金魚の涙

金魚の涙

ss 『千年桜』

『千年桜』

この街も随分変わった・・・。
私がまだ弱くて強い風がふいたら倒れそうなほど足元も安定してなかった頃、ここは戦場だった。
何ヶ月も雨も無く私自身の水分も少なくなった頃私の周りでは多くの血が流された。

私はその血を吸って生き延びてきた。

暫くして無意味な戦は終わり、戦で無くなった人間たちの怒りを静めるために私の足元に塚が立った。
私はずっとこの塚を見守ってきた。無意味で終わった死者の怒りを吸収して・・・。

私は今人間の背丈を遥かに越して高いところからこの街を見下ろしている。
何も無かった戦場は次第に村ができ、街になり、今では私より高い建物があちらこちらに建っていた。
私のまわりにいた仲間たちはいつの間にか数を減らし、良く探さないと見つけられなくなった。

この街は随分変わった・・・・。
今では強い風がふいてもびくともしない私だが、この場所には死の香りはしなくなった。
しかし生きているはずの人間は生きているのか死んでいるのか解らない目で私の前を通り過ぎる。
あの頃の人間と変わらぬ目で・・・。

春には私は沢山の花を咲かせた、もう何千年も前に吸った血を栄養に濃い桃色の花を咲かせ人々の足を止めた。
人間は私を『妖艶』だと言った。
私には罪がある。
死んでいく人達を何も出来ずに見てきただけの私、
そして多くの血を栄養に生きながらえてきた『罪』

『妖艶な木』は私には相応しい名前だと自傷気味に笑った。

もう何千年もここにいて私は自分の罪を塚に懺悔する事しか出来ないのだ・・・。









あとがき
このssはわりと気に入ってます♪
どうゆうわけかこの時期に『桜』の話なんですが、「よし!書くぞ!!」って張り切って書き出したわけでもなく、何となく日記を書こうと思ってたらフラ~っと思いついて勝手に書きあがっちゃった代物です。
「おお!小説の神が降りてきた~!!」まさにそんな感じ(^m^)

2006/07/08更新



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