ガムザッティの感動おすそわけブログ

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gamzatti @ Re[1]:「ムー」「ムー一族」(05/28) ひよこさんへ 訂正ありがとうございました…
ひよこ@ Re:「ムー」「ムー一族」(05/28) ジュリーのポスターに向かってジュリーっ…

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gamzatti

gamzatti

2011.02.10
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カテゴリ: 洋画


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これまでも、テレビで何度も見てきたけれど、
今回、
まったく違う面を発見した。

これまではこの話を

 父親にも子育てはできるし、その権利がある」
ことを示した映画だと思っていた。

今でこそイクメンなどといって父親の子育て参加は当然のように言われるが、
この映画の中で
「あなたは大事なクライアントとの打ち合わせをすっぽかして大損害を与えた」と
裁判中に相手方の弁護士に切り込まれ、

テッド(ダスティン・ホフマン)がくってかかるところなど、
今だって病児保育体制が不十分で多くの母親が同じ叫びをあげたい現状から見て、
1979年の男の声としては、ものすごーく斬新だったのである。

そもそも、主人公は妻に出て行かれた夫のテッドのほうだから
どうしたって見る側はテッドに肩入れ。
「逃げた女房に未練はないが」の憐憫が、そこにはあった。

ただ、
この映画を見ていて、私はいつもひっかかることがあった。
妻ジョアンナ(メリル・ストリープ)は、あまり主張をしない。
特に裁判中、まったくといって言葉を発しない。
ただ、苦しそうに黙っている。

弁護士の助言に忠実だったのか。そんなふうに思っていたが、
今回、ハタと気がついたのだ。

ジョアンナは、子どもを取り返したいわけではなかった。

ジョアンナの申し立てで、ジョアンナが親権を自分に、と言って
この裁判は始まった。
けれど、

そりゃそうだ。
「妻でも母でもない自分」を取り戻すために家を出たんだから。
子どもと二人になったら、また「母」をやらねばならない。

ではどうして裁判を起こしたのか?
親権を争うなどということをしたのか?

それは、
自分も子どもを愛している、ということを認めさせたかったから。

父親が子育てすることが認められないと同じように、
母親が子どもを放棄するなど絶対に許されない時代だったのだ。

だから、
ジョアンナは「自分は鬼母ではない」証明をしなければならなかった。
自分は「本当は子どもと暮らしたい。暮らす用意がある。夫には渡さない」と
世間に示す必要があった。

つまり、
子どもを愛していることにお墨付きをもらってから、
子どもを「仕方ないわ、子どものためだから」と父親に引き取ってもらうのである。

その証拠が、ラストシーンである。
ジョアンナは約束の日に息子を引き取らず、
「あの子の家はここしかない」と言ってテッドを喜ばす。
テッドにとっても、
子どもにとっても、
大ハッピーエンドだ。

しかし、
この映画の冒頭、ジョアンナが家を出た時と、
状況はまったく変わらない。
テッドが子育てに目覚めたことが唯一の変化ではない。
何より、世間のジョアンナに対する見方が変わったのだ。

「子どもを置いて出て行った鬼母」から「泣く泣く子どもを手放した悲劇の母親」に。

テッドの喜びようで見逃されがちだが、
これは
ジョアンナにとって筋書き通りの大ハッピーエンド、なのである。

もしテッドが
「何言ってるんだ? 裁判に勝ったのは君だ。
 僕は養育費を払うから、君が子育てはやってくれ」と言ったら、
ジョアンナは一体どうなっただろう?

ここで思い出されるのが 「検察側の証人」 である。
殺人の嫌疑をかけられた夫を助けるために、妻はまず夫に不利な証言をする。
「検察側」の証人になるわけだ。
そして自分の証言の不確かさを「弁護側」に突かせる形で、夫の無罪を勝ち取る。
この話には「その後」の悲劇もあるのだけれど、
どうやって「裁く人々」を味方につけるか、その方法は同じである。
ジョアンナは、
「時代の非常識」を勝ち得るために「時代の常識」に乗ったふりをしたのである。

いつも目を真っ赤に泣き腫らしたような、
ジョアンナの強いまなざしの理由はここにあった。
絶対に手の内をさとられまいとした武装が、あの沈黙のなかにあった。

深すぎるぜ、「クレイマー、クレイマー」……。







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Last updated  2011.02.16 15:08:03
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