旅人の独白

旅人の独白

出会い


 実は最初は彼女の仕事振りを含めて、僕の気に入らない部下であった。
仕事ができないと言うのではなく、僕のスケジュール表を勝手に清書したり、客先に連れて行けばかなり目立つし、すぐ先方と仲良くなる。
それに酒が強くて遠慮がない。とにかくどちらかと言えば、明るく、積極的だが、変わっていて、型破りでアシストの女性としては扱いにくいタイプだった。  
当時、他の部署の部下の女性がうらやましく、比べて、自分の部下ながら、教育面で甘やかしすぎたかなと反省したくらいだ。
 ある時、逗子でヨットを借りて遊ぶという社内の行楽があった。
僕はうまく泳げないので行かなかったが、彼女達と一緒にヨットに乗った同僚から、後で「お前のところの**子、結構泳ぎうまいし、水着姿色っぽかったぞ」と言われて、なぜか面白くなかったし、誰に対してではないが、腹が立った。
女性とは意識していなかったはずなのに、今思えば知らず知らず彼女の存在が、僕の意識の中に強くなりつつあったのかもしれない。(続く)


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