BONDS~絆~

BONDS~絆~

6章

ハート(白)


1日行かないだけで、学校ってこんなにも憂鬱になるものだろうか?
つまんない。
席で頬杖ついていても、妙は来てくれない。
だから私も行かない。
それに妙がいるところは鈴の所だ。
私の方から行ったら負けのような気がして嫌だ。それなら一人で机に伏していた方がまだマシ。
もう嫌いな奴に笑顔を取り繕うのは面倒臭い。

今朝喫茶店前を通って登校した。
店の前にはCLOSEの看板が下がっていた。
当り前のことなのに、昨日の私は何かを期待していたみたい。
もしかしたら・・・
彼がいて玄関先で黒板みたいなのに色々な色のチョークで今日のお勧めティーとか書いてある看板をエプロン姿で立てかけているところを想像した。
だけど喫茶店の前には黒板じゃなくてCLOSEの看板。
残念・・・。
でもよくよく考えてみると朝8時に開店している喫茶店なんて無い。
普通10時くらいよね。

学校は昼になっても楽しくない。
居場所がないとこんなにもどうにも出来ない気持ちになるんだね。
知らなかった。
妙に戻ってきて欲しい気持ちはあるけれど、鈴のところへ足を運ぶくらいなら一人の方がいい。
ようやく放課後。
今日も気分が悪かったから喫茶店へ寄った。
店のドアにはOPENの看板と黒板があった。
そのドアを押すと上の方にかけてあるベルがカララン♪とかわいらしい音が鳴る。

「いらっしゃいませ」

鼻の下にちょび髭を生やしたおじさんが私を出迎えた。
今日は水曜日。火・水は彼がいる日。
ちょび髭親父に席を案内されている最中も、席に付いてからも私はキョロキョロあたりを見回していた。
彼は居ない。

「ご注文は?」

「アイス珈琲」

「かしこまりました」

カララン♪
楽しげなベルも憂鬱な気分の私には気が散るだけ。
ドアの方なんて振り向きもせずただ頬杖をついて、図書館から借りてきた【空に手が届くとき】を読んでいた。
文字を上から下へ、また上へ戻してまた下へ・・・ずっと繰り返していただけだから、内容なんて頭にちっとも入らなくて、同じページを何度も見ていた。

「すいません!遅れました!」

途端に本を閉じてドアの方を見た。
すると彼がいた。佐々君・・・。
急に鼓動が速くなった。

「いや、大丈夫だよ。まだ混んでないから」

ちょび髭はそう言い、珈琲を注いでいた。

「俺サークル入ることにしたんすよ。それの説明会みたいな・・・」

「新大学生も大変だな」

「はは、まぁね。着替えてきます!」

ちょび髭親父がこっちへ来る。視線がバレたのかと思ったら手にはアイス珈琲。

「ごゆっくり」

優しくゆっくりとした声でそう言って背を向けて歩き始めた。
この背中が佐々君や、妙じゃなくて良かった。
人に背を向けられるってこんなに淋しいことだったんだね。


<7章>


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