ジャガイモ畑



一人暮らしをしている老人が、裏庭のジャガイモ畑を耕そうとしていた。

しかし、年のせいで、鍬をふるう力がなかった。

昨年までは、親孝行の一人息子が代わりに耕してくれていたのだが、
残念ながら息子は今、刑務所に入っている。

老人は、息子に手紙を書いた。

「残念だが、今年はジャガイモが作れそうにない。お前さえいてくれたら、
畑を耕してもらって、今年もおいしいジャガイモが実ったはずなのだが、
わしだけの力では、どうにもしかたがない・・・・」

数日後、息子から返事が届いた。

「おやじ、裏庭の畑を掘ったらダメだぞ!そこは、オレが“ホトケ様”
を埋めた場所だ。オレが務めを終えて帰るまで、裏庭だけはそっとして
おいてくれ・・・・」

手紙が届くのとほぼ同時に、地元の警察が数人やって来て令状を老人に
示した後、裏庭の畑を隅々まで掘り返した。

しかし、結局、“ホトケ様”は見つからなかった。

警察は老人に謝り、去っていった。

数日後、息子から手紙が届いた。

「おやじ、もうジャガイモを植えてもだいじょうぶだよ。どうだい、
土が柔らかくなっただろう・・・・」






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