旅人の独白

旅人の独白

別居


「人生に対する価値観が、どこか違ってしまったのよね。彼は、意地を張るなよ。悪かった。謝るよ。最後は離婚はしないぞと言い張っていたけど、もう一緒にいると精神的、生理的に苦痛なのよ。そう言ったら、私が家を出ることに反対しなかったわ。」と強い言葉とは裏腹に、堰を切ったように抱かれたまま僕の胸の中で泣いた。僕は、黙ってそのままずっと彼女を受け止めていた。偽善的な慰めの言葉だけは言うまいと心に決めたからだ。
その夜、僕たちは何もせず、ホテルのベッドの中で抱き合って朝を迎えた。そして、1ヵ月後、彼女は、友人の女性のマンションに引越して、ルームシェアをして暮らすようになった。
決して女の2人暮らし?は楽ではないはずだが、僕の経済的な援助は、きっぱりと断った。ただこれまでどおり、美味しいところや楽しいところに連れて行ってねというだけだった。僕は、一生、彼女の支えとなっていくつもりだ。そして妻が望まない限り、妻とも離婚せずに暮らして行こうと思う。身勝手だとは思うが、それが一番、だれも大きな不幸に落ちない選択だと思う。
彼女の仕事は忙しさを増している。毎日携帯はくれるが、一緒に会える日は、少なくなっている。それが心配だが、久しぶりに映画を一緒に見て、泊まりとなった日、彼女は激しく燃えた。
彼女の気持ちはまったく変わっていないことを確認した1日だった。これからも2つの生活を守りきろう。僕は、彼女と妻に心の中でそう約束した。


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