酔眼教師の乱雑日記

世代間の意識と行動の相違


 今回のレポートは、女性に対するアンケートを実施し、「団塊ジュニア」・「新人類」・「団塊」・「戦前」にわけて、各世代の意識と行動を分析したものである。ファッション分析を中心にしている。


        世代間における意識と行動の差異に関する一考察(I)
             ―生活文化度の検証を目指して―」

1. 研究の目的

現在は,価格破壊,価格革命,それらを実現した新業態の誕生、規制緩和の進展,それに伴う外資流通企業の進出による大競争時代の到来などの現象に代表される「第二次流通革命」の真っ最中にあり,わが国の流通システムは大転換期をむかえている。

このような流通構造の変革の原因は、産業内の競争環境の変化に起因する部分もあるが、購買者である消費者の価値観・意識・行動の変化による部分が大きなウエイトを占めていると考えられる。90年代のバブル崩壊後の低迷する経済環境の中で、消費者はその生活文化度1)を安定型生活文化度からエンジョイ型生活文化度へとシフトし、単なる商品の購買者から生活者へとその立場を転換し、生活空間を重視した意識・行動をとるようになっていると考えられる2)。

そこで、生活者の生活実態や意識・行動を調査分析することによって、生活者の生活文化度を検証することを目的にして、前回は女子学生の意識・行動に関する調査・分析を行い、彼女たちの生活文化度がエンジョイ型へと変容しつつあることを示した3)。生活文化度は、それぞれの世代が過ごしてきた時代背景、その時々の経験、現在の経済環境や家庭・生活環境などによって異なると考えられる。そこで、今回は、20歳以上の社会人の女性を対象として、生活実態、生活意識と関心、交流と余暇、ファッション意識、購買行動などについて調査・分析を行い、世代ごとの意識と行動の特徴を明らかにすることを目的にした。

2. 研究調査の概要と分析方法

2-1. 調査方法

調査の対象は中部、近畿、中国、九州を中心とした地域の、短期大学生、四年生大学生の母親や姉妹及び一般社会人である。調査サンプル数は855である。

調査方法は質問紙調査法で行った。基本的には回答者に質問用紙を配布し、郵送によって回収する方法により1999年10月~11月に実施した。



2-2. 分析方法

5歳ごとの区分で世代を見た場合、世代間におけるファッション意識・行動の違いが曖昧であったので、一般的に〇〇世代と名付けられている世代を取り上げ、「団塊ジュニア(25-29歳)(サンプル数104)」、「新人類(35-39歳)(サンプル数76)」、「団塊(50-54歳)(サンプル数100)」、「戦前(60歳以上)(サンプル数114)」の4つの世代を抽出し、分析を行った。

そして、各質問項目の単純集計とクロス集計、質問項目間の相関分析、世代間の質問項目の相関分析をおこなった。世代間の相関がある場合は時代効果、相関がない場合は世代効果と見ることができると考えられる。


3.分析結果

3・1生活実態

3.1.1 自由裁量金額と使途先

自由裁量金額、使途先、服飾費への支出についての質問項目で分析した。

「団塊ジュニア」は未婚者が87%、有職者が94%おり、自由裁量できる金額は他の世代に比して、高くなっている。自由裁量金額は5万円以上10万円未満が約3分の1の34%で最も多く、次いで3万円以上5万円未満が31%となっており、世代間では一番購買力がある世代である。一番目の使途先は飲食費(37%)、服飾費(33%)であり、この2項目で70%を占めており、二番目の使途先も順序は入れ替わるが、美容・化粧品費を加えると、自由裁量金額の多くが使われていることになる。

「新人類」は子供がいる人が60%、有職者が74%と多く、自由裁量の金額は1万円~3万円未満が最も多く、3万円~5万円未満の女性も4分の1いることから、子育て真っ最中ながら上手に自分で収入を得て、生活を充実していこうとしている。自由なお金の使途先は服飾費が最も高く、次いで飲食費となっている。2番目の使途先では美容・化粧品が最も高いことからおしゃれに対する意識が高いといえる。この世代の特徴としては、書籍・雑誌への支出が世代間で最も高いことと、逆に、習い事は全世代中最も低いことである。仕事と子育てに時間をとられるので、習い事をする時間的余裕がないと思われる。ファッション商品の月平均購入金額は他の世代同様に1万円以上5万円未満が最も多いが、5千円以上1万円未満が25%、5千円未満が17%と他の世代より低い金額の支出である。スーパーでファッション商品を購入している人が1割いることから家族や自分の実用的な衣料品を購入していることがうかがえる。

「団塊」世代の自由裁量の金額は1万円以上3万円未満が最も高く36%であるが、5万円以上10万円未満が「団塊ジュニア」に次いで高く15%であり、10万以上の自由裁量金額がある人が9%いる。約7割の人が仕事を持っており、子供の学費や住宅ローンの支出が少なくなり、その結果が高い自由裁量金額になっていると考えられる。使途先は服飾費が43%と他の世代に比して最も高い。2番目の使途先も服飾費と飲食費である。ファッションの月平均購入金額は1万円以上5万円未満が半数近く、5万円以上10万円未満が8%、10万円以上の人が3%と他の世代より多くなっている。

「戦前」世代の自由裁量の金額は「新人類」、「団塊」世代と同じく1万円以上3万円未満が最も高く37%であり、次いで3万円以上5万円未満である。使途先は服飾費が31%と最も高いが、「戦前」世代の特徴は旅行(20%)、習い事(15%)への支出が他の世代と比して高く、自由な時間を利用してゆとりのある生活を楽しんでいる。ファッションの月平均購入額は他の世代と同様に、1万以上5万円未満が一番多く42%であるが、反面、ファッションに全く使わない人が13%、5千円未満の人も12%あり、ファッション商品購入については2極分化しているようである。

生活実態においては、「団塊ジュニア」は多くの自由裁量金額を持っており、他の世代とは相関がみられないが、他の三世代は自由裁量金額の分布に相関がみられる。使途先については相関の傾向にあるが、「団塊ジュニア」はその使途先が多様化しており、「新人類」世代は書籍・雑誌の支出が、「戦前」世代は旅行や習い事への支出が多い、また「団塊」と「戦前」世代は飲食費が少ないのが特徴である。



3.1.2 革新性

革新性とは新しいものを取り入れて豊かな生活を実現しようとすることと考え、ここでは携帯電話の所有、パソコンの活用、インターネットの利用、通信販売やインターネットでの商品購入についての質問項目で分析した。

「団塊ジュニア」世代においては84%の人が携帯電話を所有し、持つ予定の人を含めると殆どの人が所有しているといえる。今や、彼らのコミュニケーションの必須アイテムとなっている。パソコンの使用は毎日使っている人が20%以上おり、活用している割合は50%以上である。インターネットは37%の人が利用しており、他の世代が殆ど利用していないのに比べて高い利用率を示している。通信販売やインターネットでの商品購入の利用者は約6割であるが、利用頻度は他の世代と同様に1-3回/年が一番多いが、他の世代にはない10回以上も5%ほどいるし、全く利用しない割合も42%と他の世代に比べて高い比率を示している。

「新人類」世代では携帯電話を67%以上が所有し、パソコン利用者は34%で、インターネット利用者は10%であり、「団塊ジュニア」に次いで利用率は高い。パソコン利用者は少ないが、専門職の33%は毎日、自営業・派遣の50%は週に1・2回、パート・無職の33%の人は月1回使用している。通販やインターネットの商品購入は1年間に1~3回が他の世代に比して最も高く46%であり、4~5回も10%おり、他の世代に比べて利用度は高い。時間的制約を一番強く受けている世代であることから、通販やカタログ通販を利用している人が多いようである。

「団塊」世代になると携帯電話の所有は持っている人(38%)より持っていない人(58%)の方が多くなり、パソコン利用者は17%で、会社員・専門職・パートなどの有職者である。仕事の関係でパソコンを活用する人たちが個人でも活用しているようであるが、インターネット利用者になるとわずか6%の人が利用しているに過ぎない。通信販売やインターネットでの商品購入経験者は55%で、「新人類」に次いで多いが、一方、購買したことのない人も40%いる。

「戦前」世代においては、携帯電話は70%以上の人は持っていない。60%以上は無職であり、自宅に電話があれば、とくに必要性を感じていないのであろう。パソコン利用者は3%であり、ほとんどが使用していない。ただ、パソコン利用者のほとんどはインターネットも利用しており、その人たちは通信販売やインターネットでの商品購入も積極的に行っている。ほんの僅かであるが、革新的行動を行っている「戦前」世代が存在している。

生活の革新性に関しては、世代間においてはほとんど相関は見られず、若い世代ほど革新性は高い。

3.1.3 生活意識と関心

各世代の生活満足度と関心事について、現在の生活の満足度、大切なもの、欲しい豊かさ、関心事、充実したい生活分野についての項目で分析した。

「団塊ジュニア」世代は69%が生活に満足しており、不満があるのは31%である。不満の割合は各世代の中で一番高くなっている。一番大切なものは家族(25%)、時間(17%)、健康(15%)、友人(13%)、恋人(13%)と分散しており、仕事(5%)、お金(2%)の比率は低い。一番欲しい豊かさは半数以上の52%が精神的豊かさをあげ、次いで、経済的豊かさ(28%)をあげており、時間的豊かさ(14%)と環境的豊かさ(6%)は世代間のなかでは最も低い割合になっている。一番関心のあることは趣味(36%)、次いで結婚(18%)、仕事(13%)の順となっている。また、充実したい生活分野としては、余暇生活が66%を占め、次いで住生活となっている、この世代は現在の経済的豊かさを背景に、生活や趣味をエンジョイしながらも、結婚適齢期であり結婚か仕事を続けるか二者択一を考えているといえる。

「新人類」世代では現在の生活に満足している人の割合は70%で、不満足に感じている人は30%であり、「団塊ジュニア」とほぼ同じである。一番大切なものは家族(64%)、健康(16%)でこの2つで80%を占めている。とくに、家族に対する割合は各世代の中で最も高くなっている。一番欲しい豊かさは精神的豊かさが42%で最も高く、次いで経済的豊かさ(26%)、時間的豊かさ(22%)である。また、一番関心のあることは家族(26%)、健康(17%)、人間関係(14%)であり、家族中心の生活観が強く出ている世代である。

「団塊」世代の80%の人が現在の生活に満足しており、一番大切なものとして家族(54%)と健康(37%)をあげており、ほとんどの人の意識はこの2つにある。求める豊かさとしては精神的豊かさ(33%)、経済的豊かさ(30%)、時間的豊かさ(26%)と分散しており、それぞれの人の置かれている家庭・生活環境によって多様化しているといえる。一番関心のあることは、健康(31%)、家族(15%)、政治・経済動向(12%)となっており、世代の中では政治経済動向への関心が一番高い。これからの老後に対する準備をする時期であり、健康にたいする意識と経済に対する関心が高くなっている。

「戦前」世代は85%の人が現在の生活に満足しており、世代の中では最も高くなっている。一番大切なものは健康(55%)、次いで家族(32%)である。高齢者であるため当然の答えであるが、この数値は自分の健康への関心の高さを表している。一番欲しい豊かさは精神的豊かさ(37%)であり、次いで経済的豊かさ(31%)、時間的豊かさ(20%)である。また、一番関心のあることも群を抜いて健康(48%)であり、次いで、家族(10%)となっている。仕事もリタイアし、無職の人が多いことから、関心事は自分の健康と家族に集中している。

3.1.4 交流

コミュニケーションは生活文化度を測定するための重要な軸であるが、人との付き合い方、地域の人との会話、余暇を過ごす人の質問項目で分析した。

「団塊ジュニア」世代は、人との付き合い方は狭く深いが52%であり、広く浅いが31%である。地域の人とはあまり話さない人が半数以上を占めており、余暇を過ごすのは友人が50%であり、限定した親しい人たちとの交流が中心であることがうかがえる。

「新人類」世代は、人との付き合い方は狭く深い(41%)と広く浅い(36%)が同じ程度であり、狭く深いが多いことは「団塊ジュニア」と相関している。地域の人と話す(39%)、あまり話さない(38%)が同率であるが、よく話すを加えると話す人が54%となり、団塊ジュニアより20%高くなる。結婚し、子供のいる人が60%いることからやや広く浅い付き合いや地域の人との会話が多くなっている。余暇を過ごす人は家族が大半(64%)を占める。これは結婚し、子供がいる値と一致する。しかし、育児に忙しい世代であるため、友人と過ごす人は少ない。

「団塊」世代は人の付き合い方は広く浅いが最も高く44%である。地域の人との会話は話すが最も高く49%であり、よく話すの回答と合わせると70%近くを占め、地域との交流が広いことを示している。余暇を過ごす人は家族が最も多いものの、子育ても終わり、自分一人や友人と過ごす人も20%以上いる。これは戦前世代と相関している。

「戦前」世代の人の付き合い方は、広く浅いが最も高く40%であり、次いで、狭く深い(25%)、広く深い(24%)となっており、世代間では広く深い付き合いの割合が最も高い。地域の人との交流は、よく話す人が最も多い(35%)、70%の人が地域の人と話しており、老人会などを通じて近所の人との交流を活発に行っている世代といえる。余暇は家族と過ごしている人が最も多い。次いで自分一人で過ごしている人が30%いるが、一人暮らしの人が14%いることにも起因している。人生経験豊かな世代であるため、その付き合い方も様々である。付き合い方のパターンはこの世代独自の内容がうかがえる。

交流に関しては世代が上がるにしたがって広がりをみせており、一方、世代が下がるほど交流範囲は狭いが深い交流が行われている。

3.1.5 情報収集行動

各世代の情報収集に関しては、情報収集の度合い、日常品購入の情報源、流行のファッションの情報源、ファッション雑誌の購読、新聞を読む時間で分析した。

「団塊ジュニア」世代は購買前の情報収集するのが56%、しないほうが43%である。日常品の情報収集源はチラシ(38%)と店頭陳列(32%)あり、全世代とも日常品に関してはチラシと店頭陳列が主たる情報源といえる。ファッション・流行の情報源は雑誌(68%)、店頭陳列(16%)であり、雑誌が主たる情報源であり、雑誌の購読も全世代中で最も高くなっている。新聞に関しては、読まない人が16%おり、10分以内が34%であり、新聞との接触度は全世代でも最も低くなっており、この世代はあらゆる情報を雑誌から得ているといえる。

「新人類」世代は購買前に情報収集するのは62%であり、世代の中ではその割合が高くなっている。ファッション・流行の情報源は雑誌(57%)が高く、店頭陳列(18%)であり、「団塊ジュニア」では割合が低かったテレビで情報を得ている人が15%おり、団塊(17%)、戦前(29%)とその割合は大きくなっている。ファッション雑誌は読むほうが39%、読まない方が60%である。新聞を読む時間は10分以上20分以内が最も高い(39%)が10分以内(28%)も次いで多いため、あまりじっくり新聞を読む人は少ないといえる。「団塊ジュニア」よりは読んでいるが、「団塊」・「戦前」ほどは読んでいない。

「団塊」世代の事前情報収集は「団塊ジュニア」とほとんど同じである。ファッション・流行の情報源は雑誌と店頭陳列がほぼ同じ割合で30%強であり、続いて、テレビである。ファッション雑誌を読む人は約4分の1であり、新聞については、10分から20分の人が37%、20分以上30分未満が25%、30分以上が21%となっており、新聞を読む割合が「戦前」と同様に高くなっている。

「戦前」世代は事前の情報収集は時々収集すると常に収集する人が半数いるが、全く収集しない人も21%と多い。日常生活品の情報は他の世代と同じでチラシと店頭陳列が多いが、この世代の特徴としてはカタログが14%を占めている。行動に制約がある人はカタログを活用しているようである。ファッション・流行の情報源は店頭陳列(39%)、テレビ(20%)、雑誌(19%)である。新聞を読む時間は30分以上読む人が他の世代に比較して最も高く25%と高くなっており、自由な時間が最もある世代であり、身近な情報源として新聞を活用している。

3.1.6ファッション意識・購買行動

ファッション意識・購買行動については、自分のファッションが個性的か、自信があるか、他人のファッションへの関心、他人と同じファッションをすること、流行のファッションの採用、ブランドへのこだわりや採用理由などの質問項目を用いた。

「団塊ジュニア」世代は自分のファッションは個性的だとは思っておらず(86%)、また自信も持っていない(82%)。他人のファッションが気になる人は67%と最も多いが、他人と同じファッションをすることについては62%が気にならないと答えている。他人のファッションを気にしながらも、自分が価値を認めたものであれば、他人と同じファッションでも気にせず、自己の価値を大切にする姿勢がうかがえる。流行のファッションの採用に関しては、ある程度はやると採用する人が半数であり、一方、少しはやると取り入れる人が約4分の1おり、流行を意識している人も多い反面、取り入れない人も22%おり、独自のおしゃれを楽しんでいるか、流行に無関心である。この世代の流行に関する意識は多様化しているといえる。気に入ったブランドがあると答えている人が、全世代中最も高く65.4%である。そして56%の人がブランドを取り扱っている店舗で購入しており、ブランドへの興味、関心が他の世代に比べて高い。ブランドの採用理由は、デザイン(44%)、品質(26%)、機能性(16%)で85%を占めている。ブランドへのこだわりがある人が24%で、世代間で一番高くなっている。その理由として、この世代は、未婚者が87%で自由裁量の金額が他の世代に比べ潤沢であることと、ファッション雑誌を読む人が52%と多いことによると推測される。

「新人類」世代は「団塊ジュニア」よりは自分のファッションは個性的だと思っている(16%)が、自信はないようである(84%)。他人のファッションへの関心は、「団塊」・「戦前」と同じ程度(42%)に気にしているが、他人と同じファッションをすることへの抵抗感は「団塊ジュニア」よりは強い(50%)が、他の2つの世代よりは弱いものである。流行の採用に関しては、ある程度はやると取り入れる人が67%と大半を占めている。取り入れない人は全世代で一番低いため(20%)、ファッションの流行に対する意識は高いといえるが、流行ると取り入れる人の割合は低く、流行に関心はあるが、自由裁量金額が低いことと相まって、積極的に取り入れられない世代といえる。ブランドについては、気に入ったブランドがあると答えている人が、団塊ジュニアよりやや低く48.7%である。ブランドの採用理由は、デザイン(39%)、品質(29%)、機能性(13%)で80%を占めている。

「団塊」世代は自分のファッションは個性的だと思っている割(28%)には、自分のファッションに自信のない人が多い(84%)。他人のファッションを気にしない人は56%であるが、しかし、他人と同じファッションはいやであるが59%で若い世代に比べて高い割合を示している。流行のファッションの採用は、すぐに取り入れる、少しはやると取り入れるが28%で、世代間で一番高い割合を示しており、4分の1程度の人は流行に敏感であり、ファッションに関しては最も革新性がある。気に入ったブランドがあるのは、新人類より低く39%であり、こだわる人は10%程度で「新人類」世代とほぼ同じであるが、気に入っている理由は機能性(26%)が一番多く、次いで、品質(20%)・デザイン(19%)であり、3つで65%を占めている。

「戦前」世代は自分のファッションは個性的だと考えている人が31%おり、また、自信を持っている人が22%で、世代間中で一番高い割合を示している。他の世代に比べるとファッションに自信をもっているといえる。また、他人のファッションが気になる人は、他の世代に比べて最も多く59%であり、他人と同じファッションをするのがいやな人も60%で最も高い比率を示している。流行の採用は、ある程度はやると取り入れるが44%と一番高いが、取り入れない人も世代間中一番比率(33%)が高く、流行に左右されないもしくは関心のない人が多いといえる。気に入ったブランドがあるのは、全世代の中で最も低く26%である。ブランドの気に入っている理由は品質(21%)、機能性(15%)、高級感(11%)などが上位であるが、一番高い比率を示したのは「わからない」という回答であった。

購入店舗はどの世代も百貨店と専門店に集中しており、80%を超えているが、「新人類」世代は専門店の割合が高いのと、スーパーでの購入が「戦前」世代とともに10%を超えている。セレクトショップでの購入は、「団塊ジュニア」の41%が一番高く、世代が上がるごとに利用度は下がっている。また、セレクトショップがわからないと答えた人も、約20%程度おり、その中でも、「団塊」世代が最も高く25.0%でセレクトショップの認知度が低い。

4. 各世代の特徴

今回の調査・分析から得られた各世代の特徴を要約すると以下のようになる。

4.1.1  「団塊ジュニア」世代の特徴

団塊ジュニアの場合は、未婚で有職者がほとんどを占めていることから、自由裁量金額が多く、ファッションへの支出金額、ブランドへの関心が最も高い世代である。生活の革新性を示す携帯電話の所有、パソコンの使用、インターネットの利用など情報機器の活用率も高く、生活革新意識は高い。自由裁量金額の一番の使途先が飲食、服飾費であることからも、友人との交際とファッションに一番関心があるといえる。一番関心のあることは趣味、結婚、人間関係の順で高く、自分の生活を自由にエンジョイしている。

人との付き合い方は深く狭く、地域の人とのつきあいはほとんどなく、自分と気の合う友人との交流が中心であり、携帯電話の普及も影響していると思える。余暇が充実していると感じている人も多く、友人と過ごしている割合も高く、限定した親しい人たちとのコミュニケーションが中心となっている。

ファッション・流行に関してだけでなくあらゆる情報源は雑誌であり、他人のファッションは気になるが、他人と同じファッションでも気にしていない。流行のファッションはある程度はやると取り入れるという消極的な回答が多かったが、雑誌の中から自分の好みを見つけ、情報を鵜のみにして情報に流されるのではなく、それを内面化し、流行に左右されない自分の価値観や嗜好を確立していることによるものと思われる。

以上のことを総合的に判断すると、「団塊ジュニア」世代は、ある程度エンジョイ型生活文化度へと移行しているといえる。

4.1・2 「新人類世代」の特徴

新人類の多くは既婚で、過半数の人に子供がおり、有職者が7割を超えており、子育てをしながら仕事をして収入を得、生活を充実していこうとしている。生活革新の機器の利用度は「団塊ジュニア」に次いで多い。自由裁量金額やファッション購入金額は低いが、使途先は被服費、飲食費、美容・化粧品費が中心であり、おしゃれに対する意識は高い。ただ、この世代は子供の有無とそれに伴う時間的制約が生活行動やファッション行動に大きく影響している。一番大切なものは、家族と健康で8割を超えており、また、関心のあることは、家族、健康、人間関係の比率が高く、家族中心の生活観が強く出ている。

人との付き合い方にも、子供の有無が強く影響しており、子供をある人は隣近所の人とは広く浅い付き合いを、子供のない人は狭く深い付き合いをしている。また、子供のいる人は余暇が充実している人と充実していない人が同率で、子育てに追われている人は充実度が低い傾向にある。

新人類世代はちょうどバブル時代に青春を過ごしており、ファッションに関しても自由にお金を使えた時代であったことからも、今でもファッションには大変関心はある。情報収集行動では、ファッション・流行の情報源は「団塊ジュニア」に次いで雑誌の割合が高く、テレビも情報源となっている。他の人のファッションが気にならない、自分のファッションに自信がない人が他の世代に比べて多くなっている。ブランド商品にこだわりを持つ人も少なく、自由裁量金額が少ないこともあって、ファッションに対して消極的な傾向が見て取れる。

「新人類」世代は過去の経験からも、意識としてはファッション意識の高さに表されているようにエンジョイ型生活文化志向があるにもかかわらず、現在の家庭・生活環境によって意識を行動に移すことを妨げられているといえる。潜在的エンジョイ型文化志向世代といえよう。今後、子育てを終えた後の、意識と行動の変容が注目される世代である。

4.1.3 「団塊」世代の特徴

団塊世代の約7割の人が有職者であり、子供の学費や住宅ローンから解放された時期に当たるので、高い自由裁量金額につながっている。使途先では、やはりこの世代も服飾費が多く、他の各世代と比べても最も高い結果となっている。一番大切なものに関しては、家族と健康をあげており、一番関心のあることでも健康、家族、政治・経済動向などであり、健康に対する意識と関心が高くなってきている。これは、これからの老後に対する準備を意識し始める時期であるので、健康に対する意識と今後の経済動向への関心が強くなってきている現れである。また「団塊」世代になってくると、携帯電話を持っている人よりも、持っていない人の方が多くなり、パソコン利用者やインターネット利用者も非常に少なく、生活革新意識は弱くなり、余暇時間の過ごし方ではガーデニングの割合が世代間で一番大きくなるなど、現在の生活をより快適に維持していこうとする姿勢がうかがえる。

交流に関しては、ほとんどの人が結婚しており、子供がいるので、交流範囲は広く浅く、多くの人が地域の人と付き合いをしており、地域との交流が活発なことを示している。余暇を過ごす人は家族が最も多いが、子育ても終わり、自分一人や友人と過ごす人も20%以上いる。

情報収集行動は、その子供である団塊ジュニアとほとんど同じであり、ファッション・流行の情報源は雑誌と店頭陳列がほぼ同じ3割強であり、続いてテレビである。ファッションは個性的だと思っているが、自信のない人が多く、他人のファッションへの関心は低いが、同じファッションには抵抗感を持っている。流行の採用に関しては他の世代よりは高くなっている。

この世代の特徴はどの世代と同居しているかによって、生活意識や行動に違いがあるようである。世代間の相関分析をみても、団塊ジュニアと同居している人は団塊ジュニアの意識行動に近く、「戦前」世代と同居している人は戦前世代の意識・行動と類似している。また、現在の家庭・生活環境によって、意識・行動に2極分化の傾向がでている。ある程度の豊かさを享受しているグループと堅実な生活をしているグループに別けることができそうである。前者はエンジョイ型生活文化に近い生活を、後者は安定型生活文化の生活をおくっている。

4.1.4 「戦前」世代の特徴

この世代は「団塊ジュニア」に次いで自由裁量金額を多く持っており、使途先は、服飾費が一番であるが、この世代の特徴として、旅行(20%)、習い事への支出が他の世代と比べて高く、6割を超える人が無職であることから、自由な時間を利用して、ゆとりのある生活を楽しんでいる。また、一番大切なものとして健康、一番関心のあることも群を抜いて健康となっている。生活革新機器の利用度は当然のことであるが、大変低くなっている。

交流に関しては、広く深い付き合い方が多く、また、7割の人が地域の人と積極的に付き合いをしている。余暇が充実している割合も世代間で一番高くなっており、習い事、小旅行、ガーデニングなどを楽しんでいる。余暇を一緒に過ごす人は家族、友達、一人でと様々になっているが、これは置かれている家庭環境によるものであろう。

情報収集行動に関しては、ファッション・流行の情報源は店頭陳列、テレビである。また、この世代の情報源の特徴としては、新聞を読む時間が長い人が多く、自由な時間が最もある世代であるので、身近な情報源として新聞を活用している。

ファッションに関しては、自分のファッションは個性的であり、自信があり、他人と同じファッションを嫌う割合が世代間比較では最も高くなっている、反面、流行を取り入れない人の割合も高く、ファッション商品を購入しない人も1割以上いる。

「戦前世代」は経済状況や生活・家庭環境によって、エンジョイ型生活文化を享受してグループと、従来の堅実で質素な安定型生活をおくっているグループとに、完全に二極分化しているといえる。

4.2 相関分析による世代別ファッション行動

質問項目間の相関分析をおこなうことによって、アンケート全体の大まかな鳥瞰図を作成した。 ここでは相関分析になじまない項目を除き、その他の質問項目をすべて対象として相関行列を作成した。その中から相関関係が0.30以上でp値が0.01以下で有意なもののみを抽出し、それを図にした。その結果が図表12、図表13である。

まず、図表12の中央よりやや右寄りにある「年齢」・「結婚」・「子供の有無」という項目に注目してもらいたい。これらの3項目間の相関係数は0.50以上であり、これらの項目が示しているのはライフサイクルである。

ある意味で、世代間分析においては、ライフサイクルが中心になるといえる。この3項目を中心に、図表12は大きく左右に分れている。左側がファッション意識と行動に関する部分であり、右側が生活の革新と社会との交流である。この図からわかるように、多くの質問項目があったが、相関係数が0.50以上となるのは意外と少ないことがわかった。また、ファッションに関してライフサイクルに関する質問項目が、間接的に影響を与えていることがわかった。

それでは、図表12のライフサイクルに関する3項目から読み取っていくことにしよう。

「携帯電話の所有」・「パソコンの使用」・「インターネットの使用」といった情報機器の使用による生活の革新性は年齢との間(「携帯電話の所有」については「結婚」・「子供の有無」とも)に相関があり、当然考えられることであるが年齢が高くなるに従って革新性低くなる傾向にある。

「地域の人との会話」については「年齢」と「子供の有無」との間に相関があり、年齢が高くなるほど、また、子供のある人ほど地域の人との会話が多くなっている。また、「地域の人との会話」は「人との付き合い方」と相関があり、「地域の人との会話」が多いほど、「人との付き合い方」が広くて深く、少ないほど狭くて浅い交流をしているといえよう。

つぎに、ライフサイクルの左側の関係を読み取っていこう。この左側を拡大したものが図表13である。

ライフサイクルにかかわる3項目は、直接にファッション意識や行動に関する項目に関連するのではなく、2つの項目を媒介として、ファッションに関わっていることがわかった。1つは、経済力を示す「自由裁量金額」と「ファッションへの支出金額」であり、もう1つが、情報源を示す「ファッション雑誌を読む」である。

「自由裁量金額」は「結婚」と「子供の有無」とに相関があった。未婚であるほうが、結婚していても子供がないほうが自由裁量金額は高いというものであった。また、当然のことであるが、「自由裁量金額」と「ファッションへの支出金額」には強い相関がみられた。

「ファッション雑誌を読む」はライフサイクルを構成する3項目と相関があった。ライフサイクルが後半になるほどファッション雑誌は読まないという傾向を示している。

また、「ファッション雑誌を読む」は「気に入ったブランドの有無」・「流行のファッションの採用」・「他人のファッションへの関心」・「セレクトショップでの購買」と相関があった。ファッション雑誌を読む人ほど、気に入ったブランドがあり、流行のファッションの採用が早く、他人のファッションが気になり、セレクトショップで購買する傾向が強いといえる。

「ファッションへの支出金額」は「ファッション購入店のタイプ」と相関があり、ファッション支出金額が多いほど、単独ブランドを扱う店舗での購入が多い傾向を示している。

「ファッションへの支出金額」と「ファッション雑誌を読む」の双方と「ブランドへのこだわり」は相関があった。ファッションへの支出金額が多いほど、ファッション雑誌を読むほど、ブランドへのこだわりが大きいという傾向を示している。

以上のことから、ファッション意識や行動はライフサイクル(世代)に影響されるものの、直接的ではなく、経済的要因と情報的要因の2つを経由して、ファッション意識と行動に影響しているといえよう。

相関分析のまとめとして、今までの質問項目ごとの世代別の特徴をもとにして、最初に示した質問項目間の関係を各世代間にあてはめ、非常に簡素化して図表化すると、図表14に示したようになる。世代によって、ファッション意識と行動への規定要因が異なることが明らかになった。

5.結語
 前回の女子学生の意識・行動に関する調査・分析では彼女たちの生活文化度がエンジョイ型に変容しつつあることを示したが、20歳以上の社会人女性では時代効果と世代効果により、世代間の生活文化度に差異のあることが認められた。

1)団塊ジュニアは経済的豊かさを背景に、ファッション・流行に関してだけでなく、携帯電話・インターネット・雑誌などあらゆる情報源を活用し、趣味を楽しみ、自己の価値観や行動様式を確立しており、エンジョイ型生活文化度に移行している。

2)新人類世代は自由裁量金額と自由時間の制約のために、ファッション購入金額は少ないが、雑誌やテレビなどから積極的に情報を取り入れる行動や、ファッション意識の高さに表れているように、潜在的エンジョイ型文化志向である。

3)団塊世代は学費、住宅ローンから開放され、自由裁量金額も多いが、どの世代と同居しているかによって、エンジョイ型生活文化と安定型生活文化の2極分化の傾向が見られた。

4)戦前世代は全体的には経済的・時間的ゆとりを持っているが、現在の経済状況や家庭・生活環境の違いにより、エンジョイ型生活文化と安定型生活文化に明確に2極分化している。

以上のように、今回の調査・分析により世代間における生活文化度に差異のあることが検証された。

これからの研究課題は、各世代のより詳細な分析を行い、同じ世代であっても価値観・行動の異なる集団に分類別けを行い、その特徴と規模を明らかにするとともに、それぞれのグループの生活文化度を解明すること、継続した調査研究を実施し、時系列的分析を進めること、そして、最終的には、生活文化度の変容に対応できず低迷している流通企業のマーケティング戦略の新パラダイムを構築することにある。






















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