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2013年09月06日
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テーマ: 實戦刀譚(65)
カテゴリ: 實戦刀譚

軍刀修理実施中に於ける観察考究の概略


 外装及び刀身の各部概要


 刀緒の要不要につきては、実験上不必要を唱えし者多かりしが、
また中間説を唱え、単に四寸のものとなし、
戦闘にあたりては左手をこの中にさし込み右手はそのままにて鍔もとを握る。
撃剣に於いてもまた実戦に於いても、
左手は本能的に柄を離れぬものたりとの説をなせり。(土肥原部隊、磯谷部隊)
これならば急々に抜き合わせ、
刀緒を用うることなくそのままにて戦うとも何ら支障なしといえり。

 刀緒をつくる猿手には、絹紐製、皮革製、金属製の三あり。
絹紐製には損傷多く、なめし革にて細革を包みて縫合せたる紐は強靭なり。
 さらに ∩ のごとき銅または真鍮製の鐶〔かなわ〕を用いたるものあり。
この鐶にさらに小鐶を用いたらんには、刀緒の磨損を減じ得るべし。

 新制式にては、茶褐色の純絹製、
木綿の上に絹糸にて巧みに包みたるいわゆるクルミと称するもの
人絹製の三種が多く用いられ、
右の中クルミにて巻きたるものほとんど総数の九割を占め、
この物にて巻きたる柄は例外なく目貫の辺より切れ始め、
全体に木綿の心(※芯)を露出したるもの多く、
純絹製には、相当手ずれありしも磨損の度少なく、
むしろ人絹製綿混織の方却〔かえ〕ってクルミよりも
保持力長きがごとく見受けたり。
 純絹製の物に、樟脳油〔しょうのうゆ〕をもってうすめたる漆を、
薄くひきたるものを用いたるものあり。(後宮部隊某部隊長)
また、特に麻糸にて製造せしめたるものを用いたるものあり。
(土肥原部隊某将校)
両者とも至極強靭にして考案の妙を発揮せり。
 古様式には、右の外〔ほか〕小倉木綿を折りたるものをもって
巻きたるものありたるが、案外強靭なりしは一考すべきなり。
その他皮革にて巻たるもの、またはその上を漆にて塗りたるものあり。
巻き方につきては通常ヒネリと称するものも多かりしが、
中にはツマミとて重なる部分を丸紐のようにして巻きたるものあり。
また単にそのまま組み違えたる平巻きもあり。
 さらに古風の糸巻き等も若干見受けられたるが、
その七、八割はヒネリなりき。
巻き振りにも、形の美に囚われ、緊着力の欠きしものも相当にあり。
 古昔、眞田氏の発明したる眞田紐を以て、
山本勘助が陣中に於いて自ら考案して巻きしめたという勘助巻きを
(一本平巻きにて、一部をヒネリて巻く方法)を実施せり。
これを『一線巻』と名づけたり。

 鮫皮は近古以来柄の補強装飾として用い来たれるが、
今回折損せる柄の中、そのほとんど全部は
鮫皮を巻きたる柄木地と共に完全に折損離脱し、
一時的にても折損木地の上を補強し得たるものなし。
ただし漆にて表裏を塗りたるもの、(各部隊)
及び鮫皮の代わりに白色なめし革を用いたるもの、(磯谷部隊)を
見受けたるが、両者は折損せる木地を一時保強し得、
戦闘継続中柄の機能を不完全ながら保持したる点より見て、
一考の要ありと思料す。

 柄巻の汚損を防ぐため、または柄保強の目的を以て、
皮革あるいはゴム製の保護被覆をなしたるものあり。
紐にてかがりまたはホックにてとめたるは容易に取りはずれを得れども、
緊着して縫合したるものは、縫い糸を切断するに非〔あら〕ざれば
取り外す事を得ず、目釘替え等に不便なるのみならず、
雨水浸入後 むれ て半〔なか〕ば腐朽したるものもあり。
 また包帯用白布にて巻きたるものあり。
某地にては、接近せる敵の目標となりて狙撃を受けたることありしと。
 右の目的には、幅四分ほどの真田紐(茶褐色または國防色)にて
一本巻きに堅き平巻きを施し、
柄頭の下部に一端を織り込み引きしめたるをよしとす。
古様式刀にして、柄〔つか〕木地脆弱のおそれあるものは、
柄の腹背に薄き金属板を樋のごとくあてがい、
この方法を施せば折損の厄より免がるるを得べし。
『保強巻』と名づけて、多く実施せり。






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Last updated  2013年10月19日 05時10分51秒


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