えのき茸太郎

えのき茸太郎

子どもと出会う前



平成七年六月。なかなか暑く感じる年だったと思う。
最初の子が生まれる予定が近づいてきた。

私にとって初めてのこと。
どうしていいのやら不安な気持ちと、どんなんなんだろう?と言う期待のドキドキワクワクな気持ちであった。
・・どちらかと言うと不安が強かったかな。
なぜなら、子どもは苦手だったから。
どうやって接してよいのやら扱いが全くわからない存在だった。
よそ様にお邪魔し、子どもがいると困ってしまう性質だった。
赤ちゃんなども、見たところで一体どうリアクションすればいいのやら、ホトホト困り果てる。
かわいいともなんとも思わないから、適当な事を言ってはお世辞の類。
お世辞を言うのも、あまり気持ちの良い物ではないので、なるべく遠ざかるようにしていた。

ある日、仕事中に「生まれそうだぞ」と連絡が入り、病院へ。
病院に着いても出来る事は何も無い。ただ待つだけ。
何も出来ないし何かする訳でもないのに緊張していた。
待ってる間は祈っていた。
何にと言うわけではない。
「元気に生まれてくるように」「私の運の九割をくれてやるから、ちゃんと生まれて来い」「がんばれ」とにかく、そんな事をずっと考え祈っていた。
この「祈る」なんて事をしたのは、それまでの人生で初めてのことだ。そんなことをする自分にも驚いた記憶がある。


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