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書籍の感想です。
今回は「夢より短い旅の果て」です。
旅情って言葉ありますよね。
この小説を読むと「ああ、鉄道旅してみたいなぁ」と思います。
そのくらいとても旅情を感じます。
物語の本線は大学の「鉄道旅同好会」(鉄道同好会、ではなく、「旅」が入ることが
この同好会のこだわりらしい)に所属していた叔父が謎の失踪を遂げてしまい、その謎を
追いかけるために、同好会の入会した香澄の成長物語なのですが、それに負けず劣らず
町並み、駅舎、鉄道そのものの素敵な描写に魅了されます。
例えば、 JR 氷見線の景色の美しさ。
景色の美しい場所はたくさんあると思います。
ですが、氷見線はそれだけではない。
空の蒼さ、日本アルプスの雪の白、日本海の水色が見事なコントラストを描き、さらに
その真ん中にトンネルがあることで、その絵の中に飛び込んでいくかのような、
「まるで自分が絵の中の一部になってしまうかのような感動」を味わえるのだそうです。
うーん、ぜひ見てみたい、と思っちゃいました。
さらに良いところは、この小説、単に見どころ満載な路線だけ書いているわけではないところです。
横浜市にある「こどもの国線」なんてものも取り上げています。
鉄道旅同好会は各駅でその路線に乗り、そのレポートを書くことを義務付けています。
こどもの国線は駅が 3 つしかなく、叔父の行方を追うという邪な理由で入会した香澄は
鉄道に詳しくないため、できるだけ楽な路線という理由でこどもの国線を選びします。
しかし、選んだことを後悔します。
こんな短い路線では、見どころも少なく、「旅」という言葉にふさわしいレポートを
書くことができないからです。
しかし、鉄道旅同好会の部長に鉄道とは人を乗せる乗り物であり、乗客それぞれに
人生があり、それぞれの旅があると教えられます。
そう言って、駅のベンチに座っていた男性に話しかけるのでした。
そして、それはそれは素敵なエピソードを聞かせてもらうのでした。
そうなのです。
こんな近くでも、こんな短い路線でも、「旅はできる」。この小説はそう教えてくれます。
いやー、良い小説です。
お勧めです。
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