2012 GIANT IDIOM 0
購入までの軌跡
2012年3月現在、所有するチャリの中で最も新しい一台。
「IDIOM(イディオム)」シリーズは、世界最大の自転車メーカー「GIANT」が提案する、斬新なフォルムのミニヴェロだ。今やお家芸とも言える異型断面アルミパイプを駆使した、いかにも応力に強そうなトップチューブや、フルサイズのロードバイクに迫るホイールベース、WO規格(451)の20インチホイールの採用など、随所にGIANTの本気度を窺い知ることが出来る「走れるミニヴェロ」である。
デビューは2009年末で、カタログ的には2010年モデルが初出となる。当初は、上位モデル「IDIOM 1」及び下位モデル「IDIOM 2」の2ラインで登場し、共にフラットバーハンドルを採用した軽快車だった。
このIDIOM、ミニヴェロマニアの間では発売当初から非常に注目度が高かったが、二点ほど「?」な部分もあった。
一つは、折り畳み式のステム。本体(フレーム)には折りたたみ機構がないのに、なぜかハンドルステムは横に倒せるようになっている。はっきり言って、ハンドルだけが折れ曲がっても収納性にはそれほど寄与しないし、そもそもフォールディングバイク的な便利さではなく「小粒でも辛い」レーシーな走りを狙ったバイクなのに、いたずらにハンドル周りの剛性を損なう折り畳み機構はコンセプトに逆行しているように見え、そういった「振り切れていないところ」を惜しいと感じるユーザーが少なくなかった(実際、応力がかかるとキシキシと異音を発した)。
もう一つは、アップライト過ぎる乗車姿勢。上記の凝ったステムが伸縮式でやたらと長く、最も短くした場合でも、ハンドルの高さが今ひとつ下がりきらないので、上体が起きてしまい、高速巡航に向かないのだ。
そこで、マニアたちはフラットバーをドロップやブルホーンに交換し、ハンドルを遠くすることで少しでも前傾姿勢がとれるようにした。さらには、ステムそのものを切断して短くしてしまうツワモノまで現れた。要するに、IDIOMを「よりレーシーなミニヴェロ」へと近づけようとしたわけだ。
はたして2011年冬、そんな市場の声に応える形で登場したのが、ピュアレーシングモデルの「IDIOM 0」である。
IDIOM 1からの主な変更点は、以下の通り。
●アナトミックハンドルを採用。
●伸縮&折りたたみ機構を廃した、シンプルなステムに。
●コンポーネント他をすべてTIAGRA 10Sで統一。
●ディープリムのホイールを採用。
●フロントフォーク及びシートステーはカーボン。
●完成車重量は9.0kgに(IDIOM 1は9.5kg)。
IDIOM 1や2のユーザーが考えつくようなカスタマイズはすべて盛り込まれているどころか、それ以上の付加価値を詰め込んでいる。昔から、GIANTのコストパフォーマンスの高さには定評があるが、それにしても、望まれたIDIOMの未来形が、わずか2年で市販車として普通に店頭に並ぶことになろうとは、苦労してカスタマイズしたマニアたちのことを考えると、ちょっと気の毒な気もする。
また、何より驚くのはそのコストパフォーマンスの高さだろう。これだけの内容の完成車が10万円で手に入ってしまうのだから、ちょっと他のメーカーでは真似が出来ない。ユーザーは嬉しいかもしれないが、KHSやDAHONなどミニヴェロ専業メーカーにとっては笑えない話だ。
ところで…エンゾーがなんでIDIOM 0を手に入れる事になったのか。
お前には、既にミニヴェロ終着駅としての「 GIOS MIGNON(改)
」があったのではないのか?
いや確かにその通りなのであるが、まあ聞いて欲しい。
実は、それこそIDIOM 1のユーザーがそうしたように、MIGNONのパーツを色々変えてロード仕様に変更したまでは良かったのだが、実際に長距離を乗ってみて、あることに気付いてしまった。
まず、前傾姿勢が思いのほかきつかったこと。ミニヴェロは楽なポジションで楽しむ乗り物と思って買ったのだが、意に反して、ハンドルはずいぶん遠く、そして低く感じた。
さらに、シートの位置が想像以上に後輪寄りだったのも誤算だった。これはシートチューブの後傾がきついことが原因であり、股下長に合わせてシートの高さを決めると、エンゾーが普段乗っている フルサイズのBianchi
と比較して、より体の前方でクランクを回しているような感覚になり、かなり違和感が強かった。ペダリングの際、腰が引けたような状態で漕ぐため、今ひとつストレートに力が伝わらないのだ。
そんな違和感を感じていた折、ネット上でミニヴェロ乗りたちのインプレッションを読んでいると、どうやらミニヴェロというものは、そもそも非常にポジションが出しにくい乗り物であるという事が分かってきた。ほぼ1サイズ、多くても2サイズで展開している自転車であるから、数センチ刻みでフレームが用意されているフルサイズロードと異なり、はなから万人に合うようにはなっていないのだ。言われてみれば、その通りである。エンゾーは自分の迂闊さを呪った。
そういうわけで、自宅で ローラー台に固定したBianchi
にまたがることはあっても、MIGNONとはなんとなく疎遠になってしまい、仕事が忙しくなったことにもかまけて、ポタリングすらしなくなってしまった。
ここでようやくIDIOMの話に戻る。
実はMIGNONをヤフオクで落札する少し前から、当時デビューしたてだったIDIOMには興味を覚えていた。ただ、その時自分が欲しかったのはあくまでも「ドロップハンドルのミニヴェロ」だったので、フラットバーで乗車姿勢も立っているIDIOMには今ひとつ食指が動かず、一旦はスルーしていた。
ところが今年に入り、なんとエンゾーの自宅から徒歩で1分の所に、日本で5店舗目となる巨大な「GIANT STORE」が出現する。今までカタログでしか見たことがなかったようなGIANTのあんなモデルやこんなモデルが一同に介し、実際に触れることが出来るという、危険極まりない『魔窟』である。
オープンしてすぐに赴くと、たくさんあるモデルの中で、やはりひときわ異彩を放っていたのはIDIOMだった。お客もまばらな店内で、完全に足を止めてしげしげと眺めているエンゾーに、店員さんが寄って来る。
良かったらパンフレットをお持ちしましょうかと言うのでお願いしたところ、その中に、見慣れない一台が掲載されていた。ドロップハンドル仕様のIDIOMである。ショールームにはなかった。にわかに鼓動が高まる。エンゾーは努めて平静を装いながら、さり気なくパンフレット上を指さした。
「店内には見当たらないようですが、これは何ですか?」
「ああ、それは2012年モデルから発売になったIDIOM 0です。大変ご要望が多かったので、ラインナップに加わりました。人気モデルで、入荷してもすぐに売れてしまうんですが…」
これだ、これだよ父さん!俺が欲しかったのは!一気にテンションが上がる。
「だがしかし」と理性という名の天使がささやいた。ちょっと待て。自分には既にMIGNONという相棒がいるではないか。そんな無駄遣いが許されていいとでも思っているのか?
衝動的に「予約します!」と喉まで出かかった言葉は、しかし発せられることなく飲み込まれ、エンゾーは意味もなく肩を落としてショールームを後にしたのだった。
そう、その時は買わなかったのだ。
ではなぜ、いま手元にあるのか?
結論から言うと、ヤフオクで落札してしまいました。
あえて言わせて欲しいのだが、これは決して、積極的に落としたのではない。たまたま破格値で出品されている新品同様のIDIOM 0があり、すでに数件入札されていたのを見て、完全に気まぐれで、その時点での最高入札価格に1000円足して入札したのだ。結果、エンゾーが最高入札者となったが、終了日まで余裕があったこともあって、まったく気にも留めていなかった。
(どうせ、これからどんどん値が釣り上がっていくだろうし)
とタカをくくっていたのだ。
ところがそれから5日間、くだんのIDIOMには一件の応札もないまま、最終日を迎えてしまう。結局、エンゾーが落札者となった。ひー。
(MIGNONとの比較。ホイールベースやシートアングルの違いが歴然。タイヤは同じWO規格(451)の20インチで、両者とも高速巡航を念頭に置いた設計思想であるが、最低地上高はIDIOMの方が少しだけ高い)
そういうわけで、嫁には当然内緒である。まだ試乗程度にしか乗っていないが、一番気になっていたポジションは、拍子抜けするほど簡単に出た。ミニヴェロとは思えないロングホイールベースの恩恵もあり、乗り味は低速から安定感抜群で、極めて快適だ。
ちなみに、適応身長は150~180cmとなっているが、ただでさえフレームがワンサイズしかないミニヴェロで、低身長側への適応範囲がここまで広いのはかなり珍しい(トップチューブの位置の低さ故であるが)。と同時に、IDIOMが割とよくオークションで放出されている理由は、実はこの辺にあるのではないかと思っている。身長が高く手足が長いユーザーには、シートアングルが立っていることがマイナスに働き、懐が窮屈になるためレーシーなポジションを取りにくいのだ。そのことは、身長の低いユーザーにとっての使いやすさと表裏一体であるが。
デフォルトで既に高い完成度を誇るパーツ構成だが、あえて難点を挙げるとすれば、TIAGRAのブレーキパッドはグリップ感がそれほど良くはなく、ハードブレーキングが出来ない。命を預けるパーツなので、ここだけはアルテグラ以上に換えた方がいいだろう。
あと、昔からあまり評判が芳しくないKENDAのタイヤは、そのうちパナレーサーあたりと入れ替え予定。
…でも、MIGNONどうしよう(´・ω・`)。
後で買い足したもの
まだなし。
パーツデータ
フレーム: ALUXX-Grade Aluminum OLD130mm
フロントフォーク:Carbon
BB: SHIMANO BB-4600 68mm
ギアクランク: SHIMANO TIAGRA 39/52T 165mm
チェーン: SHIMANO TIAGRA
Fメカ: SHIMANO TIAGRA 直付用+34.9クランプバンド
Rメカ: SHIMANO TIAGRA
シフター: SHIMANO TIAGRA 10S
ブレーキ: SHIMANO TIAGRA
スプロケット: SHIMANO TIAGRA 10S 11-25T
ヘッドセット: VP セミカートリッジ
ハンドルバー: GIANT ROAD 26.0 400mm
ハンドルステム: Aluminum 25.4 60mm & Non Folding
サドル: GIANT PERFORMANCE LITE
シートピラー: Carbon 30.9x400mm
シートクランプ: Aluminum 34.9 SEATPIN
ペダル: Aluminum CAGE LITE
Fハブ: FORMULA 20H
Rハブ: FORMULA 24H
リム: HF081 20H、24H
スポーク: Stainless 14G
タイヤ: KENDA KONTENDER 20x1(451)
チューブバルブ: 仏式バルブ
■フレームサイス: 385(M)mm
■カタログ重量: 9.0kg