがスペングラー博士の娘で、父親はキャリーの再婚相手のようです。四人が新世代ゴーストバスターズで、ニューヨークに出没するゴーストを捕獲しては住まいの消防署のゴースト保管庫に詰め込んでいました。フィービーは15歳で、有能なんですがまだ早すぎると両親が仕事から外そうとして軋轢が生じます。旧世代ゴーストバスターズのメンバーのレイが経営している店に、ある日、祖母の遺品と言って不思議な球体が持ち込まれます。GOTの北から侵攻してきたゾンビ軍団の王、みたいな最強のゴーストが封印されていたんですよ。何もかもを凍らせる力を持つゴーストで、古代王朝の守護神でした。配下のゴーストを操り、復活して、消防署のゴースト保管庫を解放し地球を自分の支配下に置こうと目論んでいます。ニューヨークが凍っていく一大事に新旧ゴーストバスターズ大集合。しかし通常のプロトンビームは冷気で使えず、大ピンチです。どうするゴーストバスターズ。『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』(原題:Ghostbusters: Frozen Empire)は、2024年のアメリカ映画。ギル・キーナン監督作品です。旧世代ゴースト・バスターズもマシュマロマン(ミニ)も見られます。音楽もお馴染みのあの曲。夏休みの子供向け映画のような感じですが、旧作を知ってる大人も楽しめます。アクション&サスペンス、非日常が見たいとき
2024/09/17
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商人だった伊能忠敬は56歳で家業を隠居し、全国を行脚して日本地図を作り上げた偉人です。千葉県香取市に伊能忠敬記念館があるそうですが、香取市役所の池本(中井貴一)が観光課のプレゼンで提案した伊能忠敬の大河ドラマ化が知事の支持を得て動き出しました。しかしそこには意外な落とし穴があったんです。伊能忠敬は『大日本沿海輿地全図』を完成させる3年前に死んでいたという事実に直面。舞台は1818年の江戸に移ります。地図作りは幕府から資金が出ていたんですが、海岸線を歩いて測量し、墨で少しずつ描いていくという方法で、ものすごく時間もかかるしお金もかかりました。間を取り持つ天文学者の高橋景保(中井貴一)は、幕府に進捗報告するたびに肩身の狭い思いをしています。しかも伊能が未完のうちに亡くなったという知らせ。弟子たちから師匠の死を隠して地図作りをどうか続けさせてほしいと懇願されますが、もし伊能の死がバレたら、幕府に嘘をついて公金を使い込んでいたことになるので間違いなく死罪です。一旦は断りますが、伊能の元妻のエイ(北川景子)が頭の回る女性で、騙されて協力するハメになってしまいます。伊能が全く顔を出さなくなり、月日ばかりが経って流石に幕府側もおかしいと思い始めて密かに高橋の身辺を調べさせるんです。この辺の騙し合いが面白いところなんですが、そうこうしているうちに三年が経ち、ついに上様にお披露目の日がやってきます。海岸線が精密に書かれた広大な地図、本当に見事でした。世界を驚かせた初の日本地図。シーボルト事件なんていうのもありましたね。『大河への道』は、2022年公開の日本映画、中西健二監督作品です。立川志の輔の創作落語『伊能忠敬物語 -大河への道-』を原作としています。果たして伊能忠敬の物語が大河になるのか。伊能忠敬は全然出てこないんですよ。もし大河になるとしたら、地図を作り始めるまでが長そうです。
2024/08/29
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タイトルになっている『怪物』とは誰のことなのかと思いながら見ました。同じ出来事を別の三人の視点から描いて次第に真相が明らかになっていきます。いい人そうな人物の『怪物』の一面が表面化したり、それぞれの視点で『怪物』が入れ替わっていくサスペンスのような興味深い映画です。麦野沙織(安藤サクラ)は、小学5年生の息子・湊(みなと)とベランダから近所の火事を眺めていました。夫が不倫旅行中に事故で亡くなったことを隠していて、息子には普通の大人になって欲しいと女手一つで頑張っています。しかし湊の靴が片方なくなっていたり、怪我をして帰って来たりするので、学校でいじめに遭っているのかと心配します。しつこく問いただすと、担任が『お前の脳は豚の脳だ』と言って殴ったと言います。シングルマザーである事で甘く見られたくない沙織は学校に抗議に出かけました。担任の保利先生(永山瑛太))はガールズバー通いをしているらしいという噂まで聞いて黙っていられません。事を荒立てたくない校長は無表情に謝るばかり。担任も教頭らに言われて頭を下げますが、反省の色が全く見えないので納得がいかないまま何度も学校に押しかける沙織。保利先生は『怪物』なのか、学校側としては逆に彼女がモンスター・ペアレントですね。次に保利(ホリ)先生の視点で描かれます。火事の日、保利は彼女と一緒にいました。二人を見かけた誰かが、派手ななりの彼女をガールズバーのスタッフと勘違いしたのかもしれません。とても真面目で子供好きな、はっきり言っていい先生です。学校に押しかけて来た母親に説明もさせてもらえず、黙って謝れというのは事を荒立てたくない校長側の指示でした。無表情な校長(田中裕子)が、次第に怪物に見えてきます。机に飾った孫の写真、夫が誤って轢き殺し刑務所に入っていますが、実は彼女が真犯人ではという噂も。学校をスキャンダルから守るためなら何でもする怪物です。保利は追い詰められ、屋上のヘリに立って音楽室から聞こえる管楽器の奇妙なメロディを聴いていました。それを吹いていたのは校長です。罪のない先生を破滅に追いやってしまった湊もそこにいました。湊と同じクラスに星川依里(ほしかわ より)という、いじめられっ子がいました。家ではシングルファーザーの父親に虐待を受けていて、化け物呼ばわりされています。湊は依里と気が合ったんですが、クラスでいじめに遭いたくないので仲がいいことは隠していました。3つ目の視点は湊です。ここで全てが明らかになっていきます。『怪物』は、2023年の日本映画です。監督は是枝裕和、脚本は坂元裕二で、第76回カンヌ国際映画祭の脚本賞とクィア・パルム賞を受賞しました。2023年3月に亡くなった坂本龍一が音楽を担当していて、これが遺作だそうです。長編アニメ『Monster』の実写版かと思っていたんですが、全く別物でした。面白かったです。昔『おしん』を演じて日本中を泣かせた田中裕子の演技が凄いと思いました。
2024/08/28
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20世紀最高のバッハの演奏家、ジョアン・カルロス・マルティンスの伝記映画を観ました。あまりにもドラマチックなので実在人物とは思えませんでしたが、現在84歳。最後に本人のオーケストラとの共演が映し出されて、ピアノを弾く生き仏のような微笑みに心打たれました。音楽家を目指していた父親の影響で幼い頃からピアノを弾くようになったジョアンは、先生が与える課題を常人の数倍のスピードでこなしていきます。ブラジル・サンパウロ生まれですから、子供たちはみんなサッカーで遊んでいました。ジョアンは学校でいじめられても、サッカーが出来なくても、ピアノを続けて9歳でブラジル・バッハ協会のコンペで優勝。20歳でニューヨークのカーネギーホールで演奏デビューを飾り、天才ピアニストと評されます。ELPのキーボーダー、キース・エマーソンが尊敬するピアニストだったのもこの映画で知りました。『あなたのその指を動かしているのは天使か、悪魔か』って聞くんですよ。結婚して子供も産まれ、世界中で演奏活動を行って順風満帆だったジョアン。大ファンだった地元のサッカーチーム・ポルトゥゲーザがニューヨークに来ていると有頂天になって、練習試合に参加させてもらって右腕に石が刺さる大怪我を負います。神経にダメージを負って右指3本が筋萎縮して使えなくなり、金属のギブスをはめて演奏会を続行するんですが悲惨な光景でした。叩きつけるようにピアノで超絶スピードのバッハのオルガン曲を弾くので、ギブスが指に刺さるんですよ。ピアノで生きていけなくなったジョアンは、実業家になってある程度の成功を収めました。しかし心の奥にある音楽への想いは消えることなく、辛いリハビリを乗り越えて復帰するんです。無音ピアノで練習していると近所から『タイプライターの音がうるさい』と苦情が来ました。どうせ苦情が来るならとピアノを弾き始めると『もっと聞きたいから窓を開けて練習してくれ』と言われます。カーネギー・ホールでの復帰公演は大反響。バッハの鍵盤楽曲全てを録音してリリースする偉業も成し遂げますが、まだ後遺症に苦しんでいました。彼の試練はこれで終わらないんです。ツアー中にブルガリアで暴漢に襲われ再び右腕が使えなくなってしまいます。それでもめげずにラヴェルの『左手のためのピアノ協奏曲』を提げて公演を続けました。このあきらめない男、本当に凄いです。左手を酷使しすぎたのかついにピアノが弾けなくなってしまうんですが、指揮の勉強をして指揮者として再起を図るんですね。『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』(原題:João, O Maestro)は2017年のブラジル映画。監督はマウロ・リマで、映画の中で流れる曲は全てジョアン・カルロス・マルティンス本人の音源を使っています。最後に流れた映像では、指3本でピアノを弾いていい笑顔でオーケストラと共演していました。こういう人をレジェンドと呼ぶんだろうと思いましたね。オススメです。
2024/08/26
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親善使節団を派遣するため、オスマン帝国海軍の軍艦エルトゥールル号は、618名の乗組員と共に1890年(明治22年)に日本へやってきました。明治天皇への謁見を果たし、帰国の途についた矢先、和歌山県串本町沖で台風に遭い座礁。紀伊大島の村民たちは、嵐の中、全員総出で救助に当たります。この実話はどこかで聴いたことがあって、トルコ人は親日家が多いと記憶していました。1890年といえば、オーストリア=ハンガリー帝国の時代です。軍艦は蒸気機関を備えた帆船で、トルコからインドを回って日本まで、普通に往復しても2年かかります。命懸けですよね。エルトゥールル号はかなり老朽化が進んだ軍艦でした。座礁したことで機関室が浸水し、大爆発を起こして、ムスタファ大尉(ケナン・エジェ)含め、この海難事故で生き残ったのは1割ほどだったようです。医師の田村(内野聖陽)は助手のハル(忽那汐里)と共に負傷者の手当てに奔走します。外人なんて、見るの初めてだったでしょうね。田村先生がなんで英語話せたのかもちょと不思議でしたが。ここは漁村で、昔から海で困っている人を助けるのは当たり前という心情が体に染み付いている村人たちでした。怪我人を収容して貧しいながらも食糧を工面し、漁を休んで遺留品や遺体を回収。ボランティア精神というより、神様、仏様のような人々でした。舞台は1985年(昭和60年)のテヘランに変わります。イラクのサダム・フセイン大統領が停戦合意を破棄してイランに一斉攻撃を宣言します。取り残された自国民を救出するべく各国が手を尽くす中、日本は飛行機を派遣できず、多くの日本人が戦場に取り残されることになってしまいました。たまたま友人を訪ねた人もいれば、仕事で滞在していた人、日本人学校の生徒たち、大使館員も。絶望的な気分で空港に取り残された日本人約300名を救ったのは、トルコでした。救援機を送ってくれたんです。空港で待機していたトルコ人たちは自国民を優先しろと騒ぎ立てますが、トルコ大使館の人がみんなを説得するんですね。日本人に飛行機を譲ろうと。そしてトルコの人たちが、ゲートに向かう道をさーっと開けてくれるんです。モーゼが海を割った時みたいに感動します。日本人学校の先生(忽那汐里)とトルコ大使館員(ケナン・エジェ)は、生まれ変わりだったんでしょうかね。『海難1890』は、2015年制作の日本・トルコ合作映画。日本とトルコの友好125周年を記念した作品です。 第39回日本アカデミー賞10部門で受賞しました。トルコ人ていい人だなあと思いましたよ。全員がそうじゃないかもしれませんが、そう思いました。この映画を見たトルコ人は、日本人ていい人だなあと思ってくれると思います。いい映画でした。オススメです。
2024/08/22
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タイトルを見て、怪談話かと思いました。骨壺を抱えて、亡霊のようにゆらゆら歩いている男がいます。『変なやつ』と都会なら見て見ぬふりかもしれませんが、熊本豊前街道の温泉町では違います。気のいい地元の人々が、手を替え品を替え、彼に『生きよう』と言ってくれるんですね。骨壺を抱えて彷徨っていたのは、美術教師だった市井祐介でした。美人の奥さんを亡くし、生きる意味を失って死に場所を探しています。山鹿(やまが)灯籠まつりは毎年お盆の時期に開催される伝統行事でした。祭りのポスターの灯籠娘、涼しげな目元が奥さんに似ています。祭りで使われる灯籠は、女性が頭に乗せて踊るものなんですが、骨となる木や金属を使わないで紙だけで作るので非常に軽いものらしいです。細かい網目状の細工など灯籠の製作にはかなりの技術と手間がかかりそう。師匠について修行する必要がありました。灯籠師見習いをしている直樹という青年が、とってもお節介でいい人なんです。生気のない市井に食べ物を与え、寝るところも温泉券もあげて、仕事も世話します。美術教師ですから灯籠も作れるんですよ。そんな姿を草葉の陰から亡くなった奥さんが見てるんです。やっぱり怪談だったか。一年経ってそろそろ街を出ようと考えだしたところに、なんと妻ゆかりと瓜二つの女性がやってきます。スペインから来た、ゆかりの双子の妹だと言います。彼女は千人灯籠を踊るために来たと言いますが、亡き姉のことを話して欲しいと市井に頼むんです。深い孤独に沈んでいた彼の心が、妻の話をすることで少しずつ溶けていきました。こちらは今年、2024年8月16日に行われた千人灯籠の様子です。『骨なし灯籠』は、木庭撫子監督・脚本で2024年公開の日本映画です。ご当地で異例の大ヒットだったそうで、その魅力は日本各地に飛び火しています。怪談ぽくない人情もので、心に沁みます。オススメです。
2024/08/18
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今日は79回目の終戦記念日です。人生100年時代と言われますが、現役世代のことではなく、戦中戦後を生き抜いてきた生命力のある方々が日本人の平均寿命を引き上げておられるだけなのかもしれないと思ったりします。今日ご紹介するのは終戦間近の日本にタイムスリップした女子高生の話です。恋した男性は特攻隊員でした。高校生のユリが、母親と喧嘩して近所の防空壕で一夜を過ごしたのがきっかけでした。目を覚まして外に出ると、景色が一変しています。そこにあったはずの住宅街がない…。携帯も繋がらないし、すれ違う人々の服装も変。飲まず食わずで倒れかけた百合を救ったのは、通りかかった日本兵アキラでした。女将ツルが切り盛りする食堂で食事を与えられ、目にした新聞の日付が昭和20年6月10日であることに驚きます。行き場のないユリは、住み込みでツルの食堂の世話になることになりました。助けてくれたアキラは特攻隊員で、同じ航空隊に所属する石丸、板倉、寺岡、加藤たちと出会います。もうすぐ敗戦ということを知っているユリは、命を捨てて国を守ろうとする男たちに複雑な思いを抱いていたと思います。特攻の母と呼ばれた食堂経営者は実在人物だそうです。戦争孤児の少年を庇って反戦的な態度で警官に殴られそうになった時も、買い物途中の空襲で動けなくなった時も、アキラが現れて助けてくれました。アキラはユリを故郷に残した妹のようだと可愛がってくれて、一面の百合の花の咲く丘に連れて行ってくれます。ユリは次第にアキラを慕うようになっていました。そして終戦の日直前、ついに出撃命令が…。『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は、汐見夏衛の小説を実写映画化し、2023年に公開された成田洋一監督作品です。原作ではユリは中学生という設定のようです。昨日のニュースで、戦没者遺骨収集団の話を見ました。アンガウル島で発見された遺品のたばこ入れに、美しい女性の写真が見つかって、情報提供を呼びかけていました。戦時中にはこんな、たくさんの悲しい別れがあったに違いありません。いまも、世界のどこかで同じ苦しみが繰り返されていると思うと悲しい気持ちになります。
2024/08/15
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災いは死者の国・常世(とこよ)からやって来る。後ろ戸と呼ばれる扉を通じて巨大なミミズ雲となって現世に湧き出し、それが地上に倒れると地震災害をもたらすとされています。先週2024年8月8日に日向灘を震源とするマグニチュード 7.1の地震が発生して、宮崎県日南市は震度6弱を観測。一週間ずっとテレビの端に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の文字が出ていて、この映画の話が妙に現実味を帯びてきた気がしました。主人公のスズメが美しい港を望む坂道を自転車で通学するシーンから始まるんですが、その港は日南市の油津港がモデルになったと言われています。高校への通学途中、岩戸 鈴芽(スズメ)は見知らぬ青年に廃墟の場所を尋ねられます。日本各地にある後ろ戸を、祈りと共に閉めて回る『閉じ師』という仕事を代々受け継いできた大学生の草太でした。別れた後、気になって廃墟に向かったスズメは、そこに不思議な扉を見つけます。そして災いを封じ込めていた要石を誤って抜いてしまうんです。要石は猫の姿となって逃亡。学校に戻ったスズメは、クラス中の携帯から鳴り響く緊急地震速報と共に、巨大なミミズ雲が空に立ち上がっていくのを見て慌てて廃墟に走りました。そこには必死に扉を閉めようとしている草太。普通の人には見えない常世のものが、スズメには見えたんですね。力を合わせてなんとか封じ込めたものの、要石を戻さないことには災害は続きます。スズメは4歳の時に東北大震災で母親を亡くし、宮崎に住む叔母に引き取られていました。震災直後に常世に迷い込んだことがあって、そのせいで人の見えないものが見えるようになった様子。要石の猫は可愛いので『ダイジン』と呼ばれてSNSに投稿されていました。それを頼りにスズメと草太は四国から関西を経て東京、そしてスズメの生まれ故郷である東北まで旅することになります。旅の先々でミミズは出没し、その度に大変な思いをして扉を閉めてい行きました。草太がいるのになぜスズメも一緒に旅することになったのか。『ダイジン』は神獣で、『スズメのこと好き。お前きらい。』と言って、草太は子供用の椅子にされてしまうんです。『閉じ師』として全然役に立たなくなっただけでなく、『お前が要石になれ』と言って常世で凍らされてしまいます。戸締りは、素人のスズメには手に余る仕事です。家を出たきり帰ってこないスズメを心配して、宮崎から叔母さんも駆けつけて来ました。果たしてスズメに草太は救えるのか。愛媛、神戸、東京を大災害から救えるのか。『すずめの戸締まり』は2022年に公開されたアニメ映画です。脚本・監督は新海誠。映像が美しい、スペクタクルなSFファンタジーでした。
2024/08/14
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黒澤明監督の名作映画『生きる』のイギリス版リメイクです。元の作品を見ていなかったので、物語も何も知らずにこの映画を見たんですが、心に沁みるいい話でした。舞台は1953年のロンドン。紳士たちは帽子を被り、蒸気機関車で通勤しています。ピーター・ウェイクリングは市役所の市民課に就職し、その初日でした。ウィリアムズ課長は厳格な人で、市民課の部下たちは一目置いています。みんなの机の上には未処理の書類が山積みで、それが忙しい言い訳となっているようでした。ピーターは初日から、お役所仕事の洗礼を受けます。資材置き場を公園に変えて欲しいという陳情書を持ち込む婦人たちと一緒に、役所内の様々な課をたらい回しにされ、結局市民課に差し戻されるとウィリアムズ課長は当然のように書類を未決の棚に放り込みました。ウィリアムズ課長は胃の調子が悪かったようで、検査結果を聞きに医師を訪ね、末期ガンで余命半年と言われてしまいます。どうして良いか分からず、病院の待合室で女性たちの話題に上っていたリゾート地ボーンマスへ、初めて仕事をサボって出かけるんです。ボーンマスって、毎年UK戦が行われるところですよね。そこで知り合った作家の男に案内され酒場やストリップ小屋を渡り歩きますが、全く気持ちは晴れませんでした。ロンドンに戻っても仕事に行く気が起きず街を歩いていると、転職を考えている部下のマーガレットに見つかってしまいます。彼女は生気に溢れていて、推薦状を書いてもらおうとウィリアムズ課長が職場に戻るのを待っていたんです。ランチを共にし話をするうちに、堅物のウィリアムズ課長は心を開いていくんですね。息子夫婦にさえ言えない自分の病気のことを話すんです。これがきっかけとなって、ウィリアムズ課長は仕事に復帰します。残りわずかな命を燃やして、今まで保留にし続けてきた仕事に真摯に取り組んでいきます。人間覚悟を決めるといろんなことができるものなんでしょうね。先がないと分からないと、先延ばしにしてしまいがちです。夏休みの宿題のように。『生きる LIVING』(原題:Living)は、2022年のイギリス映画です。映像が古そうに見えたので、昔の映画なのかと思いました。世界の黒澤の名作をどうアレンジするのか、ハードルは高かったはずですが、脚本をノーベル文学賞受賞のカズオ・イシグロが務め、オリバー・ハマーナス監督が見事に料理しました。主役を演じたビル・ナイも、市民課のメンバーもいい味出してましたね。自分だったら余命6ヶ月と言われた時どうするだろうと考えました。いい映画でした。心を潤す名作映画
2024/07/24
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ジョンは野生動物番組などのTVカメラマンでした。モリーは、料理研究家。夢は郊外の農場でいろんな果物や野菜を育てながら暮らすことです。二人は結婚して都会の小さなアパートに住み、トッドという名の保護犬を引き取ります。トッドは二人が留守の間、一日中でも吠え続け、その声がうるさいとアパートを追い出される羽目に。一生トッドの面倒を見ると誓った二人、ついに都会を捨て郊外で農場を始める決意をしました。二人とも農業未経験者ですからすごく大変なんですよ。投資家を募って200エーカーの土地を手に入れたものの、何から手をつけていいのか全く分かりませんでした。200エーカーってどのくらい広いのか思い浮かばなかったんですが、ディズニーランドとディズニーシーを合わせて大体250エーカーくらいだそうです。乾燥した土は硬く、荒廃して、とても作物を育てられそうもありません。モリーがインターネットで探し当てたのはアラン・ヨークという再生型農法の巨匠でした。再生型農法というのは、農場の中で生態系を維持した一つの世界を作る、最近よく耳にする持続可能な循環型社会の農業版みたいなものでしょうか。アランのアドバイスに従いミミズを買ってきて、まず土づくりから始めます。アランが動物買えとか鳥買えとか平気で言うので資金がどんどん目減りしていきました。ジョンは自分たちの奮闘を映像に収めてこのドキュメンタリー映画を制作していきます。トッドは大好きなジョンとモリーとずっと一緒にいられてのびのび暮らせる農場が気に入ったようでした。鶏たちはたくさんの卵を産み、売れ行きも上々。貯水池にはカモが泳ぎ、柵の中で羊たちが遊び、豚は17匹も子供を産みました。しかし、いいことばかりじゃないんです。コヨーテの群れが夜更けに羊や鶏を襲い始め、桃やアプリコットの果実は野鳥の群れの餌となり、レモンの木は大量のカタツムリにやられます。無農薬なのでアブラムシなどの害虫も果樹にたかり、雨が降らなくなると貯水池には藻が大量発生して水鳥たちの餌となる魚が酸欠で死にました。さらに悪いことに、師匠であるアランが癌で亡くなってしまうんです。自然の力は偉大ですね。アランの予言通り、数年経つとアブラムシを食べるてんとう虫たちがやってきました。ミツバチも花を求めて集まってきて、養蜂もできるようになります。カモたちがカタツムリを大量に食べてくれて、駆除する必要がなくなりました。羊たちは果樹園の下草を食べ、そこで糞をするのでますます土が肥えていきます。野鳥たちの天敵タカやフクロウも住み着いて、8年目には生態系のバランスが取れてくるんです。『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』(原題:The Biggest Little Farm)は、農場主のジョン・チェスターが自ら監督を務めた2018年のアメリカのドキュメンタリー映画です。動物たちや美しい農場の様子がイキイキと映し出されていました。こう言った農場生活に憧れる人は結構多いんじゃないかと思いますが、楽じゃなさそうですね。山火事なんかもあったりして、積み上げてきたものが一瞬にして飲み込まれる危険性も孕んでいます。素敵な映画でした。おすすめです。
2024/07/21
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音楽もののアニメ映画は、登場人物が天才であることが多いので、その演奏を聴くとき無意識に高い期待を持ってしまいます。ジャズは、私の中ではよくわからない音楽なので、それほど多大な期待はしていなかったんですが、演奏を聴いて鳥肌が立ちました。誰が演奏しているのか気になって、最後までテロップを見たんです。オリジナル曲を作っていたのはジャズピアニストの上原ひろみさんでした。主人公の宮本 大(みやもと だい)は仙台出身の18歳。高校を卒業すると、サックスプレーヤーを目指して上京します。行くあてもないので東京の大学に進学した同級生の玉田 俊二(たまだ しゅんじ)の部屋に転がり込みます。初めて訪れた小さなジャズバー「TAKE TWO」の店主アキコに教えてもらって行ったライブハウスで、才能あるピアニスト沢辺 雪祈(さわべ ゆきのり)に出会いました。雪祈も大を逸材と認め、アキコの店を営業時間以外使わせてもらって一緒に練習する事になるんです。大は初心者の玉田にバンドでドラムをやってみないかと勧誘。雪祈は大反対しますが、玉田は必死に練習に励み、バンドのクオリティに食らいついて行きました。目指すは憧れのライブハウス「SO BLUE」出演。18歳の三人で結成したトリオ「ジャス(THE JASS)」は、どんな風に成長していくでしょうか。JASSの演奏は、先にプロの演奏(サックス:馬場智章、ピアノ:上原ひろみ、ドラム:石若駿)を録音してから映像を作ったそうです。本当に演奏はすごいです。『BLUE GIANT』(ブルージャイアント)は、石塚真一、NUMBER8による日本の漫画作品を原作としています。ジャズに興味ない方も、騙されたと思って聴いてみてください。きっと感動しますよ。
2024/07/12
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アルトゥーロは三ツ星レストランの一流シェフでした。料理界のレジェンドである巨匠チェルソの愛弟子で、腕は確かなんですが気性が荒いんです。そのせいで何度か傷害事件を起こしては服役。今回の仮出所では社会奉仕活動として、施設の若者たちの自立支援のために料理を教えることになりました。サン・ドナート園にはアスペルガー症候群の青年グイドがいます。とても繊細で誰かに触れられることを極端に嫌がりますが、彼には絶対味覚がありました。使用したオリーブオイルボトルに入っていたローズマリーまで完璧に言い当てるほどです。アルトゥーロを師匠と仰いで料理を学んだグイドは、トスカーナで開かれるコンテストに出場することに。アルトゥーロも同行することになります。気の短いアルトゥーロに繊細なグイドを任せて大丈夫なのか。コンテストを主催するのはテレビでもお馴染みの人気シェフ・ダニエル。彼はアルトゥーロの宿敵のような男で、傷害事件の発端でもありました。何かが起こりそうな気配です。サン・ドナート園で働く心理学者のアンナも、連絡がつかなくなった二人を心配して会場に駆けつけます。ちょうどこのタイミングで、アルトゥーロにも自分のレストランを持つチャンスが巡ってくるんです。ミラノで開かれるパーティをシェフとして成功させれば資金提供するという話が。そのパーティは、グイドの決勝戦の日と同じでした。アルトゥーロは料理界の巨匠チェルソにグイドを頼み、会場を後にします。『トスカーナの幸せレシピ』(原題:Quanto basta)は、2018年のイタリア・ブラジル映画です。監督はフランチェスコ・ファラスキ、アルトゥーロ役はヴィニーチョ・マルキオーニ、グイド役はルイジ・フェデーレでした。アルトゥーロは人間味あふれるお父さんのようで、グイドも彼のことを心底信頼しているようでした。原題の『Quanto basta』はイタリア語で『適量』の意味だそうで、それが理解できなかったグイドも人間関係を積み重ねるうちに学び取っていくんです。とてもいい映画でした。オススメです。
2024/07/02
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江戸時代に数学が得意な少女がいました。いつの時代でもいるとは思いますが、安永4年(1775年)に出版された数学書が残っているんです。国会図書館で閲覧できるようですよ。遠藤寛子の児童文学『算法少女』は、この史実を元にした物語で1973年に出版されました。今日ご紹介するのは、その児童文学書を原作として2015年にアニメ映画化された作品です。主人公は13歳の少女、千葉アキ。数学の天才でした。師匠は父親で、算法好きの町医者。新しい算法を学びたいと上方から江戸へやって来ましたが、算法最大流派である関流に、流派が違うとかで入門を断られて独学で学んでいます。人情に厚く、貧乏な庶民を無料で診てあげていたので家計は逼迫していました。江戸時代には、幾何学問題などの解法を額に記して神社仏閣に納める算額というのが算法好きの間で流行っていたようです。アキが友達と浅草寺に出かけて、ちょうど関流に学ぶ武士が算額を掲げているところに出くわすんですね。一瞬にして誤りに気付いたアキが、ついポロっと指摘してしまったせいで面倒なことに。このお侍は関流トップの直弟子で、身分もそこそこ高かったのでプライドも高く、さらっと流そうとするアキに食い下がってくるんですよ。仕方なく天才ぶりを発揮して誤りを指摘すると、集まっていた聴衆も感心して、その噂は算法家としても知られる藩主にまで届きます。アキをぜひ姫君の算法の指南役にしたいという話が舞い込んできて、これで家計も楽になると両親は大喜び。お城勤めになど興味のないアキでしたが、近所の子供達に無料で算法を教える塾を開く夢を叶えるためにお金が必要でしたので渋々承知します。しかし恥をかかされた関流も黙っていませんでした。関流の面子を守るため、算法に長けたもう一人の少女ウタをアキと御前勝負させるんです。97分と短い映画なんですが、面白かったのでさらに短く感じました。13歳の娘に算法書を書かせようとする父親もすごいなと思いましたね。アキとウタの勝負も三角法とか使ったりして、レベルが高いんですよ。最近のアニメとは全然違ったレトロ感溢れる画風も素敵でした。おすすめです。
2024/07/01
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素晴らしい歌声で世界中を魅了してきたセリーヌ・ディオン。ラスベガスのステージで今も活躍していると思っていたんですが、難病と闘っていたんですね。彼女の闘病生活とこれまでの音楽人生を綴ったドキュメンターリー映画を見ました。セリーヌはカナダの東に位置するフランス語圏ケベック州で、14人兄妹の末っ子として生まれました。あの歌声の遺伝子を持つ人が14人もいるなんてね。金髪かと思ってましたが元々は黒髪で、彼女の息子たちが黒髪な訳が分かりました。子供の頃から歌の才能が突出していたようで、後に夫となるルネ・アンジェリルがマネージャーとなって世界に打って出るんですね。最初はフランス語しか話せなかったので、英語を猛勉強したんですって。大ヒットとなった映画タイタニックのテーマ『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』をはじめ、数々のヒット曲を持つ世界的歌手になりました。癌を患っていた夫との時間を大切にしたいと芸能活動を何度か休止しますが、基本的にはラスベガスのステージに立ち続け、その間に徐々に病気は進行して行ったようです。最初は原因不明の声が出しにくくなる症状だったのが、次第に痛みを伴う筋肉の硬直や痙攣となって、進行性の自己免疫系神経疾患『スティッフパーソン症候群(SMS)』と診断されたことを2022年に発表。ツアーやコンサートを全てキャンセルして闘病生活に入りました。大きな音や人との接触で誘発され悪化する100万人に一人の難病だそうです。1968年生まれ、現在56歳。『走れないなら歩く、歩けないなら這ってでも前進あるのみよ。』歌への情熱は衰えていないようで、声帯が硬直して掠れ気味の声でレコーディングに挑んでいました。自分はりんごの木だと言っていましたね。ファンたちは美味しい果実を求めて並び、美しいりんごに手にして満足して帰り、また同じものを求めて並ぶ。りんごの木には実が少なくなり、やがて枯れるけれど、それでもファンたちはりんごを求めて並ぶのだと。涙を流しながら全身の硬直と顔面の痙攣に耐えている彼女は本当に辛そうでした。もう頑張らなくていいのにと思ってしまいましたが、2024年グラミー賞のプレゼンターにサプライズ出演されたそうです。このドキュメンタリー映画に合わせて、サントラ兼ベスト盤が発売されました。『アイ・アム セリーヌ・ディオン ~病との戦いの中で~』(原題:I Am: Celine Dion)は、2024年製作のカナダ映画です。監督はアイリーン・テイラー。華やかなステージシーンや若い頃の映像も交えた感動的なドキュメンタリーでした。
2024/06/29
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キリスト教の巡礼地として有名なのは、エルサレム、ローマ、そしてサンティアゴ・デ・コンポステーラです。巡礼者たちの目的はさまざまだと思いますが、大好きなワーグナーのオペラでは、中世の騎士タンホイザーが、犯した罪を許してもらうために聖地ローマを目指して巡礼の旅に出る姿が描かれていました。この映画では、疎遠だった一人息子ダニエルが、自分探しの旅で聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう途中に亡くなったとことろから始まります。父親のトムは、息子の遺体を引き取りにアメリカからスペインへやってきました。トムは息子の死と向き合うために、彼の遺品となった旅道具と遺灰を持って、息子に代わって巡礼の旅を始めるんです。ピレネー山脈を超え、徒歩で約800キロの遠い旅路です。息子が40歳と言ってましたから、トムは60代か70代くらいなんでしょうね。四国八十八ヶ所巡りにちょっと似てるかなと思ったのは、道の途中に巡礼者が泊まれる場所が用意されていたり、お接待のような地元の人たちの援助があるんですね。それでも時には野宿したり、荷物を盗られたり、いろんな事件が起こります。トムは、ずっとそばに息子のダニエルがいるように感じていました。カリフォルニアで眼科医をしていたトムは、硬く心を閉ざしたまま黙々を旅を続け、要所で息子の遺灰を撒きながら聖地に向かっていました。いろんな巡礼者がいるんですよ。出身国も様々です。ダイエットや禁煙目的だったり、スランプから脱出したい作家もいました。みんな目的地は同じで道は限られていますから、何度も顔を合わせるんです。次第に打ち解けて、旅の仲間になっていくんですね。ずっと難しい顔をしていたトムが、最後にはみんなと笑い合っているシーンが印象的でした。『星の旅人たち』(原題:The Way)は、2010年のアメリカ・スペイン合作映画です。旅の途中でも時々幻として登場する息子ダニエルが、父親役のマーティン・シーンによく似てるなと思っていたら、実の息子さんでした。息子役のエミリオ・エステベスが監督・脚本・製作を務めていて、実父マーティン・シーンを主演に起用したとのこと。心温まるいい映画でした。オススメです。
2024/06/21
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プロのギャンブラーは、それで生計を立てられるものなんですね。カード・カウンティングという勝率を上げる方法を使っていました。『ラスベガスをぶっつぶせ』という映画でも使われてましたね。現在は禁止されているそうですが、頭が良くないとできない方法だと思います。映画の主人公はウィリアム・テルと名乗っていました。本当に歴史的弓の名手と同じ名前なのか不明ですが、服役している間に独学でカード・カウンティングを身につけたようです。元はイラク戦争に出征した軍人で、上官に命じられて罪を犯し、言ってみれば上官の身代わりとして服役させられていたわけです。当然、その恨みは忘れていません。ある日、ウィリアムはギャンブル・ブローカーのラ・リンダという女性に出会います。大金が稼げるというポーカーの世界大会に参加してみないかと。カード・カウンティングはブラックジャックだけじゃなく、ポーカーにも使える手なんでしょうかね。あまりその辺り詳しくないのでなんとも言えませんが、ウィリアムは順当に勝ち上がっていきます。しかしその大事な局面で、ウィリアムにとって特別な事態が発生するんです。自分をハメた上官へ復讐のチャンスが。大金か、復讐か。人生の一大選択に迫られます。『カード・カウンター』(原題:The Card Counter)は、2021年のアメリカ映画です。ポール・シュレイダー監督・脚本、マーティン・スコセッシ製作総指揮。名作タクシー・ドライバーのコンビですね。R15のシリアスなスリラー映画でした。この映画でカード・カウンティングを編み出したエドワード・ソープに興味を持って、関連の本を読みました。ソープは大学で数学講師をしていた時にブラック・ジャックの必勝法を数学的に編み出し、ギャンブル界に永遠にその名を残します。その後、ヘッジ・ファンドのマネージャーになるんですが、確率的に有利でない勝負はしない方針で億万長者になります。現在91歳。健康長寿に対する向き合い方も合理的で、新型コロナの感染拡大もいち早く予想し対策をとったとのことでした。
2024/05/31
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水木しげる生誕100年記念として制作された映画作品です。鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎(ゲ謎)は、目玉だけになる前の鬼太郎の父親の物語。行方不明となった妻の岩子を探してやってきた哭倉村(なぐらむら)での出来事が綴られています。職場の友人に勧められて見たんですが、水木しげるの大ファンの大将はコミックをどっさり集めていてこれもチェック済みとのこと。ホラー映画が嫌いな私には向かないんじゃないかと言っていました。登場する鬼太郎やネコ娘が、昔と比べて随分洗練された姿になっています。妖怪や幽霊は歳をとらないんでしょうね。現在は廃村となった哭倉村、物語は70年前、昭和31年へと遡ります。政財界を牛耳っていた龍賀一族の当主、龍賀時貞(りゅうが ときさだ)が亡くなります。水木は東京で血液銀行に勤めるサラリーマンで、一族の経営する製薬会社・龍賀製薬の担当者でした。昔は献血なんてなくて、血は売買するものだったんですね。後継者になると予想される龍賀製薬の社長とはコネがあったので、出世したい水木は一族が暮らす哭倉村へと向かいました。電車じゃなくて蒸気機関車です。クーラーもないし、車内禁煙でもない時代。まだ戦争の影を引きずっている人が多く、水木自身も玉砕特攻をかろうじて生き延びた辛い戦争体験を背負っています。穏やかな田園風景とは裏腹、哭倉村は閉鎖的な村でした。亡くなった当主の孫にあたる若く美しい娘・龍賀沙代(りゅうが さよ)が登場した時、金田一耕助シリーズの『犬神家の一族』を思い出しましたよ。後で知ったんですが、企画の段階で『八つ墓村』の話題が出てこの映画の方向性が決まったそうです。龍賀一族が勢揃いした場で発表された遺言は、長男の時麿(ときまろ)が当主となると言うものでした。水木が次期当主に期待していた社長は長女の婿養子で、一族の中での地位は低かったようです。時麿は引きこもりの病弱な男で、莫大な財産をどうこうできる気量に恵まれませんでしたので、兄弟姉妹からは非難轟々でした。翌朝、時麿の惨殺死体が発見されます。犯人として捕らえたのは、村にたまたま来ていた鬼太郎の父でした。すぐに処刑されそうになった彼を助けた水木は、監視役を命じられます。名前を言わないので、水木は便宜的にゲゲ郎というあだ名をつけました。凄惨な殺人事件はその後も続きます。水木は出世のために葬式に来ただけではなく、一族が莫大な財産を築いた血液製剤Mについて調べると言う会社からの密命も帯びていました。どうも覚醒剤の一種らしく、摂取すると24時間働けるので戦時中、多く使用されたようです。ゲゲ郎と水木の関係は、犯人と監視役から友人へと変わっていきました。行方不明の妻は身重らしいです。鬼太郎のお父さんは、奥さんの岩子さんをすごく愛してたんですね。こなきジジイと砂かけばばあとの間にも、むかしロマンスが生まれてたっけ。鬼滅にしろ呪術廻戦にしろ、最近のアニメは血みどろのR12が多いし、歴史ドラマでドロドロの人間関係には免疫ができていますので、ホラーは苦手ですけど大丈夫でした。大将ほど大好きってわけじゃありませんが、水木しげるさんの出身地にある水木しげるロードにも行ったことがありますし、妖怪話も嫌いじゃありません。色んな可愛い妖怪たちも出てきます。ねずみ男の子供時代?みたいなのも登場しますよ。公式サイトはこちらです。
2024/05/16
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自分の部屋がどこか別世界に通じていて、心から歓迎してくれる友達が待っている。そんな現実逃避できる場所があったらいいでしょうね。誰だって逃げ場は必要です。特に、いじめや家庭内に問題を抱える子どもたちにとっては。中学生の安西こころは、いじめが原因で不登校になり、フリースクールの北島先生が気にかけてくれますが引き籠もり生活を続けていました。ある日、部屋の鏡が光り出して吸い込まれ、絶海の孤城に迷い込みます。狼の面をつけた少女が、自分をオオカミさまと呼べといい、6人の中学生リオン、フウカ、スバル、マサムネ、ウレシノ、アキが彼女を待っていました。ここで達成すべきことは一つ。城に隠された鍵を見つけることです。それは願いの部屋を開ける鍵で、一つだけどんな願いでも叶えられますが一人だけに限られ、誰かが願いを叶えると全員の記憶が消えるといいます。この城に来られるのは1年間で、朝9時から午後5時までなら鏡を通じて出入り自由でした。もし午後5時を超えて城に1人でも残っていると、連帯責任でその日城にいたメンバーは狼に喰われるとになっています。鍵が見つからなければ、記憶はそのまま残るということでしょうね。七人は熱心に鍵を探すでもなく、来たいときに城に来て、次第に友達関係を築いていきました。あるきっかけで、全員が同じ中学の生徒だということが分かります。マサムネの提案で三学期の始業式の日に、みんなで学校で集まる約束をしました。全員が約束を守ったにも関わらず、誰も他のメンバーに会えず、パラレルワールドなのかという話になりますが、オオカミサマは違うと言います。果たしてこの城は何なのか、オオカミサマの正体は、そして願いの鍵は見つけられるのか。この話、子ども向けのファンタジーかと割と甘く見ていたんですが、実に深い、よく考えられた物語でした。最後の謎解きに至るまで、伏線がたくさん用意されているんです。城のあちこちにあるバツ印の意味、オルゴールの曲、みんなが学校で出会えなかった理由。北島先生の存在も、キーポイントです。『かがみの孤城』は、辻村深月による日本の小説で、2018年には本屋大賞も受賞しています。2022年公開の劇場アニメ版を見ました。海外でも上映され、数々の賞を受賞する名作です。金の国水の国を見た人におすすめという繋がりで見たんですが、思った以上に素敵な話でしたね。おすすめです。
2024/05/13
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ゴジラ生誕70周年記念作品だそうです。子供の頃はよく映画館に怪獣映画を見に行っていたので、今年、山崎監督がアカデミー賞視覚効果賞を受賞したこの作品にも興味がありました。カラー映像があることを知らずに白黒版ゴジラ-1.0/C(マイナスカラー)を見たんです。シンドラーのリストもそうでしたが、白黒効果で迫力が増した感じ。時代の雰囲気がすごくよく現れていて、映画の世界に没入できました。昔の怪獣映画は主役が子供でしたが、この映画はシリアスな大人向けの映画です。戦後間もない東京の、ようやく復興の芽が出始めた時期に、傷跡をさらに深く抉るように現れる大怪獣ゴジラ。ゴジラは超回復力が備わっていて、ダメージを受けてもすぐに再生するんですよ。核実験から生まれたという話をなんとなく覚えていましたが、この映画では南方の島に伝わる伝説として、すでに核より前から存在していたとされていました。敷島浩一は特攻から逃げた男です。零戦が故障したと言って大戸島の守備隊基地に着陸しますが、その夜、島の伝説・ゴジラに遭遇します。目の前で基地が破壊され、整備兵たちが襲われて行く中、恐怖で何もできなかった敷島。この夜のことは、心に深い傷となって残りました。東京に戻ると、家は焼け落ち両親は亡くなっていました。跡地に残った小屋でかろうじて雨露をしのぎ食料を調達して命を繋いでいた彼のところへ、同じように家族を失い誰かに託された赤ん坊を抱えた典子が転がり込んでくるんです。三人の変な共同生活が始まりました。子供たちを戦争で失った隣の澄子も、事情を知って子守りなどの手助けをしてくれます。敷島は米軍が海中に残した機雷を撤去する、金にはなるが危険な仕事を得ます。小さな木造の漁船を改造した新生丸で、艇長と博士と小僧の四人で作業を行なって、次第に生活も軌道に乗っていきました。ゴジラがなかなか出てこないんですよ。ところが日本から遠いところで大変なことが起こっていたんですね。ビキニ環礁で行われた核実験でゴジラが被爆、超回復力で核を帯びたまま巨大化します。そしてなぜか、日本に向かってくるんです。そこからの攻防は見応えがありますので、是非、なるべく大画面でご覧になって頂きたいと思います。視覚効果で世界一になっただけのことはあります。これまでの怪獣映画に比べると、すごくリアルに感じました。戦後間もない日本の風景も、非常によく再現されています。キャラ登場に合わせた音楽ってあるじゃないですか。ダースベイダーが出てきたらあのメロディーとか。この映画はなかなか耳に馴染むあのボレロが流れないので、ゴジラミュージックが流れた時は、『ついにキター!!』とテンションバク上がりでした。『ゴジラ-1.0』(ゴジラ マイナスワン)は、2023年公開の日本映画です。カラー版は/Cが付いていません。山崎貴監督によるVFXも脚本も見事です。タイトルのマイナスワンは、戦後でゼロになった日本へ、追い打ちをかけるように現れたゴジラがこの国を負(マイナス)に叩き落とすという意味があるそうです。製作費が通常のアメリカ映画に比べてかなりの低予算だったことも話題になっていました。ゴジラの超再生能力、鬼滅の鬼以上です。ゴジラって不死身でしたっけ?これまで何十作品も作られていたのは、そのせいだったんでしょうか。知りませんでした。カラー版も見てみたいですね。
2024/05/07
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貧しいワシントン大学ボート部の若者たちが、ヒトラーのいたベルリンオリンピックに挑み金メダルを獲得。アメリカ人の好きそうな映画だなあと思ったら、なんと実話だそうです。結果は分かってるし、展開もなんとなく想像できましたが、見ると感動します。大恐慌時代のアメリカ。ワシントン大学に通って工学を学ぶジョー・ランツはその日の食事にも事欠くほどの極貧生活を送っていました。母親を幼くしてなくし、14歳で父親にも捨てられて、ボロい車をねぐらとしてアルバイトをしながら学校に通っています。学友たちもみんなブルーカラーの家庭で育った者ばかり。新しいバイトを探していたジョーは、ある日、朗報を耳にします。『ボート部に入れば寮に住めて、金ももらえるらしい。』早速応募してみたものの希望者は溢れるほど多く、強烈に狭き門でした。選抜試験はひたすら肉体を酷使する日々で、脱落者が多く出る中、ジョーは生活のために必死に食らいついていきます。選ばれた8人の中に、ジョーも入っていました。全員ボートの素人ですが、肉体労働で鍛えてきた身体は素晴らしく、練習を重ねるうちにスタメンを凌ぐほどのタイムを出すようになります。オリンピック代表選考を兼ねた全米大学選手権では裕福な強豪校を抑えて優勝。1936年開催のベルリンオリンピックにアメリカ代表で出場することになります。ニュースは新聞やラジオで全米に知られることとなりますが、色々問題が起こるんですよ。ジョーの生き別れの父親が登場して、肝心な場面で動揺してメンバーと息が合わなくなったり。金の問題とか、政治的な問題とか、病気とか、世界一への道は楽じゃありませんね。ボーイズ・イン・ザ・ボート(原題:The Boys in the Boat)は、2023年のアメリカ映画です。ジョージ・クルーニーが監督したスポ根もの。ハングリー精神から生まれた底力、ラストスパートは手に汗握ります。感動この一本 スポーツ映画
2024/04/19
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映画『ロード・オブ・ザ・リング』の原作『指輪物語』を書いたJ・R・R・トールキンの若い頃の伝記映画を見ました。かなり昔の人なんだろうと思っていたんですが、亡くなったのは1973年ということで、思ったよりずっと最近の人なんですね。指輪物語は、大学教授がファンタジーに必要な要素を全部詰め込んで書いた作品と友人から聞いて、本を借りて読んだんですが、最初の方が全然面白くなくて、このまま最後までこの調子だったらどうしようと思った記憶があります。J・R・R・トールキンは12歳で孤児となります。モーガン神父が仲介して裕福な老婦人の家で弟と共に暮らすことになり、名門キング・エドワード校に入学しました。名家の子息しか入れないようなバーミンガムにある男子校です。在学中に、ロブ・キルター・ギルソン、ジェフリー・バッチ・スミス、クリストファー・ワイズマンという生涯の友に出会います。4人は学校のそばのバローズという店でお茶を飲みながら『芸術の力で世界を変えよう』と夢を語り合いました。店の名前にちなんで、T.C.B.S.(The Tea Club, Barrovian Society)という秘密結社を結成します。ロブは音楽で、ジェフリーは詩で、クリストファーは絵画で、そしてトールキンは…。トールキンが世話になっていた家に、3つ年上のエディス・ブラットがいました。彼女も孤児で、老婦人のお気に入りです。二人は心を通わせますが、モーガン神父に21歳になるまで交際を禁じられていたトールキンはその言いつけを守ります。エディスを喜ばせるために一緒にワーグナーのオペラに行くんですよ。席がなくて楽屋裏の道具置き場で聞こえてくる音楽を二人で楽しむんです。演目はニーベルングの指輪、指輪物語に通じる北欧神話が元になっているオペラです。私もワーグナーが大好きですので、ラインの黄金の前奏曲が聞こえてきた時は思わず身を乗り出しましたよ。4人は、オックスフォードとケンブリッジに2人ずつ分かれて進学しました。トールキンはジェフリーと共にオックスフォードで学び、言語学で頭角を表していきます。しかし第一次世界大戦が勃発。仲間たちと一緒に従軍しますが、状況は悲惨でした。トールキンは辛うじて生還しますが、親友たちは戦死します。意識を取り戻した時、病院で彼に付き添ってくれていたのはエディス・ブラットでした。『トールキン 旅のはじまり』(原題:Tolkien)は、2019年のアメリカ映画です。監督はドメ・カルコスキ、主演はニコラス・ホルト。幼い頃に母親が語ってくれた黄金を守るドラゴンの話、オペラの北欧神話、エルフ語の創作や戦争体験、『ロード・オブ・ザ・リング』の原点を見た気がしました。オススメです。指輪物語も、面白くないのは最初だけです。
2024/04/16
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元殺人犯と言うと、ちょっと近づき難いような危険なイメージを持ってしまいます。人生のほとんどを刑務所で過ごして中年を迎え、出所して環境に馴染んでいくのがどれだけ大変なことか。佐木隆三の長編小説『身分帳』を原作とした日本映画で、実在の人物をモデルにした作品だそうです。旭川刑務所で刑期を終え出所した三上正夫(役所広司)は、身元引受人となる東京の弁護士夫妻に会いに行きます。獄中では食べたことのない美味しい家庭料理を振る舞われ、これまで何度も繰り返してきた入出獄を今度こそ繰り返すまいと心に誓います。しかし三上は短気な男でした。ちょっとした理不尽にカッとなり、声を荒げ、手を出してしまいます。仕事にもなかなかありつけず、車の免許も失効していて再試験も難航します。そんな三上にテレビ出演の話が舞い込みました。元殺人犯が社会復帰し、生き別れた母親と再会するドキュメンタリー番組です。三上は母親を探してもらえるならと取材を受けることにしました。取材を担当する津乃田は、身分帳と書かれた三上のノートを受け取ります。彼の生い立ちや犯罪歴、受刑歴などが事細かに記されていて、それは津乃田の想像を超える壮絶な人生でした。カタギになるのは本当に辛いことでした。周囲からは特別な目を向けられ、教習所に通い続ける金もなく、生活保護を受けながらの職探し。安アパートに一緒に暮らす住人とのトラブル。ついに彼はそこから逃げ出し、古巣の兄弟分を頼ってしまいます。しかしそこにも警察の手が伸びて…。『すばらしき世界』は、2020年の日本映画です。監督は西川美和、第56回シカゴ国際映画祭の観客賞を受賞しています。主演の役所広司は、同映画祭のインターナショナルコンペティション部門でベストパフォーマンス賞を受賞しました。素晴らしい物語で、お勧めできるとてもいい映画なんですが、見終わった後どっと疲れます。主人公が背負っている人生の重さがのしかかってくるようでした。
2024/04/08
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暗記ものの試験勉強は、前日徹夜しないでちゃんと寝たほうが記憶が定着すると聞いたことがあります。心理学でレミニセンスというと、学習してから次第に失われていく記憶とは逆に、しばらく時間が経ってからの方が鮮明に思い出すことができる現象だそうです。寝てる間に記憶が整理されて取り出しやすくなるからなのでしょうか。今日ご紹介するレミニセンスは、記憶にまつわる近未来のSFものです。マイアミは海面が上昇してベニスのような海上都市になっていました。太陽が出ている間は気温が高すぎて暮らしにくいので、人々は昼夜が逆転した夜型の生活を送っています。無口な退役軍人のニック・バニスター(ヒュー・ジャックマン)は、装置を使って客の希望する記憶を3次元的に追体験させる法律スレスレのような仕事を生業としていました。夫と出会った頃の思い出を何度も繰り返す老婆や、歩いていた頃の日々に戻りたい戦争で足を失った男。楽しかった過去に戻りたい人たちが主な顧客です。ニックはその仕事をワッツという相棒と2人で行っていました。ある日、メイ(レベッカ・ファーガソン)という名の絶世の美女が店を訪ねてきます。無くした鍵の場所を思い出したいと、最近の記憶の追体験を依頼してきました。メイが店を出て行った後で、ニックは彼女が忘れたイヤリングを発見します。メイの働く店を探し、彼女がステージで歌う曲に運命的なものを感じたニックはたちまち恋に落ちてしまいます。仕事をワッツに任せてメイにのめり込んでいくニック。ニックのことが好きだったワッツは面白くありません。しかし恋はあっさり終わりました。ある日突然メイがいなくなってしまうんです。ニックは懸命に探しますが見つからず、彼女との思い出にすがってマシンに依存するようになりました。そんなニックの元に、検察官エイブリーが捜査協力を依頼してきます。昏睡状態の容疑者の記憶からある男の情報を得たいとのこと。麻薬組織に絡む捜査なんですが、なんと記憶の中にメイが登場するんです。メイって、本当は何者?ニックに近づいてきたのは偶然?『レミニセンス』(原題:Reminiscence)は、2021年のアメリカ映画です。リサ・ジョイの監督デビュー作で、脚本も務めています。記憶を掘り起こして追体験できる装置があったら、依存症になる人が続出しそうな気がします。辛い現実より楽しかった過去へ戻りたい、たとえ夢でも。すごいのは追体験が本人だけでなく他人にも立体的に見えてしまうことです。これがあったら犯罪者も嘘つけなくなりますね。
2024/03/29
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アガサ・クリスティの推理小説『オリエント急行の殺人』を原作とした映画のリメイク版です。1974年に制作された第一作目も見た記憶があり、原作も読んでいましたので犯人も結末も知ってて見るサスペンスってどんなもんかなと思いましたが、キャストが豪華で機関車の映像も綺麗だったので楽しめました。世界一の私立探偵エルキュール・ポアロはエルサレムで登場します。犯人の行動の先の先を読んで事件解決、彼の敏腕ぶりをまず軽く紹介です。エルキュール・ポアロ役はケネス・ブラナーで、この方が監督も務めています。ヒゲがやけに大きかったですね。寝るときは形を崩さないためなのか、ヒゲマスクしてました。ポアロが乗車してたオリエント急行の車内で、殺人事件が発生するんです。被害者はエドワード・ラチェットという大富豪で、前日にポワロに身辺警護を依頼してきた人でした。ポアロはラチェットの人柄に好感を持てずに依頼を断ったんです。ラチェット役はジョニー・デップでした。滅多刺しで殺されてしまうので出番少ないですが、印象深い役所でした。オリエント急行はイスタンブールからイギリスまで行くヨーロッパ横断鉄道で、豪華な客車や食堂車も完備されている蒸気機関車です。乗客はハンガリーの伯爵夫妻やロシアの公爵夫人、アメリカの未亡人、元軍人の医者、大学教授、宣教師や家庭教師などで、ポアロが聞き込み調査を実施したところ、乗客乗員の全員にアリバイがあることが判明します。大学教授はウィレム・デフォー、宣教師はペネロペ・クルス、未亡人はミシェル・ファイファー、公爵夫人はジュディ・デンチ、みんな主役を張れるような豪華俳優陣でした。列車は雪に阻まれて山間部に数日足止めされるんですが、その間にポアロの捜査が行われて真相が明らかになるという運びです。ポアロの最後の謎解きのシーンは、ダビンチの最後の晩餐の絵画を彷彿とさせます。『ナイルで殺人事件が発生しました。』と言って終わるので、次回作はナイル殺人事件かなと、アガサ・ファンを期待させる終わり方でした。『オリエント急行殺人事件』(原題: Murder on the Orient Express)は、2017年のアメリカ映画です。原作が書かれた1930年代の時代背景が美しく描かれていました。何より列車が雪山を縫って走っていく様が美しいので、電車好きの方は是非ご覧になってください。フランス国鉄SNCFが、2024年のパリ五輪に合わせてオリエント急行を復活させるそうです。楽しみですね。いつか乗ってみたい...。
2024/03/18
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今から15年ほど前、ギリシャの財政赤字がニュースになっていました。ギリシャ危機、そんなのあったっけなあという感じですね。当時のギリシャは、労働者の4人に一人が公務員で、年金も優遇されていたことなどが影響して財政破綻を起こしかけていました。IMFやEUが金融支援をする条件として、ギリシャに増税や年金・公務員改革などを求めたことで不況に陥ったんです。今日ご紹介する映画の背景には、多分このギリシャ危機があったんじゃないかと思いました。主人公は、アテネで高級紳士服店を父と共に営んできたニコスです。開業以来36年、お得意様も次第に高齢化して去り、不況下で一日店番をしていても客は全く来ません。銀行から店の差し押さえ通知が届き、父はショックを受けて倒れてしまいました。なんとか収入を得たいニコスは、内気な性格ながら一念発起。移動式の屋台でスーツを売ることを思いつきます。しかし値段の高いオーダーメイドのスーツは、道端でも全く売れませんでした。困り果てたニコスは、ある女性から声をかけられます。『ウェディングドレスは作れる?』紳士服が仕立てられる人ならドレスだって作れると思ったんでしょうね。でも女性服のことは全くわからないニコス、隣に住む母娘オルガとヴィクトリアに協力を仰ぐんです。普段着も作るようになり、婦人服の出張販売、そして一点もののオーダーメイドのウェディングドレスは評判になります。ニコスとオルガは、それぞれが生きがいを感じてお互いを尊重していました。このままハッピーエンドかと思ったんですが、そうは行きませんでしたね。『テーラー 人生の仕立て屋』(原題:Tailor)は、2020年のギリシャ・ドイツ・ベルギー合作映画です。監督はソニア・リザ・ケンターマン。刺激はないんですが、ギリシャの日常が見られて面白かったです。コロナで売り上げが減った飲食店の方々がキッチンカーで移動販売を始めたように、たくましく環境に適応して、人は生き抜いていくんだなと思いました。
2024/03/14
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『ワイルド・スピード』のシリーズ10作目となるこの作品.ファミリーが10年前にブラジルでこっぴどく打ち負かした麻薬王、エルナン・レイエスの息子ダンテが、ドミニクたちに復讐劇を仕掛けてきます。これまでも車ぶっ飛ばして色々やらかしてきましたから、世界中に敵がいるでしょうね。レイエスって誰だっけと思ったら、私が初めてこのシリーズを見たシリーズ5作目『ワイルド・スピード MEGA MAX』に登場してました。ローマで任務をこなしていた仲間が罠にハマったと知ったドミニクは、レティと共に急遽ローマに駆けつけるんですが、既にダンテは作戦決行中。なんと中性子爆弾がバチカン目掛けてゴロゴロ転がっていくんですよ。どうやって止めるの?しかもダンテは姿をくらまし、この騒動がドミニクたちの犯行にされてしまいました。一方ロサンゼルスにいる妹のミアと息子のリトルBも襲撃を受け、ドミニクの弟ジェイコブが命を張って救出します。このファミリーは全員がすごい運転技術を持ってるんですね。ダンテ対ドミニク。物語も一応ありますが、それよりかっこいい車と目を見張るカーアクションとセクシーなお姉さんたちがたくさん出てくるところが楽しめます。一番の見どころはダムの急斜面を車で走り降りるシーンでしょうか。『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(原題:Fast X)は、2023年公開のアメリカ映画です。監督はルイ・レテリエ。ドミニクのドライビング・テクニックは神技ですけど、それにしても毎回見どころ満載でハラハラさせられます。こういう映画、大好きアクション&サスペンス、非日常が見たいとき
2024/03/08
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実業家としての功績が認められ、表彰式が華々しく行われた夜、アール・ブルックスは妻と共に帰路につき、車の中から社交ダンス教室で踊るカップルに目を止めました。バックシートにいたマーシャルはアールを誘惑します。2年間も我慢したんだ、今日ぐらい羽目を外しても良いだろう?ブルックスは殺人中毒でした。この2年間は依存症の会にドラッグ中毒だと偽って入会し、なんとか衝動を抑えていたんです。ブルックスにしか見えない彼の別人格マーシャルが、この特別な日のご褒美として、彼を連続殺人鬼“サムプリメント・キラー”へと誘います。ターゲットは社交ダンス教室で見かけたカップル。銃をビニールでカバーし、なんの躊躇もなく殺人に及ぶと、いつものように被害者の血の指紋を残します。久しぶりに味わった震えるほどの快感でした。しかし彼は小さなミスを犯します。近所に住むスミスは覗き趣味があって、彼に決定的な写真を撮られてしまうんです。スミスにも殺人願望があって、証拠写真をネタに自分も次の殺人に同行させてほしいと言ってきます。サムプリメント・キラーの捜査を続けている女性刑事トレーシー・アトウッドは、再び動き出した連続殺人犯の捜査で近所の聞き込みをして、スミスが何かを知っていると感付きます。彼女はやり手の刑事ですが、家庭問題で裁判沙汰になっている上、以前捕まえた凶悪犯が脱獄して命を狙われています。ブルックスには出来の悪い娘がいて、大学を勝手に退学して家に戻ってきます。どうやら妻子ある男性の子を身籠もっているうえ、同級生殺害の重要参考人になっている様子。ブルックスは、娘にも自分と同じ殺人衝動があるのではと疑います。『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』(原題: Mr. Brooks)は、2007年のアメリカ映画です。 ブルース・A・エバンス監督・脚本、ケビン・コスナーが主演と製作を担当しています。ケビン・コスナーが若いんですよ。最近は何してるんでしょうね。ブルックスにつきまとって悪魔のように囁くマーシャルをウィリアム・ハートが不気味に好演していました。女刑事役はデミ・ムーアです。あんまり期待してなかったんですが、面白い映画でした。
2024/02/28
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もし翼を持たずに生まれてきたのなら、翼を生やすためにどんなことでもしなさい。ココ・シャネルの伝記的映画を見ました。孤児院から世界の有名ブランドの創設者へと羽ばたいた彼女の成功の秘訣は何だったのでしょうか。『私は生涯結婚しない。妻より愛人のほうが良いわ。』子供の頃、浮気でほとんど家にいなかった父、失意の中に死んだ母を見ていてそう思ったのでしょう。姉とともに孤児院に入れられ、日曜日に父親が面会に来てくれることを願いますが、それは一度もかないませんでした。孤児院を出ると、昼はお針子として、夜は騎兵将校の溜まり場となっていたキャバレーで歌手として働く日々。犬のココを見たのは誰?(Qui qu'a vu Coco ?)をよく歌っていたのでココというニクネームになります。本名はガブリエル・シャネル。ムーランの田舎で彼女が最初に目指したのは歌と踊り、舞台で成功することでした。客の一人だった将校のエティエンヌ・バルサンの紹介でリゾート地のオーディションに挑みますが失敗。彼はお金持ちの息子で、郊外の城に住み競走馬を育てていました。当時上流階級の女性は、まだ長い裾のドレスに装飾の多い大きな帽子と言う出で立ちで、馬に乗るときも横座りだったんですね。居候のような形で城に住み着いたココは、乗馬を学び、男性のような機能性の高い独自のファッションで異彩を放ちます。彼女のような、すっきりした帽子が欲しいという女性も現れました。毎日がパーティのような退廃的な暮らしの中で、バルサンの友人の一人ボーイ・カペルと出会います。美しくピアノを弾き、哲学を語る魅力的なハンサムでした。ボーイと恋に落ちたココでしたが、彼にはイギリスに裕福な許婚がいたんですね。ココの姉は近くに住む公爵の元で暮らしていましたが、彼の両親から結婚は反対されていました。結婚とは、愛と関係のない家同士の契約と言う考え方が普通だった時代です。ココはボーイの出資でパリに帽子の店を出し、バルサンのところで知り合った舞台女優が彼女の帽子を気に入ったことで有名になっていきます。110分の映画の中で、彼女がファッションデザイナーとして登場するのは最後の数分だけでした。彼女の成功のベースには、この二人の男性が大きく関わっていたということは分かります。『ココ・アヴァン・シャネル』(原題:Coco avant Chanel)は2009年のフランス映画です。ココ・シャネルを演じていたのは『アメリ』の オドレイ・トトゥでした。ボーイ・カぺルはアレッサンドロ・ニボラ、監督はアンヌ・フォンテーヌです。シャネルが亡くなったのは1971年だそうで、意外と最近の人なんだという気がしました。ここ100年ほどで女性のファッションは激変したんですね。面白い映画でした。おすすめです。
2024/02/17
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ロンドンで家政婦をしながら質素に暮らすミセス・ハリス。第2次世界大戦が終結してから10年以上、帰らぬ夫を待っています。夫の死を知るのが怖くて、軍から届いていた小さな包みをずっと未開封のまま持ち歩いていました。親友の勧めでついに軍からの包みを開けると、中には夫の指輪と戦死の知らせが入っていました。未亡人になったミセス・ハリスは、ある日、仕事先の高貴な家柄のご婦人の家で、見たこともない美しいドレスに出逢います。それは500ポンドもするクリスチャン ディオールのドレスでした。自分もパリにドレスを買いに行くことを決意すると、お金を貯めるために猛然と働き始めました。節約のために毎朝乗っていたバスもやめて歩くことに。運も味方してサッカーくじが当たったりもするんですが、逆にドッグレースにやっと貯めた100ポンドを注ぎ込んで全部スッたり。なんとかそれなりの現金を手にし、ついにパリへ旅立ちます。1950年代の飛行機って、機内でタバコ吸っても良かったみたいですね。電車じゃなくて、蒸気機関車が走ってましたよ。予定では日帰りのはずだったミセス・ハリス。飛行機が遅れ、泊まる所もなく駅で寝てました。そしていよいよパリのディオール本店へ。しかし当時のオート・クチュール(高級仕立て服)はどれも一点もので、客層は大金持ちのお得意様だけだったんです。何処の馬の骨とも分からないみすぼらしい身なりのイギリス人中年女性が相手にされるはずもありません。夢を諦めないハリスに、会計士アンドレやモデルのナターシャ、シャサーニュ公爵などが次々と手を差し伸べて助けてくれるんです。彼女の起こす閃風は、やがて高級ブランドの経営方針すら変えるきっかけとなります。『ミセス・ハリス、パリへ行く』(原題:Mrs Harris Goes to Paris)は、2022年のイギリス映画です。原作はアメリカの作家ポール・ギャリコの長編小説『ハリスおばさんパリへ行く』、アンソニー・ファビアン監督がレスリー・マンビル主演で映画化しました。いろんな小さな出来事に一喜一憂しながら、不可能とも思える夢を強引に実現してしまうオバサン・パワー。人生なかなか思い通りにはならないけれど、やってみなくちゃ分からないという前向きな気持ちにさせてくれる映画でした。
2024/02/16
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フランス革命前後の貴族と庶民の食文化が分かる面白い映画でした。フランスで初めてレストランを作った男という話なんですが、それまではレストランがなかったというのが驚きでしたね。公爵家に仕えるマンスロンは腕のいい料理人でした。当時のフランスの貴族社会では、地中に埋まった食材を口にする習慣がなかったようです。ニンジンやジャガイモなど地面に埋まっている食材は悪魔の産物で、食べるのは豚くらいという認識があったんでしょうか。マンスロンが丁寧に創作したデリシュという名のジャガイモとトリュフの重ね包み焼き。見るからに美味しそうでしたが、公爵のテーブルで美食を堪能していた貴族たちの反感を買います。自分の料理に誇りを持っていたマンスロンは謝罪しなかったので解雇され、失意の元に一人息子と実家に戻ります。美しく色づいた秋の田舎に建つ一軒家は、ごちゃついた宮殿よりずっと素敵なところでしたね。そこへ、弟子にしてほしいという女性ルイーズが訪ねてきます。女性の料理人も当時は珍しかったようですね。彼女の立ち振る舞いは働いたことのない女性のそれで、マンスロンは不審を抱きますが、彼女の料理に対する情熱は本物で次第に信頼関係ができていくんです。人に言えない過去があるような謎めいた美人です。ルイーズのアイデアで始まった一般人にも開かれたお食事どころ、レストラン。マンスロンも料理への意欲を取り戻し、お店はたちまち評判に。パリでは革命の嵐が吹き荒れる中、まだその影響がこの田舎には及んでいない様子でした。やがて傲慢な公爵の耳にも入り、店を訪れる事になります。デリシュ!(原題:Delicieux)は2020年のフランス・ベルギー合作映画です。マンスロンをグレゴリー・ガドゥボワ、ルイーズをイザベル・カレが演じ、エリック・ベナールが監督を務めました。次々出てくる料理がどれも美しくて、きっと食べても美味しいのだろうと思いますが、とっても目の保養になります。これでもかってくらい、バターをたくさん使ってましたね。ハッピーエンドの心温まる映画でした。おすすめです。デリシュを作ってみたい方、レシピはこちらです。
2024/02/14
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オットー・アンダーソンはいつも不機嫌でした。ゴミの分別をちゃんと出来ない近隣の連中にも、私道なのに勝手に駐車する宅配業者にも、腹が立って仕方がない。最愛の妻を半年前に亡くし、仕事も追い出されるように定年退職。もうこの世に未練はない。死んでやると思って、電気もガスも解約してしまいます。首吊り用のロープを買って、自殺を決行しようとしたちょうどその時、向かいの家に2人の子供を連れた若夫婦が引っ越してきました。運転が下手な旦那の様子を見かねて手伝ってやると、奥さんの手料理をもらいます。オットーも昔から頑固親父だったわけじゃないんですね。ソーニャと出会い、愛を育み、結婚して幸せな時を刻んできました。大好きだったソーニャのところに早く行きたかっただけなんです。オットーはこの後も何度か自殺を試みますが、必ず邪魔が入るんです。向かいの家族との交流を通じて、頑なだった心が次第に溶けていきます。思いがけずSNSで街のヒーローになったり。『オットーという男』(原題:A Man Called Otto)は、2022年のアメリカ映画です。フレドリック・バックマンの小説『幸せなひとりぼっち』を原作としたスウェーデン映画のハリウッドリメイクで、マーク・フォースター監督、トム・ハンクス主演で製作されました。《トム・ハンクス史上》最も泣ける映画という触れ込みでしたが、泣きませんでしたね。亡くなった奥さんがオットーのことをずっと見守ってる感じでした。町一番の嫌われ者でも彼が生きていることで助けられた人は、猫もそうでしたけど、何人もいたし、ちゃんと生きている意味はあるんですね。自分はこの世にもういらない人間だなんてことは多分ないんだろうと思います。とてもいい映画です。おすすめです。
2024/02/09
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アニメ版を見て相当ハマったので、いつか実写版も見たいと思っていました。期待以上に面白くて、もう一度アニメ版も見たくなり、今最初からまた見直しています。時代物やSFって違和感を覚える映画もありますけど、これは全然そういうのなかったです。アニメがそもそも日本語だったせいもあるかも知れませんが、紀元前の中国の登場人物が全部日本人でもすんなり入り込めました。時は春秋時代、七大国(斉・楚・秦・燕・韓・魏・趙)が覇権を争う中国戦乱のとき。二人の少年シンとヒョウが、自力で下僕の身分から抜け出し、天下の大将軍になるという夢を持って、農家の下働きの傍ら日々剣の鍛錬に励むところから物語は始まります。ある日、通りかかった大臣・昌文君(しょうぶんくん)がヒョウに目を止め、王宮に召し抱えるんです。セイ(後の始皇帝)が幼くして秦の皇帝となった時から、王宮内は覇権争いで荒れていました。後ろ盾となっていた右丞相・呂不韋(りょふい)が遠征に出ている間に、弟の成蟜(セイキョウ)と左丞相・竭氏(けつし)が組んでクーデターを起こし、セイは玉座を追われます。セイの影武者として仕官していたヒョウは命を狙われ、瀕死の重傷を負ってシンと暮らした下僕小屋に戻ってくるんです。びっくりするくらいアニメと同じでしたね。ヒョウとセイは瓜二つなので吉沢亮さんが両方演じていて雰囲気ぴったりでした。ヒョウは、ある使命をシンに託してこの世を去るんですが、事情を知らない熱血漢シンはヒョウの仇をとると吠えまくります。シンを演じた山﨑賢人さんも上手でした。何より驚いたのは刺客として差し向けられる人たちの特殊メイクの凄さです。強いのはもとより、容貌が普通じゃないんですが、それが見事に再現されてるんです。暗殺者の朱凶(しゅきょう)、吹き矢の達人ムタ、成蟜の手下・ランカイ。演じている役者さんたちも見事で、雰囲気そのままでした。フクロウのようなかぶり物で登場するテンは、軍の包囲網を突破する抜け道を示してセイとシンに協力します。テンは生き抜くためになんでもする山の民の孤児で、協力は単純に金目当て。強かでコミカルな役を橋本環奈さんが演じていて、これもぴったりハマってました。配役を知らずに見ていたので、セイと手を組むことになる山の王が仮面を脱いだ時、『おーーー!!』と思いました。シンが憧れた天下の大将軍・王騎(おうき)は非常に個性的な軍人で、なるほどこの人が演じているのかと感動すら覚えましたよ。『キングダム』は、2019年に公開の日本映画です。セイが弟から王座を奪還するところで終わりました。原作の原泰久による漫画1巻から5巻の実写化だそうです。これは面白いです。漫画やアニメを知らない方にも是非オススメ。アクション&サスペンス、非日常が見たいとき
2024/01/15
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パコ・デ・ルシアは7歳でギターを手にし、後に世界的なギタリストになります。フラメンコの聖地スペインのアンダルシア地方に1947年に生まれ、フラメンコの域を超えた超絶テクニックでファンを魅了しました。これは彼の60年に渡る音楽人生をまとめたドキュメンタリー映画です。スペインではキリスト教の聖人の名前を子供につける習慣があるらしく、同名のパコ(フランシスコの愛称)もたくさんいるので、母親の名前を後につけて呼ぶそうです。彼の母親はルシア、父親も兄たちもみんなギター弾きです。兄が父親にギターを習って苦戦しているのをそばで見ていたパコは、『あんなの簡単だ』と思って始めたと言っていました。12歳で、兄のペペ・デ・ルシアとのデュオで初レコーディング。既にプロのギター弾きになっていました。手に職があれば、学校なんて行かなくても生きていけそうです。グラナダに旅した時、ホテルのオプションツアーでジプシー洞窟で演奏されるフラメンコショーに行ったことがあるんです。洞窟に向かうマイクロバスで、アンダルシア出身と思われるおばちゃんツアー客10人くらいが一緒だったんですよ。誰かがフラメンコを歌い始めると、みんなで手拍子、合いの手、足踏み、手踊り。バスの中は遠足モード、フラメンコ習ってた合気道の友達と私、二人だけが完全に異邦人な感じでした。アンダルシア地方の人にとってはフラメンコは生活に密着していて、その伝統の域は絶対に超えてはならないモノらしいんです。パコはフラメンコに革命を起こすんですね。彼の演奏は、フラメンコギターの師匠からは『フラメンコじゃない!』と言われてましたけど、私の耳には全部フラメンコに聞こえましたね。違いがよく分からないんですよ、素人には。超絶速弾き、すごいな〜と思うだけ。スパニッシュギター弾きは、ピックや付け爪とか使わないで自分の爪でジャカジャカ弾くので、爪がすごく硬いんです。パコもステージの前は爪の手入れを念入りにやってましたね。ダンサーが靴の手入れをするような感じでしょうか。さらにパコは、ジャズやフュージョンへと活躍の場を広げます。私がバンドやってた頃、うちのギターも憧れてたアル・ディ・メオラ。それにジョン・マクラフリンとの3人でスーパー・ギター・トリオを結成して世界中をツアーし、音楽ファンを増やしていきました。パコは66歳で亡くなるんですが、晩年はマヨルカに住んでいたそうです。私たちが遠征で訪れた時、まだ存命だったんですよ。マヨルカ観光の途中、海辺でギターを弾いてた物凄く上手い人がいたんですね。パコの弟子かもよなんて言って動画を見直しました。真相は分かりません。公式サイトはこちら。おすすめです。
2023/12/16
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カルーソは、子供の頃から教会の聖歌隊でその美声を発揮していました。病の床にあった母に歌のお勤めを休むなと励まされ、聖歌隊で街を行進しながら母の姿が窓辺になかったことでその死を知ります。大人になったカルーソは、歌の道をあきらめ恋人の父親の仕事である粉屋を手伝うことになりました。しかし歌への情熱は抑えきれず、街にやってきたオペラの一団に見出され、オペラ歌手として新しい出発を果たします。1873年にナポリで生まれたエンリコ・カルーソは有名なオペラ歌手です。カルーソを演じたマリオ・ランツァが素晴らしい歌声で、『アイーダ』 『トスカ』『ラ・ボエーム』など多くの曲を披露してくれています。こちらは本物のカルーソーの歌声です。アメリカに渡りメトロポリタン・オペラにデビューして、スポンサーのベンジャミン氏に嫌われてしまうんですが、民衆もベンジャミンの娘のドロシーも彼の後押しをしてくれて大成功を収めます。ドロシーとは恋仲になって親の反対を押し切って結婚。子供も産まれて順風満帆かに思われましたが、喉を患って48歳の若さで生涯を閉じます。映画では全く触れられていませんでしたが、後で大将が調べたところによると、ドロシーと結婚する前にイタリア人の内縁の妻と三人の子供がいたそうです。それにすごいヘビースモーカーだったとか。カルーソを演じたマリオ・ランツァも38歳の若さで亡くなってしまったそうです。伝記映画『歌劇王カルーソ』(原題: The Great Caruso)は1951年に公開されたリチャード・ソープが監督によるアメリカ映画です。彼に捧げる歌『Caruso』を以前ご紹介しましたが、この映画は見たことがなくて、どんな人生を送ったのかこれで少し分かりました。こちらは年代を感じさせる壮大な予告編になります。
2023/11/14
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イアンは人に幻覚を見せる超能力を持っていました。スペインの海辺の田舎町で、アル中気味の父ビセンテとひっそりと暮らしています。超能力で目立つことを父親に固く禁じられていたので、店で万引きを働く時にちょこっと使う程度。しかし警察車両に追いかけられ、逃げ延びるために防犯カメラ映像に残る事件を起こしてしまいます。イアンは18歳の誕生日を迎えました。能力者を探している2つの組織があるんです。一つはエージェンシーという武装集団。イアンとビセンテはエージェンシー捕まってしまいますが、どうもビセンテは以前ここの一員だったようです。もう一つはアウェアネスという組織で、エージェンシーのアドリアナ博士によると、超能力者たちを使って政府を操る悪の集団で、それに対抗するためにエージェンシーがあるとのこと。拉致されているイアンのもとに、アウェアネスの美人戦士エステルが現れます。この辺でどっちが悪なのかよくわからなくなってくるんです。エステルは凄腕の格闘家で、エージェンシーの兵士たちをバッタバッタと倒してイアンと父親を施設から救出しました。東西冷戦時代に進められた超能力覚醒の製剤研究が、冷戦終結と共に終わりを告げ、生み出された超能力者たちが国家の脅威になるという理由で抹殺され始めていました。アウェアネスはそれに対抗する超能力者軍団です。エージェンシーは製剤研究を進めていた組織ですが、失われた製剤データを取り戻すため、実験対象者から抽出しようと目論んでいたようです。イアンは子孫を残せないはずの超能力覚醒者から奇跡的に生まれた子供で、彼の体内には高純度の製剤が濃縮されていました。イアンは幻覚を見せる能力の他に、人の脳内に潜入して記憶を読む第2の能力も覚醒します。さらに他人を意のままに動かす念動力のような第3の能力も覚醒。父ビセンテの記憶には、イアンが知らなかった大きな秘密が隠されていました。『アウェアネス -超能力覚醒-』は、2023年公開のダニエル・ベンマヨール監督によるスペイン映画です。スペインのSFってあまり馴染みがなかったんですが、最後の大どんでん返しは衝撃的で、すぐに理解できなかったのでその部分だけもう一度見ました。イアン役はカルロス・ショルツ、父ビセンテはペドロ・アロンソが演じています。2時間の映画にまとめるにはちょっと無理がある盛りだくさんな内容でした。人気が出ればドラマ化されるかもしれませんね。非日常を体感したいあなたへ
2023/10/26
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英文学はお好きでしょうか。エミリー・ブロンテの『嵐が丘』やゴールズワージーの『林檎の木』なんかは大好きで何度も読みました。『エマ』を書いたジェーン・オースティンは1800年頃に活躍した女流作家で、英国留学していた夏目漱石は『写実の泰斗なり。平凡にして活躍せる文字を草して技神に入る』と絶賛しています。『いつか晴れた日に』も彼女の『分別と多感』が原作で、今でも印象に残るいい映画でした。エマ・ウッドハウスは裕福な家に生まれ、美しく頭もいい21歳の女性です。イギリス南部ハイベリーの邸宅に父親と二人で優雅に暮らしていました。友人のハリエットには好きな男性がいたんですが、エマがプロポーズを断らせ、自分がふさわしい男性を探すと意気込みます。この人はと見込んだ男性が別の女性と結婚したり、自分が好きな男性にハリエットも恋したりとなかなかうまくいかないんです。とっても平和で上品なロマンティック・ラブ・コメディで、平凡な日常が続くので映画に刺激を求めている方向きではありません。舞踏会のシーンもあって、当時踊られていたであろうダンスも見られますよ。衣装とか調度品とか食器とかが素晴らしく美しいです。『EMMA エマ』(原題:Emma.)は2020年のイギリス映画。監督はオータム・デ・ワイルド、主演はアニャ・テイラー=ジョイです。この作品が映画化されるのはこれで5回目とか。2021年、アニヤ・テイラー=ジョイが第78回ゴールデングローブ賞の主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)にノミネートされました。第93回アカデミー賞では、衣装デザイン賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞の2部門にノミネートされています。映画に刺激を求めない人におすすめの上品な作品です。
2023/09/05
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19世紀の登場した超絶技巧のバイオリニストは、現代のカリスマ的ロック・ギタリストのような存在だったのかもしれません。パガニーニを演じたデイヴィッド・ギャレットがセクシーでかっこよすぎです。コンサートはまるでロックのライブ会場の様相で、情熱的な演奏に女性たちは悲鳴をあげ、失神し、殺到します。イタリアの天才バイオリニスト、ニコロ・パガニーニは、シューベルトやリストなど当時の有名な音楽家に多大な影響を与えました。1830年に敏腕マネージャーのウルバーニに見出され、ヨーロッパ各地で公演を行い独創的な演奏で人々を魅了しました。富と名声を手にしたパガニーニは、酒や女や賭け事に溺れ、不健康な日々を送ります。イギリスの指揮者ワトソンは、国王を招いてのロンドン公演を企画しますが、パガニーニの気まぐれな行動に翻弄され、全財産を失う羽目に。やっとのことでロンドンに呼び寄せたものの、人々を陶酔させる彼の悪魔的な演奏に嫌悪感を持つ保守的な人々の抗議運動が、宿泊する予定のホテルの前で展開され、やむなくワトソンの自宅に宿泊することになるんです。ワトソンの娘シャーロットは、若く気高く清らかで、しかも美しい声の持ち主でした。パガニーニは彼女に自分の作曲したアリアを歌わせ、すっかり意気投合してしまうんですね。この淡い恋がうまくいかないだろうことは想像できました。シャーロットはパガニーニとの共演をきっかけにアメリカに渡ってプロの歌手になったようです。知らなかったんですが、パガニーニを演じたのは人気の高いプロ・バイオリニストだったんですね。ただの役者にしては、演奏が上手過ぎると思ってたんですよ。2014年には日本公演もされたそうです。『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』(独: Der Teufelsgeiger、英: The Devil's Violinist)は、2013年のドイツの映画です。監督はバーナード・ローズ。主演のデイヴィッド・ギャレットは現代のパガニーニとも言われる演奏家でモデルもされてるそうで、5億円のストラディバリウスを使って演奏を披露してくれます。こんなすごい映画をなんで見逃していたんだろうと思いました。ちょっとエロいシーンもある大人の映画ですが、音楽は素晴らしい。おすすめです。
2023/09/04
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大航海時代にイングランド人として初めて世界一周したサー・フランシス・ドレイクは、海賊であり、海軍提督でもありました。両親からその子孫だと聞いていた少年ネイサン・ドレイクは、兄のサムと孤児院で宝探しの大冒険を夢見ていました。10歳で兄と生き別れ、成長してバーテンダーとしてニューヨークで暮らすネイサン。そんな彼の前に、サムと一緒に宝探しをしていたというビクター・サリバンがやってきて、自分と組んでサムが探していたマゼランの黄金を見つけに行こうと誘われます。インディー・ジョーンズやトゥーム・レイダーと似たような系列の宝探し物なんですが、ネイサンを演じるトム・ホランドのとんでもないアクションが見物です。飛行機から落ちる荷物を伝って敵の攻撃を避けながらのサバイバルシーン。冒頭からガッツリ掴まれましたよ。サリバンの他にもクロエという仲間が出てくるんですが、仲間と言いつつトレジャーハンターというのはみんな強欲なんですよね。マゼランに出資したモンカーダ家の末裔サンティアゴ・モンカーダ(アントニオ・バンデラス)や、彼に雇われた女傭兵ジョー・ブラドッグ。みんなマゼランの黄金を自分だけものにしたがっているので、気を許すと命も奪われかねません。『アンチャーテッド』(原題:Uncharted)は、2022年のアメリカ映画です。監督はルーベン・フライシャーで、PlayStationのアンチャーテッド・シリーズというゲームの実写映画化だそうです。ゲームも面白そうですね。兄のサムは死んだと聞かされますが、どうも生きているような気配だし、続編がありそうな感じでした。おすすめです。
2023/08/23
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2022年8月6日に公開された『ONE PIECE FILM RED』(ワンピース フィルム レッド)は、6ヶ月に及ぶロングラン上映の大ヒット映画となりました。劇中歌も大ヒットして、去年の夏を席巻。Adoの歌う『新時代』を耳にしない日がないくらいでした。原作連載25周年という節目に、興行収入的にも大成功を収めたワンピース劇場版第15作目の作品です。ウタは世界中の人々を虜にする歌姫でした。別次元と称される類まれな歌声の持ち主です。素性を隠したまま歌を発信していた彼女が、音楽の島エレジアで初ライブを開催することになり、大勢のファンで島が埋め尽くされていました。その中に麦わら海賊団の姿もあります。船長のルフィーとウタは幼馴染で、以前は父親のシャンクス率いる赤紙海賊団の音楽家でした。ライブ開始の1曲目が『新時代』で、会場は一気に盛り上がります。心無い海賊がステージに乱入して妨害しようとするんですが、ウタは不思議な能力で瞬く間に制圧してしまうんです。彼女は悪魔の実『ウタウタの実』の能力者だったんですね。彼女の歌声を聞いた人全てを仮想空間に引きずり込むことができるんです。ライブは彼女の新時代計画でした。全ての人の意識をウタの楽しい世界に閉じ込め、苦しみも悲しみもない日々を送ってもらおうというもの。ナルトの無限月読とか、『鬼滅の刃』無限列車編もそういった類の話でしたね。ウタって悪者なんでしたっけ?大体こういった幻術は悪役が使うもので、それを破って一件落着ですよね。ウタにも、家族と思っていたシャンクスに捨てられた恨みがあったり、自分の能力が世界の人々を不幸にしてしまう可能性を知ったりして、色々考えたんでしょうね。世界政府や海軍も、ウタの能力を危険視して討伐に動き始めていたんです。シャンクスたちもウタの暴走を止めるべく島へやってきます。ONE PIECE FILM GOLDも面白かったですけど、この映画もよくできてました。ウタの歌は全部素敵でした。Adoさんの歌唱力、恐るべし。別次元と称される類まれな歌声を担当するのって勇気がいるでしょうね。アクション系ならワイヤーとかいろんなCGで実写化して何とか観客の目を誤魔化せそうな気はしますが、歌はナマモノですからホントにうまい人じゃないと演じられないと思うんです。話がそれますが、TBSテレビの『モニタリング』という番組で、小林幸子が『新時代』歌って、あんまり上手なんで掴まれたの覚えてます。このサントラはお宝ですね。
2023/07/25
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どの範囲までを家族(ファミリー)って呼ぶかは国や年代によっても違う気がします。スペイン語とイタリア語はかなり似ていて、どちらの言語でも家族のことをファミリアと言うそうです。ゴッドファーザーとかの映画から勝手に想像するだけですが、家族の繋がりの濃さといったらイタリアは世界トップクラスなんじゃないかという気がしています。日本も昔はお家制度が主流でしたから、徳川一族みたいな繋がりは今でも強そうですよね。人類皆兄弟という広い考え方もありますが、人ってなんかグループを作りたがる本能みたいなものがある気がするんです。原始時代からDNAに刻まれた自己防衛本能なんでしょうか。血の繋がりだけでなく、風習や言語や価値観などいろんなもので仲間か、そうでないかを決めたがります。今日ご紹介する映画の家族は、そういった垣根を意識しない、むしろ自己防衛本能に疎い人たちです。神谷誠治(役所広司)は、一人山里で暮らす陶器職人でした。彼には、一流企業に勤めて海外で働いている息子(吉沢亮)がいます。ある日、アルジェリアに赴任していた息子の学が、外人の婚約者ナディアを連れて帰ってくるんです。学は結婚したら会社を辞めて、父親のあとを継ぐと言いますが、陶芸で生計を立てる苦労を知っている誠治は反対するんですね。隣町には在日ブラジル人が多く住むコミュニティがありました。それを快く思わない日本人の若者グループが、いわれなき暴力行為を繰り返していたんです。ある日、ブラジル人の青年マルコスが、彼らに追われたときに誠治に助けられます。彼は焼き物の仕事に興味を持ち、次第に心を通わせるようになるんです。しかし、アルジェリアに戻った学とナディアが現地の反政府勢力に拉致され大変な事件に巻き込まれてしまいます。『ファミリア』(familia)は、2023年1月に公開された成島出監督の映画です。Shall we ダンス?で日本に社交ダンスブームを巻き起こしてくれた役所広司さんも、今年はカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞された世界的な名優になりましたね。役所さんが出てる映画というだけで、身を乗り出して見てしまいます。公式サイトはこちらです。
2023/07/14
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普通なら決して手放さない成功への鍵を、天才はあっさり捨ててしまうものなのでしょうか。子供の頃から類まれなヴァイオリンの才能を持っていた少年が、21歳を迎えて用意されたデビューコンサートの日、忽然と姿を消してしまいます。一体彼に何があったのか。真実が明かされたとき、人にとって最も大切なものは何かを考えさせられます。第二次世界大戦が勃発し、ロンドンに住む9歳のマーティンの家に一人の少年が父親に連れられてやってきます。ポーランド系ユダヤ人で同じ9歳のドヴィドルは、天才的なヴァイオリンの才能を持っていました。音楽関係の仕事をしていたマーティンの父親に、ドヴィドルを預けたいというのです。マーティンはドヴィドルとすぐに仲良くなりました。やがて始まったナチスのユダヤ人迫害に、家族を心配するドヴィドル。マーティンはドヴィドルの才能を称賛しつつ、嫉妬し、同情して兄弟のように共に成長していきます。マーティンの父親はドヴィドルを本当の息子のように可愛がって、高価なヴァイオリンを買い与え、財産を注ぎ込んで華々しいデビューコンサートを用意しました。しかし、素晴らしい客たちで埋め尽くされたコンサート会場にドヴィドルは現れなかったんです。事故か?事件か?リハーサルまでは会場にいたドヴィドルは突然失踪し、それきり行方知れずとなってしまいました。35年の月日が流れ、音楽関係の仕事をしていたマーティンが、ある手掛かりをきっかけにドヴィドルを探す旅に出るんです。彼の行方を辿るうちに次第に明かされていく真実。本当に切なくて、戦争は罪なものだと思いましたね。『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』(原題:The Song of Names)は、フランソワ・ジラール監督による2019年のイギリス・カナダ・ハンガリー・ドイツ合作映画です。マーティン役をティム・ロス、ドヴィドル役をクライヴ・オーウェンが演じていました。音楽映画ですので、音楽も素晴らしいです。演奏はレイ・チェン。第8回カナダ・スクリーン・アワード5部門(メイクアップ賞・作曲賞・歌曲賞・音響ミキシング賞・音声編集賞)を受賞しています。おすすめです。
2023/06/28
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弓矢は接近戦には向かないものと思っていました。でも3本も4本もいっぺんに射ることが出来てそれが全部当たるなら、マシンガンみたいな威力ですよね。ロビン・フッドと言えば弓矢の名手というイメージでしたが、命中した矢をすぐに引っこ抜いて違う敵に向かって放ったり、アクションの凄さに圧倒されました。レオナルド・ディカプリオが製作を手がけた新しいロビン像が見ものです。ケビン・コスナー主演のロビン・フッドは大好きな映画で何度かみましたが、もう昔の話であまり詳細は覚えていません。今日ご紹介するのはキングスマン: ゴールデン・サークルでとんでもないアクションを見せてくれたタロン・エガートンがロビンを演じています。バック・トゥ・ザ・フューチャーのマイケル・J・フォックスにちょっと似てる気がするんですが、皆さんはそう思いませんか?ロビン・フッドは、悪政に苦しむ貧しい庶民の味方、したたかでかっこよくて強くてミステリアスなイメージでした。今回のロビンはもっとリアルで庶民的なんです。中世イングランドの伝説的ヒーローの誕生秘話を描いた映画です。故郷に最愛の女性マリアンを残し、十字軍に仕方なく参戦した領主ロビン・ロクスリーは、戦地で最強の敵ジョンと出逢います。4年後、故郷に戻ったロビンは、領地が没収され、自分が2年前に死んだことになっていていることを知って愕然とするんです。しかもマリアンは別の男と良い仲になっています。縁あってロビンの元にやってきたジョンが、腑抜けになっているロビンに道を示すんです。人々から税金を搾り取り、教会と手を組んで国を操ろうとしている長官を倒し、貧しい人々を救おう。未熟なロビンに戦闘技術を叩き込むんです。特に弓矢を徹底的に。ジョンが鬼軍曹みたいでした。育成系のRPGのようで、私は好きでしたけどね。ロビン・ロクスリーがなんでロビン・フッドと呼ばれたのか。ロビンがいつも頭巾(フッド)で顔を隠して義賊活躍していたからなんですね。もの言えぬ庶民は、密かに正体知れずの彼を応援して壁にフードを飾ります。マリアンにはすぐにバレてましたが。ロビンのアクションもさることながら枢機卿と長官の極悪ぶりがいい味出してました。時代劇でも越後屋と悪代官が真っ黒でないと正義の味方が光らないですからね。敵だったジョンがなんでロビンに味方してくれたのかとか、おぼっちゃま育ちのロビンがどうして義賊の頭領になれたのかとか、うまいこと説明されていました。街の様子も美しく、戦闘もリアルで面白かったです。『フッド: ザ・ビギニング』(Robin Hood)は、2018年のアメリカ映画、オットー・バサースト監督作品です。世間の評価はイマイチだったようですが、個人的には面白かったです。好きなタイプの映画でした。
2023/06/23
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