その3



 1995年4月23日、この日も夫とわたしは子犬をさがしに出かけました。
小雨が降ったりやんだりするすっきりしない天気の中、まず本厚木のペットショップを覗きました。やはりこれはという子はいません。
今日あたりもう決めたいと思っていたわたし達は、少し遠いけれども以前住んでいた横浜市の住宅に近い、エンジェルというペットショップまで足を伸ばしてみることにしました。新聞の折り込み広告に「ミニチュアダックスフンドたくさんいます」というようなことが書かれていて、一万円割引券がついていたのです。
わたしは仕事の関係でこのショップの近くを時々通ります。つい先日もちょっとよってみたのですが、どんな子がいるのかは詳しくは見ませんでした。今日は期待したいところです。
 狭い店内には十数匹のミニチュアダックスフンドの子犬がいました。ショーケースに入りきらないのか、ダンボールの中に入ったままの子犬もいます。
そんな中でブラックタンの女の子がさかんに愛想をふりまいて来ました。ひとなつっこい性格なのでしょう。器量もなかなかの良い子でした。
「この子がいいかな?」と夫に言うと
「眉毛のところがお面みたい。茶色い毛の子の方がいいな」
という答え。
レッドヘアの女の子は・・・いました。ぐっすり眠っているところだったので、わたし達は気がつかなかったのです。
ダンボール箱の中で、こてっと横になったかわいい子がいました。店員さんが抱き上げると、寝ぼけ眼で尻尾を振っています。
夫もわたしも一目でこの子を気に入ってしまいました。
「マンションで飼うので、きゃんきゃん吠えるような子は困るんですが・・・この子はどんな性格ですか?」
「女の子ですし、わりとおっとりしている子ですよ」
と店員さん。
ワインという名前は、黒い毛よりもレッドヘアの子に合います。この子がうちのワインに違いありません。わたし達はこの子をうちの犬に決めました。
 決めたのはよいのですが、値札を見てびっくりです。23万8千円とあります。
「割引券で1万円はお引きしますが、それ以上はだめです。この子とブラックタンの女の子はかわいいのでお引きできないんです。そっちの男の子はちょっと出っ歯なので、値引きできますが・・・」
などと店員さんは言います。
「内金を入れていただけるのなら、ご売約済みということで、数日間お預かりします」
という申し出に対して夫は
「今日連れて帰りたいんで、今から銀行に行ってきます。待っててください。」
この日は日曜日でしたが、夫は銀行に飛んで行きました。うちの犬にすると決めたからには、こんなダンボール箱の中に置いて行くことはできないと考えたのでしょう。
環境を急に変えないようにという配慮から、ダンボール箱に入れたまま抱いて車に乗りました。
やはり心細いのか子犬はヒーンヒーンとなきます。
箱から抱き上げてひざに乗せ、外の景色を見せてあげました。不思議そうな顔をして、子犬は外を眺めていました。



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