BONDS~絆~

BONDS~絆~

7章

ハート(白)


日が傾き始め、本も一通り読み終わり、私は帰宅することにした。
佐々君の新たな情報も手に入れられた。
それに・・・それに、背を向けられる淋しさも知った。
思えば、私は今まで妙に頼り過ぎていた。
鈴とそんなに仲良くなかった時も、今も私は妙が好きだった。
彼氏より優先することも多々あった。大切だった。
なのに、鈴に彼氏を寝取られたことを話さなかったことで、何かが崩れた。
きっと友達なら彼氏との別れの出来事は重要なはずなのだ。
妙は自分から好きな人の話をしてくれたし、遊びに行く時や図書館に行く時も遊ぼうと誘ってくれた。
なのに・・・私は妙に何もしてあげられていないことに気付いた。
無意識のうちに妙に背中を向けていたのだ。
妙が私と同様に大切な友達だとこんなに淋しいことってあるかしら。
泣いた夜だってあるんじゃないかしら。
そう思うと、尚更妙を鈴から離したくなった。
妙は私のモノという感覚や鈴にはあげないという単純な独占欲だけじゃなくて、
それ以上に妙には何か感じるものがあった。
だから、私は妙に明日思い切って話す必要がある。
勿論、大切だよなんて表向きには露にしないけれど、気持ちをこめて妙が大切な友達だということを伝えたたい。
妙がそれを感じてくれたら、私はもう何もいらない。彼氏さえいらない。
例えそれが佐々君であっても。

翌日、朝早く登校した。
妙は既に来ていて、いつも通り挨拶を交わした。

「妙、話があるんだけど、ちょっと良いかな?」

「うん?良いよ!」

そうして、鈴から電話が来た翌日に話した場所へと二人で向かった。

「あのね・・・」

その場に着くと急にどもってしまった。

「あのね・・・昨日!そう、昨日ね。図書館で本借りたの」

「なんていう本?」

「【空に手が届くまで】っていうやつでね・・・でね・・・」

凄く面白かったんだよと言いたかったが、喉が詰まって痛くて、目があっつくて涙がぽろぽろ零れて来て何も口に出せなかった。

「冴?どうしたの?!」

別にどうしてもいないのだ。
ただ、遠まわしに妙が大切だよ、大好きだよ、今まで何もきちんと色々なこと話してなくてごめんねって言いたかったんだ。
普段そんなこと言い慣れていない私だから、こんな大事なときに詰まってしまう。

「あのね・・・私」

私の手を取り、妙がゆっくりと話し始めた。

「最近、冴が遠くにいる感じがしていたの。だけど・・・冴もそうだったのかなーって、今冴の涙見て思っちゃったんだ」

「うん・・・ゴメンネ」

「ううん・・・」

ようやく親友になれた気がするよ。

<8章>


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