月浮かぶそら、輝くひかり。 -静かな夜空の小さなトモシビ。

act2-Six- 属性検査~シンク編~



「ああ、それでいい。直に色が変わる」

ルイスが言うとほぼ同時に、中心にある黒い物体が渦を巻き始める。黒い物体は徐々に全体に広がっていく──が。
色が変わる気配がない。いや、微かに変わっているのかもしれない。
その色は赤でもなく、青でもなく、緑でも、茶色でも、黄色でも、まして黒でも白でもなく。ただいっぺんの曇りもなく属性球の奥の景色を映し出していた。
属性球の色は……『透明』。

「……おい、なんだこれは?」

眉間にしわを寄せ、険しい表情でルイスは属性球を見続け、色を変えた当の本人に問いかける。

「……属性球だ」

「そんなことは見ればわかる。この色は何属性だと聞いている」

「さぁな。俺は重力魔法と治癒魔法以外に使ったことはない」

「闇と光……?いや、二属性ならばリンのようになるはずだ……では、これは……?」

【そして最後の3つ目だが……。『無』属性だ。この属性は……"無"とは言われるが、実際無属性魔法は存在しない。実際には【どの属性にも値する属性】と言われているが……正直術者がいるのかどうかもわからん。属性球は……何色に変色するかわからん。恐らくさっき言った属性以外の色がでるんだろうな】

属性検査を行う前にルイスが言っていた言葉が、シンクの頭を過ぎり、すぐに消えて行く。

「見たことない色ということなら、さっきあんたが自分で言っていただろう」

「いや……しかし……アレは存在しないはずだが……」

「確認されていなかっただけ。それだけの話ではないのか?」

「最もな意見だが……俄かに信じがたい。あとで理事長にでも確認しておこう。戻っていいぞ」

「……」

シンクは何も言わずにその場を去り、自分の席へと座る。

「……まったく、わけがわからんな、このクラスは」

誰にも聴こえないように、聴かれることのないように、小さな声で呟く。

「──次、13番!」

半ば投げやりに、事を進めるために、また作業を再開した。


──「おかえり」

「あぁ」

気のない返事で、自分が戻ってきたことに反応したリンに返事をする。

「で、シンク君の属性はなんでした?」

「……知らん。透明だ」

「「透明?」」

見事に二人の声が重なり、シンクは露骨に嫌がる表情を見せる。

「透明って何よ?」

「知らないといっている」

「知らないって……今までシンク君はどんな魔法を使ってきたんです?」

「重力系と治癒魔法しか使ったことはない」

シンクがそういうと、二人とも驚いたような表情を見せた。まるで自分の属性を理解していなかったのか、という風に。

「それだけ聴くと私と同じ二属性の魔法使いになるけど……透明色となると話は別よね」

「うーん……ルイス先生の話でいえば無属性なんでしょうけど……今は先生の発表は待つしかなさそうですね」

「ええ、考えていても仕方ないし、今は待つしかなさそうね」

「……」

またしても話に入る気のないシンクは、窓の外の世界を見続けていた。


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