酔眼教師の乱雑日記

「河を渡って木立の中へ」

「河を渡って木立の中へ」
(Across the River Into the Trees)


ヘミングウエイは20世紀前半に三つの戦争に関する小説を書いている。それらはみんなも知っている『武器よさらば』『誰がために鐘がなる』そして『河を渡って木立の中へ』である。前の二つは読んだことがあろう。
『河を渡って木立の中へ』は南軍の将軍ストーンウオール・ジャクソンが死の直前に部下に命じた言葉“Let us cross the river and rest the shade of the trees” から引用された言葉である。ジャクソンは民兵として、南北戦争に参戦し、負け続ける南軍の中にあって、勇猛果敢な戦いをし、石のように北軍に立ちはだかり、「ストーンウオール」と呼ばれてた将軍である。
私はこの言葉の意味を次のように解釈しています。
今から、厳しい激しい戦いに向かうが、自分の多くの将兵は命を落とすであろし、自分自身も死ぬかも知れない、しかし、その戦いがすめば、ほんのすこしではあるが、憩いの時が訪れるであろう。その時を楽しみに、戦いに臨もうという思いを示したものであろう。
いままでの君たちは、ご両親の、回りの人々の庇護と思いやりの中で、はぐくまれ、立派に成長してきました。今日からは、自らの英知と力で、様々な局面を切り開いて前進していかなければなりません。社会に出ると、楽しいことだけではなく、奥歯をかみしめるような出来事があります。密かに涙することもあるでしょう。その時に思い出してください、『河を渡って木立の中へ(“Let us cross the river and rest the shade of the trees”)』という言葉を。
深い河であればあるほど、渡りきった時の喜びは大きいですし、その後には、しばしの安息の時を得ることができます。
同じような言葉があります。私の好きな書家である相田みつをさんの『道』という詩です。

『道』

      長い人生にはなあ  どんなに避けようとしても

どうしても通らなければならぬ道  というものがあるんだな

   そんなときはその道を  だまって歩くことだな 愚痴や弱音は吐かないで

     黙って歩くんだよ  ただ黙って  涙なんか見せちゃダメだぜ

  そしてなその時なんだよ  人間としてのいのちの  

根がふかくなるのは


二年間、小職の担当する演習のゼミ生として、全員本当に努力してくれたと思います。教師として、心から感謝しています。卒業論文ではかなりハードな要求をしました。ゴメンナサイ!
十年経ったときに、良い思い出になっていると思います。ゼミで学んだことを大切に、二一世紀という新しい未知の社会に、自信を持って堂々と船出してください。
 君たちの飛躍を祈念して、送別の言葉とします。

(注)ヘミングウエイに関しては、浜地修先生(大阪工業大学)の論文『河を渡って木立の中へ』(点と線を結ぶミソロジー)を参考にさせていただきました。



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