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夢うつつ



そういうと電話は切れた。着信の番号表示は、非通知になっている。いつもは、無視するが、きょうはとってしまった。

柴は帰ることにした。

新宿で電車に乗る。11時近くともなれば、車内は酒臭い吐息で、充満していた。いつも思うことだが、朝と夜では、どうしてこうも電車の中の雰囲気がかわるものか?

新宿をでると右下に西武新宿の駅が見える。つい数時間まえ、あの駅から上井草の松林の家に行き、そしてセックスをし、次の日、会社に行き仕事をする。日付けがかわるまで仕事をしたと思ったら、きがつくと昨日に逆戻りだ。そして、松林の家から『もう一度』西武新宿まで戻り、そして会社に行った。

どれが夢で、どれが現実なのかわからない。

ここでまた寝ると、ちがう現実、同時進行で進んでいる現実に引き込まれるのではないか?

家は、朝のまま。正確にいうならば、あの朝から、なんら変わった様子はない。柴は、松林と話がしたいと思ったが、肝心の電話番号を聞き出してなかった。

それに、松林とああいうことになったのは、はたして真実か夢なのか、まったく見当がつかない。

柴は寝るのが恐くなった。寝るとまた、ちがう現実社会に引き込まれるような気がするからだ。

しかし、精神的にくたくたになった柴のまぶたは、重くゆっくっりと落ちていった。いつものベットに倒れ混むように、眠りにおちていった。


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