月浮かぶそら、輝くひかり。 -静かな夜空の小さなトモシビ。

act.2-Third- 属性



ルイスが出て行くと、一気に教室が騒がしくなった。皆よほど我慢していたのだろう。
シンクは相変わらず外を眺めていたが、ふと人の気配に気づきそちらに顔を向ける。

「シンク君……だよね」

「何か用か?一番の……」

「アライアン=クリフェイドだよ。アライアンでいい。君は本当に何も興味がないんだな」

「……。」

暫しの、無言。特に何かを言い返すこともなく、またシンクは窓の外に目を向けようとした……が。

「ほんと、あんたってなに考えてるのかわからないわね」

リンが口を挟んできたため、その動作は途中で止めることになった。

「……お前も何か用か?」

「お前じゃない。リン=アンゼルシュタイン。貴方に少し興味があるだけよ」

「それ同感。なんか不思議なオーラがあるって言うかなんていうか……。まぁ、色々と理解不能なんだけど」

「……物好きな奴らだな」

そう言うと同時にまた目線を窓の外に向けようとするが、

ガラガラガラ……

「席につけー!……あー。やっぱいいや、そのままで。面倒くさいし」

一瞬教室が静まり返り、またしても移ろうとしていた動作を遮られたシンクの、小さな舌打ちがやけに大きな音のように教室全体にいた者の聴覚を刺激する。

「んぁ?誰か今舌打ちしなかったか?……気のせいか」

いや、気のせいではないだろう。と皆心の中で思いつつも誰一人口には出さなかった。

「あー、うん。これから属性検査を行う。名前を呼ばれたものは前に来てくれ」

そう言ってるルイスは自分の持っていた水晶球を教卓に置く。占い師にとっては必需品の商売道具──と酷似しているが、薄く白みがかった半透明で、その中心には水晶球の10分の1程度の小さな黒い球体のものが渦巻いている。

「一応説明しておくが、これは属性球といってな。この属性球に手をかざして少量の魔力を流し込めば、その魔力の質に属性球の中心にある黒い球体が反応して、属性球全体がその属性の色に変わるようになっている。
属性には主に7つの種類があるが……これも一応説明しておくか。
まず5大属性の1つ、『炎』属性。火属性とも呼ばれる。属性球は赤に変色する。
2つ、『水』属性。属性球は青に変色する。
3つ、『風』属性。属性球は緑に変色する。
4つ、『地』属性。属性球は茶に変色する。
5つ、『雷』属性。属性球は黄に変色する。

ちなみに『雷』ではなく『空』が5大属性としては正しいが、風属性と統一され、6つめの属性『雷』が一般常識になっている。くれぐれも間違えるなよ?」

はーい。と数名の生徒が相槌を打つ。

「で、だ。5大属性の他に3つの属性があるわけだが……そのうちの一つは使えるものが今の時代にはいないだろうと言われている。まぁ、一応全部説明しておくか。

1つは『光』属性。この手の術者は珍しくてな。この属性を持つ者は将来医者になれることは確実だろう。属性球は白に変色する。

2つ目は『闇』属性だ。これも珍しい。魔法の中では一番威力が高く、相応の魔力の持ち主出ないとスキル自体扱うことが出来ない。まぁ、相応の術者でなければこの属性は持ち合わせていないがな。

そして最後の3つ目だが……。『無』属性だ。この属性は……"無"とは言われるが、実際無属性魔法は存在しない。実際には【どの属性にも値する属性】と言われているが……正直術者がいるのかどうかもわからん。属性球は……何色に変色するかわからん。恐らくさっき言った属性以外の色がでるんだろうな」

と、曖昧な答えでごまかた。
ルイスは一度見てみたいものだな。と、笑いながら付け足す。

「んじゃ、始めるか。アライアン、前に来い」

「わかりました。……じゃあ、言ってくる」

と、シンクとリンに向かって小さな声で言う。

「いってらっしゃい」

「……」

リンは無愛想ではあるが、そういうことに関しては律儀なのだろう。しっかりとアライアンに言葉で送るが、シンクはただ目を向けるだけだった。


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