月浮かぶそら、輝くひかり。 -静かな夜空の小さなトモシビ。

第九章-意気地なし涼哉-



金曜日はいつも機嫌がいい。次の日から二日間休みが続くから。
『おはよう』
春香。・・・と誰かの声が同時に僕に話しかけてきた。
「おはよー。・・・なんだ、涼哉と藍か」
「なんだとはなんだ」「なんだとはなによー」
二人がほぼ同時に言った。その後に続けて涼哉が言った。
「せっかく話しかけてやったのに」
少し機嫌を悪くさせてしまったようだ。
「ああ、ごめん」
とりあえずこういう時は謝っておく。本気で怒らせてしまうわけにはいかない。
「わかればよろしい」
藍だった。なんか微妙なタイミングで微妙にムカつくことを言われたような気がするが一応こらえておく。
「最初は友達は春香しかいなかったけど・・・友達?が一気に二人も増えたなぁ」
「友達の後に「?」をわざわざつけるなよ!」
「そんな微妙な所に突っ込みはいらねぇ!」
僕たち二人のやり取りを見て春香と藍はクスクス笑っていた。
(なぁ、涼哉)
(あ?なんだよいきなり小声で)
流石に藍に聴かれる訳にもいかないので小声で話し始めた。
(お前、藍に告らねぇの?)
(は!?こ、告・・・!?)
涼哉の顔は見る見る赤くなっていった。春香と藍はそれを見て少し首をかしげている。
(まさか、このままずっと行くはずないよな?)
(う・・・そ、そりゃあ・・・。でもまだ先だよ・・・多分)
(なんで?)
(なんでって・・・しかたねぇだろ)
(だから、なんで?)
(だって・・・ふられるの嫌だし・・・そんな勇気ないし・・・)

「いくじなし」

僕はそこだけ藍や春香に聞こえる様にわざと大きな声を出した。
「う、うるせぇ!」
「うるさくねぇ。」
わざと冷静に反論した。
「しかた・・・」
「もう教室の前だぞ」
涼哉の言葉を遮る様に言った。
「ぐ・・・ぅ・・・」
涼哉は仕方なく自分の席に向かっていった。
少し可愛そうなことしたかな?と思いつつも自分も席についた。


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