尊厳





コトバで、他人の人生を否定するのは、簡単だ。

その人が一生懸命に取り組んでいることを、貶 (けな) せばいい。

たとえば、その人の感性で、その人の文体で、心をこめて、毎日、
時間をかけて一生懸命書いた日記に対して、たった一言、心ない
メッセージや書き込みをすれば、その人を全否定できる。
少なくとも、日記を書いている本人に、自分の人生を全否定されたと
感じさせることはできる。

書き込みをした人は、仕事で嫌な事があったのかもしれないし、
酔って八つ当たりする対象を求めただけだったのかもしれないし、
アクセス数が多いサイトに嫉妬するというケチでちっぽけな理由
だったかもしれないし、最初からどうしようもない偏見を抱いている
人間だったのかもしれないし、あるいは根本的に自分や他人の存在を
否定したかったのかもしれない。

いろいろな理由で、他人の人生や、他人が時間とエネルギーを注いで
一生懸命に創ったものを、コトバによって簡単に否定できてしまう。

そして、残念ながら、そういう人種は、後から後から、現れる。




しかし、どんなに他人の感情を傷つけようとしても、人間には、
誰にも奪えない 尊厳 がある。

他人がどうやっても否定したり奪ったりすることはできない、
その人だけの、 かけがえのない人生 が、ある。


 "No one can hurt your feeling without your permission."
                ------ Jacqueline Kennedy


他人が自分の心を本当に傷つけることができるのは、自分自身が
許可した場合だけなのだ。

ケネディ夫人もまた、若くして最愛の夫を亡くした後も、マスコミに
不快なことや恥ずかしいことを、面白おかしく報道されつづけた。

しかし、心の核心部分には、誰にも、どんなコトバにも侵しえない
自分が、自分の人生が、存在することを知っていた。

そもそも、相手は、本当の自分を知らない。
自分も相手を知らない。
知らないものを、 真に 否定できるはずがないではないか。




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