酔眼教師の乱雑日記

自分の本



- 概 要 -


 経済システムは生産・流通・消費の3つのサブ・システムによって構成されており,それらサブ・システムの円滑な相互関連性と相互依存性が有効に働くことによって,われわれは豊かな生活を過ごすことができます。高度経済成長期の生産システムの変化および安定経済成長期の消費システムの変化は,両システムの掛け橋である流通システムを大きく変化させてきました。

 現在は,価格破壊,価格革命,それらを実現した新業態の誕生,規制緩和の進展,それに伴う外資流通企業の進出による大競争時代の到来などの現象に代表される「第二次流通革命」の真っ最中にあり,わが国の流通システムは大変革期をむかえています。そして,小売業界を中心とする流通システムの変革が,経済システム全体の体系と秩序の変化を引き起こしつつある「経済の転換期」ともいえます。

 変革を加速させている環境要因として重要性を増しているのが流通政策です。流通政策は流通システムと相互規定関係にあり,政策の転換がシステムの転換をうながしているともいえます。とくに,「日米構造協議」以降の,規制緩和の進展,社会政策と一体化した流通政策への転換は,少なからず流通システムとその経済主体である流通企業の行動に影響を与えています。

 また,生産基点(プロダクト・アウト)発想から生活基点(マーケット・イン)発想への移行は,価値に対する考え方の転換を求めます。生産価値から生活価値へのパラダイム・シフトは,生活者満足を提供しえない企業を市場から置き去りにしていきます。それは,提供する商品やサービスだけでなく,業態およびさまざまな業態の集合体である商業集積の創造的価値を,商圏ごとの生活者の要求する価値に適合させることができるかどうかが問われていることを意味しています。市場環境への「適応行動システム」であるマーケティングは,最近までは生産基点からの適応化でありましたが,次世代のマーケティングにおいては生活基点からの適応化が求められますから,真の生活者満足である生活価値創造ができるインターフェイス機能と対応行動を確立した企業のみが生き残ることができるのです。

 生活者満足の創造をどのように具現化するかが課題であり、大規模流通企業のみではなく,減少傾向が著しい大多数を占める中小零細小売業者にも同様に与えられた課題であります。

 本書は,このような経済と流通の転換期に,流通論・商業経営論・流通政策論などを初めて学習しようとする学生諸君に,基礎概念や知識をできるだけ体系的に提供することにより,変革する流通を総合的に多角的に理解する手がかりを与えることを目的にしたものです。さらに,社会で活躍されている人たちにも,流通システムおよび流通企業の戦略的マーケティング,それらに大きな影響を与える流通政策についての知識を再整理し,今後の流通の動向を考える上での参考にしていただければ幸いだと考えています。

 内容的には,流通システムの基本的構図とその歴史的展開,流通システムとその主体である流通企業の重要な環境要因である流通政策の形成と歴史的展開,および、流通企業の戦略的マーケティング計画と行動の検討,の3つの部分から構成されています。



 1章では,流通システムを規定する要素と要因の交錯的因果経路を基本的構図として提示し,資本主義経済の発展プロセスに対応した商業・流通の動態的発展過程,わが国の流通システムの特徴を形成した戦前の流通構造,戦後の流通システムの変化を統計的資料を用いて検討しています。

 2章では,流通システムの基本的構図を枠組みとして,戦後の流通システムの変貌過程を「高度経済成長期」,「安定経済成長期」,「バブル経済期と崩壊後」の3つの時期にわけ,それぞれの時期に交錯的因果経路がどのように変化し,その変化に対応して流通企業がどのように行動変容したかを明らかにしています。

 3章と4章は流通政策に関する部分であり,3章では流通システムの有効性の評価基準と有効性を阻害する要因,それを是正するための流通政策の形成過程と問題点を整理して提示しています。4章では戦後の流通政策を歴史的発展過程のなかで考察し,21世紀の流通政策の視点とあり方を検討しています。

 5章と6章では,流通企業の戦略的マーケティングが検討されますが,5章では環境適応行動としての戦略的マーケティングの基本的構図と計画構築過程が示され,第6章では,戦略的マーケティングの主要な意思決定領域であるマーチャンダイジング,価格,販売促進などを詳細に検討した上で,米国の先進的流通企業の戦略的マーケティングを事例として取りあげ、成長の要素を分析し,わが国の流通企業が次世代に向けて、どのようなパラダイム・シフトを行い、戦略を構築すべきかを考察しています



- 目 次 -

1章 わが国の流通構造の構図

1   はじめに
2   資本主義経済と流通
2.1 資本主義経済の成立期と流通
2.2 資本主義の高度化と流通
3   戦前のわが国流通構造の特徴
4   統計からみた戦後の流通構造の変化

2章 わが国の流通構造の展開

1   はじめに
2   高度経済成長期の流通構造
3   安定経済成長期の流通構造
4   バブル経済期以降の流通構造
4.1 バブル経済期の流通構造
4.2 バブル経済後の流通構造

3章 流通政策の構図

1   はじめに
2   流通政策の目的と評価基準
3   流通有効性の阻害要因
4   流通政策形成過程とその問題点
5   流通政策の体系

4章 流通政策の展開

1   はじめに
2   戦後復興期における中小商業保護政策
2.1 独占禁止法よる公正競争維持政策
2.2 百貨店法による調整政策
3   高度経済成長期における流通近代化政策
3.1 流通近代化政策
4   安定経済成長期における競争秩序の整備と近代化推進政策
4.1 調整政策としての大店法
4.2 80年代流通ビジョンによる新流通政策の展開
5   バブル経済期以降の規制緩和の流通政策
5.1 90年代流通ビジョンによる規制緩和
5.2 日米構造協議と大店法の改正
6   社会政策と一体化した流通政策への転換
6.1 21世紀に向けての流通ビジョン
6.2 街づくり三法による流通政策の転換
7   21世紀の流通政策の視点とあり方

5章 流通企業の戦略的マーケティングの構図

1   はじめに
2   流通企業の環境要因
2.1 消費者から生活者への位置づけの転換
2.2 市場細分化
2.3 標的としての消費者選択手順
2.4 競争環境
3   流通企業の戦略的マーケティングの構図
3.1 戦略的マーケティング計画の構築
3.2 流通企業の使命
3.3 流通企業の目的
3.4 流通企業のポートフォリオ計画
3.5 市場機会の査定
4   小売活動計画の構図
4.1 財務
4.2 組織と人的資源
4.3 市場選択

6章 小売マーケティング・ミックスの展開

1   はじめに
2   商品戦略
2.1 品揃えの決定
2.2 商品計画
2.3 商品管理統制
3   価格戦略
3.1 価格決定
3.2 価格調整
3.3 製販同盟の展開
4   販売促進戦略
4.1 コミュニケーション・プロセス
4.2 販売促進活動
4.3 IMC戦略の必要性
5   次世代流通企業のパラダイムと戦略
     ―ザ・スポーツオソリティーを事例として
5.1 使命とパラダイム
5.2 マーケティング戦略
5.3 米国流通企業の革新性の要約
5.4 日本流通企業のパラダイムと戦略の転換

点数:
つけられない。学生用図書としてはまずますか。


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