BONDS~絆~

BONDS~絆~

告白

ハート(白)

「・・・」
静かに風がオレンジの葉を揺らす。静寂の中その葉音だけが妙に清々しく過ぎていく。小さなシャックリと共に。隣に座っている楓はまだ19だ。結婚なんてまだ早い。遊びたい年頃なのにスッチーになるし、妙に大人なところが多いけど1度剥がれるともう元には戻らない。
「私だって結婚は好きな人としたいわ。だけどそれよりも今まで私のわがままを聞いてくれた両親の方が大事なの・・・」
「本音を両親に言えよ」
「そんなこと言ったらまた迷惑かけることになっちゃう!」
「・・・その男に会わせてよ」
「何する気?」
「話したい。どんなヤツなのか」
「いい人よ。苦労しないと思うし」
「苦労しないのと幸せは違うだろ。苦労した方が幸せになれることだってあるんだ」
「・・・そうだけど仕方ないじゃない。完璧な結婚をしてる人なんていないわ」
「楓が第1号になればいいじゃないか」
「私は留学させて貰っただけで十分よ」
「お前のこと待っている男だっているのにか」
「え?」
ヤバイと思った。俺の感情を伝えるつもりは無かったからだ。
「・・・誰か私を待っていたの?」
「・・・」
言うべきか、言わぬべきか・・・結婚を止めるにも俺の告白じゃ楓の気持ちが揺らぐことはないだろう。・・・だけど言うことで結婚が取り消しになったり何かに作用するなら言ったほうがいいよな。
「俺だよ」
「え?」
「・・・俺が待っていた。友達作らない程待ってた。なのに・・・唯一の友達と楓が付き合っていたの聞いたらどうでも良くなった訳でないけど、何て言うかやりきれない」
「じゃあどうして結婚止めるの?」
「まだ好きだからだよ。結婚してから想い伝えるのは卑怯だろう?それに止められたら止めたいし・・・」
「・・・うん。私も結婚はしたくないよ。本音話してくれたから話すね。彼はエリート大学を出て、エリート会社に勤務している人なの。お父さんとは別の会社なのね。でも性格はとても大らかで典型的な良い人なの。優しすぎてもったいなくて・・・私もっと自分を表現してくれる人が好きなの。菘や貴方のようにね。だから優しすぎるのはかえって苦痛なの。だから・・・結婚やめたいけどお金の為に結婚するなら愛は関係無いというのが頭にあって・・・」
「でもそれじゃ幸せにはほど遠いよね」
「うん・・・私だって幸せにはなりたいけど両親にも幸せになってほしいの。だから私結婚するわ」
止めるはずがかえって勢いづけてしまったようだ。そこにタイミング良く携帯が鳴り、相手は菘だった。
「はい」
「金何とかなったぞ!」
「は?」
「楓の結婚相手、俺の父親の会社の部下だったんだ!説得すれば何とかなるし、親父が楓の為なら金くらい何とかするって言ってるんだ!楓は留学で十分とか想っているかもしれないけどもっと頼れよ!お前はもっと幸せになる資格あんだから!」
「聞こえただろう?」
携帯を耳から外し楓に向けた。楓にはすべて聞こえていたらしくボロボロ泣いていた。
「菘と話して良い?」
「うん」
「菘・・・菘・・・久しぶり・・・」
「あぁ聞こえただろう?」
「うん・・・アリガトウ・・・」
しみじみとそういう楓の姿は俺の存在を忘れているかのように愛しそうな声をしていた。
「ううん・・・まだ話してない。うん、これから話そうかなって想っていたの。そしたら菘から電話来るんだもん・・・うん。解った。今日は本当アリガトウね。ん?・・・うん。今度ね。アリガトウ・・・頼っちゃうね・・・うん・・・ふぇ・・・」
涙でうんとすら言えない楓、俺の前では出さない本音、全てが別の男と結婚するやつのセリフかと思われた。明日こそ来るだろう。明日こそと思っていた俺の気持ちも知らずに楓や菘は色々進展していて、今でさえ楓の隣にいるのに幽霊のように、そこに存在しないかのようだ。
まさに孤独だ。



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