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Quasi sol oriens
奇蹟
「奇蹟」
エディは心弾まぬ日々を送っていた。狙った女を手に
入れて結婚したというのに。評判の新妻で、新居だって
隅々まで掃除されている。なのにアガサの顔が鬱陶しい。
穏やかな笑顔が実は作り笑いでないと、誰が保証できる?
確かにアガサを奸計で口説き落とした。だがちょっとし
た、そう、ありがちな奸計だ。正当な対価も支払い済み
だ。
なのに家が鬱陶しくて、居酒屋へ通う日々。酒は憂さ
晴らしの友、気詰まりする女房よりも、商売女とのおし
ゃべりがずっと良い。エディはうそぶいた。
「結局俺は、結婚に向いてないのさ」
だが荒んだ生活は彼に、唐突に復讐した。
居酒屋から帰ったエディは大吐血したのだ。みぞおち
の下が引き裂かれるように痛み、脂汗が止めどもなく流
れる。さすがのエディも本気で死ぬと思った。そしてそ
のまま気絶した。
床に臥せていると、痛みが軽くなった。アガサはすぐ
薬を支度した。
「さ、これ飲んで。痛みが楽になるから」
「俺、死ぬかもな」
「お酒をやめて、悪い付き合いもやめれば、また元気に
なれるわ。きっと」
「保証はないだろ?」
「ええそうね。……牛乳飲んでくれる?」
「おいおい、ガキの飲み物じゃないか」
「とても良いのよ、こういう病気には」 ────
エディが床に臥せってから、アガサは今まで以上に外
で働くようになった。自然、エディは独り家に残された。
胃がキリキリ痛む。だが見舞いはない。話し相手もいな
い。ただ窓から空を、眺めるだけの日々。彼は不貞腐れ
た。友達甲斐のない居酒屋仲間に悪態をつき、神を罵倒
し、下らない噂をしているババアどもを呪った。そして
ひとしきり怒りをぶちまけると、再び空を見つめた。
晩秋の空は高く澄んで、白いちぎれ雲が風に吹き飛ば
されていく。エディは自分を雲に重ねた。所在なく、空
しく漂う雲。だが空は美しかった。そう、美しい。それ
は彼が、とうに忘れ果てていた感覚だった。自ずから、
吸い込まれるように魅入られていった。
体中の力が抜け、放心状態になる。痛みが少し和らい
だ。ほうけた状態で空を眺めるのが、一番楽だった。や
やあって、眠気が差してきた。エディはとろとろ眠りに
落ちた。彼の、新しい生活がこの時始まった。
その日アガサは親友の葬式に出かけてしまった。冬の
とても寒い日で、窓には重い雨戸が掛けてある。エディ
は目を閉じて、いつもの放心状態に入った。
とても静かだった。この家には最初から──百年前か
ら──誰もいないのではないか。そんな気持ちにさえな
った。ただアガサがいないだけだというのに。彼はアガ
サの温かさに思いを巡らせた。
アガサはどんな時でも朗らかだ。器量良しで評判の娘
が、不幸な結婚を強いられたという噂は、無論エディも
知っていた。だがアガサはそんな噂を気にすることもな
く、献身的に彼に尽くした。やがて少しずつ、彼の心に
あの笑顔が本物であって欲しいという願いが芽生えた。
欲深な願いだ! だがアガサは信心深い娘だ。他の娘な
らいざ知らず、アガサには裏も表もない。アガサこそ、
特別な娘なのだ。だが、なぜ? なぜそこまで信心深く
いられるのか。エディは目を閉じて、ひたすら自問自答
した。分からなかった。「どうせ俺には分からない」
自棄になって、全てを投げ出そうとしたその時。決定的
なフレーズが浮かんだ。
「キリストに倣いて」
エディには不思議な確信があった。もしも人生に転機
があるなら、今がその時だ。彼はもう何年も教会に通っ
ていなかったが、この言葉以外に答えはありえない。そ
れは遥か昔に定められたこと。アガサの犠牲と献身は、
ただこの一言に集約されるのだ。自分が良心の咎めにあ
い疑心暗鬼に陥っていたその時、アガサはひたすら誠実
を尽くしてくれた。夫のために、それ以上に、神様のた
めに。だからこそ、自分はアガサにどうしようもなく魅
かれ、辱めた。彼は自分の罪深さを恥じた。自分はどう
考えてもアガサには釣り合わない。アガサを自由にして
やりたかった。アガサには、自分のような男は似合わな
い。アガサの隣にいるのは、もっとずっと信心深い男で
なくては。だが離婚は許されない。やっと気付いて、彼
は初めて痛悔した。
彼は静かに啜り泣いた。教会は、離婚を許さない。
だが神は、永遠の善である神は、絶望と痛悔に沈む者
を決してお見捨てにはならないものだ。
不意に、信じられない考えが浮かんだ。突拍子もなさ
すぎて、最初は信じられなかった。だが彼は跳ね起きた。
そして上着を着るなり、教会へ走った。
司祭は暖炉の前で、聖書を片手にうとうとしていた。
エディは司祭を叩き起こすと、今すぐ懺悔したいと申し
出た。司祭も急な話で最初は驚いたが、改心したならそ
れも良し、善は急げと懺悔室へ入った。
二人は日暮れまで、そこから出なかった。
次の日、エディは知り合いの地主の森で、白樺とハシ
バミの枝をうんと取って来た。アガサが覗き込むと恥ず
かしそうにそっぽを向くので、物陰から見ることにした。
最初は何だか分からなかったが、じきに箒が一本できあ
がった。アガサは最初の一本を、自分用に貰った。
「素敵な箒。だけど、こんな特技があったなんて知らな
かったわ」
「ん……。しばらく養生も兼ねて、これをやってみる」
いつもなら居酒屋へ行くだろうに、今日は黙々と箒を
作っている。どういう心境の変化か興味津々だが、次の
日も、また次の日も箒作りは続いた。アガサは地主の家
まで、プディングを持ってお礼に出かけた。
「いつも主人がお世話になっております」
「いやいや。何に使うんだが知らんけど、知り合いのよ
しみだからね。病気は良くなった?」
「ええ、お陰様で大分。……箒を作ってるんです」
「そう。春には外で働けるようになると良いね」
そうだ、春には外で……。アガサは心なしか、うきう
きするのを感じた。何か良い流れが始まっている。きっ
かけは分からないが、確かに何かが起きている。アガサ
の毎日に、新しい張り合いが出てきた。
その冬エディは、四百本近い箒を作った。そして、新
しい春が来た。
ある日エディはアガサにうそぶいた。
「単に酒が飲めないだけさ。飲まなくなった訳じゃない」
だがアガサは騙されなかった。エディは人が変わった
ように働き者になったし、居酒屋へも寄らなくなった。
それに、日曜日には教会へ通うのだ! それでも時々、
アガサはエディが無理しているように思えて、少し心配
だった。そこである晩、親友のガイとベイティ夫婦を家
に招いた。
アガサはエディとガイにエールを出した。するとエデ
ィは困ったような口ぶりで言った。
「飲むと痛むんだよ、胃が」
するとアガサは笑って答えた。
「エールは滋養強壮に効くのよ。少しは飲んで」
頼まれれば悪い気はしない。エディは久しぶりの酒を
楽しんだ。そういう晩が幾度か続いたある日、エディは
ふと気付いた。ガイは、今までの居酒屋仲間とは違い、
生真面目で、冗談でも人の悪口は言わない。だがエール
を飲みながら男らしい話題を楽しむには、うってつけの
男だ。エディは程なくガイと親友になった。
エディはもう、飲んだくれて莫迦笑いすることもない
し、小憎らしい冷笑を浮かべることもない。ガイと二人、
エールを酌み交わし、さり気なく微笑むだけだ。
だがその口許には、男らしい自信が漲っている。アガ
サはそれが、とても嬉しかった。
(アガサの物語 了)
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