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歩世亜さんComments
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米原万里さんはガンに罹っ
た後に、
あらゆる療法を試んでも適わず他界してしまったが・・・彼女が描くエッセイは素晴らしかったと思うわけで、以下の通り復刻して読み直して見ましょう♪
【他諺の空似】
米原万里著、光文社、
2006
年刊
<「
BOOK
」データベース>より
“
世界はことわざで連帯する”米原ワールド炸裂
!
遺作、待望の刊行。
<読む前の大使寸評>
米原ワールドの遺作とのこと。・・・
とにかく、エッセイストとしての米原さんの存在感はすごかったなあ♪
他諺の空似
他諺をもうひとつ、見てみましょう。
p142
~
147
<内弁慶>
家ではわがまま放題のマザコン息子や亭主関白気取りの夫が、マンションを買うときの値段交渉や、会社や役所に対する要求交渉に際して、家族を代表して頑張るか、というと、拍子抜けするほど意気地が無いのは、見慣れた風景ではある。
妻や子供に威張り散らす夫、部下に対して尊大な上司に限って、外面がむやみに良かったり、交渉事になると、やたら相手に対して物わかりが良くなってズルズル譲ってしまう、最低限言うべきことも言えないという
内弁慶(日本)
タイプが多いのだ。
それは、日本社会と日本人に限られた事情というよりも、人類、いや動物全般に普遍的な真実なのかもしれない。
というのは、高校英語で内弁慶に相当するものとして暗記させられた
Every cock is bold on his own dunghill=
オンドリは自分の糞の上では勇敢だ
は、イギリス起源というよりは、広くヨーロッパ各地で人口に膾炙している諺である。
自分の縄張りの中から外へ出たときの恐怖とか心細さは、生き物全てに通ずる真理なのだろう。世界各地の諺には動物を喩えにしたものが多い。
荒い雄牛も見知らぬ土地ではおとなしい
とニカラグアの諺では雄牛が登場するし、スペインのバスク地方では、
外では鳩、うちでは大鳥
と鳥に喩えている。
でも、
借りてきた猫
というふうに、猫を喩えにしている例は日本だけみたいなのだ。
5
匹の猫と同居するわたしは、己の縄張りの外に出たときの、文字通りの借りてきた猫状態を熟知しているので、まことに的確な喩えだと感心している。なのに他国の諺には猫の喩えが見当たらないのだ。むしろ、犬に喩える諺が、アジア中央部にやたら多い。
パキスタンでは、
自分の町内にいる限り、犬も虎の気分
といい、インドでは、
家では犬も虎
、トルキスタンやタジキスタンでは、
自分の家にいれば犬も王侯貴族
という。
しかし、今も複数の犬と同居するわたしは、散歩で遠くへ行こうとする犬の習性をよく知っている。縄張りから離れれば離れるほど犬たちは意気軒昂溌剌としてくる。どうも、犬に喩えるのは、間違っているのではないかと思うのだ。
もっとも、すっかりブッシュの犬としてポチの異名が定着した小泉を見る限り、たしかに驚くほど右の諺がピッタリ当てはまる。
先の訪朝では、
汝は自分の国ではスルタンのくせして、他国ではびくびくしている
というアフガニスタンの諺通りの振る舞いに終始してくれたのだ。
スルタンは、中世イスラム圏の絶対君主。治外法権みたいな存在だ。自国にいる限り、靖国参拝に違憲判決が出ても、涼しい顔してそれを無視し、憲法どころかイラク特措法にさえ違反してイラクに自衛隊を派遣し、完全に破綻した年金法改正案をファシスト的に審議打ち切り強行採決し、
30
年前に勤務実体のない会社に厚生年金を積み立ててもらうという犯罪行為を恥じることもなく、自分だけは法を守らなくてもよいと倣岸不遜に構えるこの男が、金正日と面と向かったとたんに、腰が引けて最低限の要求すら口に出せずに帰ってきたのだから可笑しい。
(中略)
そういえば、北朝鮮が核弾頭の保有をちらつかせてもアメリカ政府の対応はイラクに較べてずいぶん寛容だった。ミサイル防衛システムを日本や韓国に売り込むのに素晴らしい口実なのだろう。北朝鮮が韓国と統一などしたら、アメリカの極東における存在価値が吹っ飛んでしまうし。
そうか、そうか。小泉は
借りてきた猫
ゆえに金正日に優しかったのではなくて、ブッシュの忠犬としてあのように振る舞っただけなのかもしれない。
『他諺の空似』
4
:
内弁慶(日本)
タイプ
『 他諺の空似』 1 :大山鳴動して鼠一匹
『他諺の空似』
2
:頭隠して尻隠さず
『他諺の空似』
3
:甘い言葉には裏がある
『他諺の空似』
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