CONTAX TVS2
勝手にインプレッション
まだカメラのことをさっぱり分かっていなかった頃(いや、今だって怪しいものだが)、純粋に造形美に惹かれて「欲しいなあ」と思ったカメラがあった。それが、TVSである。カタログを読むと、そこにはザラザラと粒子の粗い作例が何点か載っていて、シャープさとは対極に位置する淡い絵画のような描写が、不思議と印象に残った。
もっとも、15万円と言う価格はそんな憧れを吹き飛ばすには十分で、たかがコンパクトカメラにどうしてこんな法外な値段がつくのかと、首をひねったものだ。
TVSは、スマッシュヒットとなったコンタックスの名機T2の発売から3年後に登場したモデルで、「ズームにしたT2」という位置付けであった。最短撮影距離を50cmに短縮、AFはパッシブになり、28mm~56mmというズームは必要十分で、T2での不満をほぼ解消したものになっていた。
そしてさらにその4年後に現れたのが、コストダウン版であるTVS2である。
初代TVSからの主な変更点は、次の通りである。
○ズームの方式がレバーからリングに
○ファインダーの液晶マスクを廃し、素通しに
○パノラマ機構の削除
○レンズバリアの内蔵とフレアカット枠の増設
正直、ズームレバーがなくなったのはデザイン的に寂しい。しかし、液晶でパノラママスクやパララックス補正なんぞをしようとしたおかげで、初代TVSはファインダーが暗く、おまけに変に黄色っぽかった。やはり、TVS2の方が道具としては使いやすい。そういう訳で、今でも中古市場ではTVS三兄弟のうち、TVS2が最も人気がある。
どうしてTVS3が2から正常進化してくれなかったのか、非常に残念である。写りはともかく、コンセプトやデザインは好きになれない。
TVS2の使い勝手は、なかなか良好である。AFの合焦が速く正確なので、ストレスが無い。また、コンパクトなズーム機にしてはそこそこ明るい(F3.5~5F6.5)ところも良い。発色は鮮やかで、こってりしている。描写は線が太めで、光線状況によっては被写体の周囲がにじんだような甘い写りになることもしばしば。また周辺光量の落ち方には独特の癖があり、うまく生かせばドラマチックなトンネル効果を生む。
解像感は(当然ながら)単焦点レンズには遠く及ばないが、コンパクトカメラでズームが付いているのだから、ここは素直に恩恵に浴するべきである。何より、このカメラで撮った写真は、切れ味鋭いミノルタのTC-1あたりとは別の意味で、見てすぐにそれと分かる個性があり、ふわっと優しい写りが楽しめる。
(フィルター+フード。なかなか精悍な面構えになる)
さて、T2では成し得なかった数々のことが出来るようになったTVSであるが、たった2倍とはいえ、ズームレンズを内蔵したことで、ボディサイズはT2よりも一回り大きくなってしまった。「コンパクトカメラ」と言うにはいささか憚られる大きさで、微妙な一線を越えているように思う。
実はここが最大のポイントで、「この大きさのズーム機を持ち歩くくらいなら、いっそのこと小型の一眼レフの方が使い勝手がいいんじゃないか」などという気持ちになりがちなのだ。機能を欲張ったことが、かえってその存在を中途半端なものにしてしまった感がある。たぶん、ユーザーの心理としては
コンパクトカメラ一台勝負 → ポケットサイズの単焦点
ズームで自由に風景を切り取る → 一眼レフ
という両極が居心地が良く、そのどちらにもなれないTVSは、いきおい出番を奪われることが多くなってくるわけだ。そつのない優等生ゆえの悲哀を感じる。
とはいえ、手放してしまった時にもっとも後悔した機材が他でもないTVS2だったことから、やはり不思議な魅力を持った名機であることに違いなく、いつか買い戻したいと思っている。
長所
○「そこそこ写るズーム機であること」それが最大の長所。バリオゾナーの描写は独特の味がある。
○パッシブAFなので、使い勝手が良い。露出も最低EV値が0.5と暗所に強く、極めて優秀。
○コンパクト機としてはそこそこ速いシャッタースピード。(プログラム時1/700)
○京セラお得意のチタンボディで、所有するヨロコビのあるかっちりとした質感。
短所
●Tシリーズ全般に言えるが「サファイアのシャッターボタン」あたりにバブルの面影が・・・。
●常時携帯するにはいまいちデカい。
●作動音が意外と大きく、ジージーうるさい。
●解像感パキパキの現代的な写りを期待すると、あっさり裏切られる。
超個人的オススメ度
(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆
偏愛度
(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆
Yahooオークション出現率
(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆
*TVSはびっくりするほど安くなった。今がまさに買い時。