BONDS~絆~

BONDS~絆~

ハート(白)

緑の丘に一本の桜の桃色が良く映えていた頃、俺は3年になった。灰色のコンクリートで作られた校門は事務員の人によって磨かれたのか、妙に真新しい艶が出ていた。勿論、この校舎はまだ20年しか経っていない真新しい校舎だ。そもそも、俺がこの高校に入りたいと思ったのはカリキュラムや資格の有無の必要性、または取得数等の社会的なところではなく、制服だった。それ依然に制服に惹かれた。ズボンはグレーで近くで見ないと解らないような赤と青のチェックで、ネクタイは3年間同じだが1番願っていた生地の主体は紺で赤と青の斜線が右上から左下へ流れている。ブレザーは紺で、左右にあるポケットには中学の頃のツメ折りとは比べ物にならないくらい多くの物が入るのが予想された。入学し、高校生活に慣れてくると表面上、制服に対して何も感じないのだが、他校の制服を見ると何故か不意に優越感に浸る癖があるのは無意識のうちに愛着を持ってることがわかる。3年経った今も変わらない・・・というより今年でこの制服を身に纏うのが最後だと改めて思うと入学した頃より深く確かな愛着が表現される。気分はまだ2年、最高位学年になった気分も部活で3年が引退した頃から味わっているからコレと言って3年になった実感は沸いてこないのだ。校門をくぐり玄関にある各クラスごとの靴箱に張られている紙を1枚1枚確かめると俺はB組だった。3Bと聞くと金八先生のあの河原を思い出すのは俺だけだろうか。クラスの靴箱から自分の靴箱を探し当て上靴に履き替えた。階数は3階から2階になり、教室へ向かった。先程玄関では人が余りにも居すぎて誰と同じクラスになったのか迄見えなかったが、クラス数が少ない為3年間同じ奴というのはいるものだ。教室に入るとそういう奴が俺に声をかけてきた。

「お!腐れ縁だな」

「お前は相変わらずだな」

「はは!まぁな!女の1人や2人何てことねーよ」

一見不特定多数の女子と間を持っていそうな言い方だが実際はその逆だ。つまり、そいつは春休み中女にフラれたのだ。

「お前はどうよ?」

「俺は・・・」

「まだか・・・」

「あぁ。気長に待つさ、俺は誰かと違って短気じゃないからな」

「よく言うぜ、キレたらお前の方が手つけられないって皆言っているぞ」

「そうか」

話を戻し、俺が気長に待つと言ったのは話の流れの通り女の話だ。中学の時唯一好きだった女がいた。共に唯一の女友達でもあった。比較的人に自分から話しかけるという行動を起こさない俺はいつも受身だった。腐れ縁のアイツ、菘(すずな)は中1の時1番初めに話しかけてきたやつだ。

「俺が思うにお前は中学から友達作らなさすぎ」

「今更言うか」

「俺と友達で良かったな」

「こっちのセリフだ。話しかけてきたのはお前なんだから。俺と友達で良かったな」 

「そうだな」

久々の会話。その時の俺には孤独の本当の意味を知らずに生活を送っていた。知らなくても良い、惨い程イタイ孤独を。

「明日暇?」

「暇じゃない」

「あいつ待つのか。多分お前が友達出来ないのもそのせいだよな」

「は?どういう意味だよ」

喧嘩腰で言ってみた。

「怒るなよ、あいつのこと考え過ぎなんだよ。男になれよ!」

「熱くなるなよ。・・・しかも男になれとか今時じゃねぇし」

「昔とか今とかそんなのどうでもいいんだよ!お前は女々しすぎなんだよ!」

「は?マジふざけんな。いい加減にしろや」

段々キレてきた。

「待つなとは言わない・・・だけどな・・・」

「うるさい!俺に干渉するな!」

「あーそうかよ。じゃーもうしらねーよ!!勝手にしろ!!」

この日初めて菘と喧嘩した。喧嘩・・・つぅか俺悪くないし。だから喧嘩というのだろう。翌日学校に行っても俺と菘が話すことは無かった。これがまた結構面倒だった。
だから俺は仲直りしようと思ったのにあいつは・・・俺ももうどうでもよくなってきた。そうして不機嫌な日々が続いていく中、ある日帰宅すると一通の手紙がポストに入っていた。表には俺の名前が記されていて裏には楓と書かれていていた。もう1度表を見ると切手が貼られていない。ということは家に来たんだ。急いで家に入り部屋へと駈けた。ビリッと音を立てて封を切った。手紙は彼女らしい内面だった。


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